第113話


「どの辺りがおかしいんだ?」


俺の言葉を聞いて、都丸さんがそう尋ねてくる。

他の隊員さんも気になったのだろう。会話を止めこっちの様子を伺っている。


「えっと、俺と比べて隊員さん達が獲得したカードの枚数が、少なすぎると思うんです。一日に何体ぐらい狩ってますか?」


まず隊員さん達が狩っている数を確認しよう。

1~2週間あれば数枚は出ると思うけど……ただそれは俺達の狩りを基準にしているから……咄嗟におかしいと思ってしまったけれど、狩っている数が少なければそれが原因だし。


「まあ、数百ってところだろうなあ」


「2チーム合わせても1000行かないと思う」


俺の問いに対し、顔を見合わせてそう答える隊員さん達。

なるほど。2チームでそれだと少なめかな……と思うけど、それでもカード1枚ってのはやっぱおかしいな。



「チュートリアル突破してから……5000ぐらいですか?狩った数」


チュートリアル突破してからそれなりに日にちが経っているからね。

合計したら結構な数を狩っていると思うんだ。



「そんなもんじゃないー?」


「大体そうだな」


んむ。

適当に言ったけど、大体合ってたらしい。


しかし5000かー……。


「運が悪すぎって可能性もありますが……俺の感覚で言うと5枚ぐらい出ていても可笑しくはないなーと」


おかしくないなーとは思うんだけど……。


「それは……運が悪すぎとも言えなくはないが、微妙なところだな」


そう、微妙なんだよねー。

5000ぐらいじゃ、運が悪い人は出ないって程度だし。

これからもっと数を狩っていけば俺達と同じぐらいに落ち着く可能性はある。


ぬう。


「戻ってアマツさんに確認しましょうか?ちょっと思い当たる節があるので……」


「そうしよう」


困ったときは仕様を知っている者に聞いてしまおう。

正確なドロップ率は教えてくれないだろうけど、ドロップ率に差が出るのなら何かしら情報はくれると思うんだ。


何となく心当たりはあるし、そこを突いてみても良いしね。







「と言う訳で、カードのドロップ率って条件によって変わるのかなーと」


そんな訳で皆でアマツのところに来てみたぞっ。

合流組はその内連絡くるっしょ。



とりあえずアマツにドロップ率についてストレートに聞いてきたけど、さてどんな反応が返ってくるかな?



「変わるよっ!」


あっさり認めおったで。



「やっぱり……それって人数で変わりますか?」


「うん、推奨人数より少ないほどドロップ率は上がるよ。あ、でも一定のところで止まるからね、だから無理して一人で潜っても意味はないよ?」


俺の心当たりってのは、最初にアマツにあった時にカード貰ったじゃない?

確かあれって少ない人数で突破したから貰えたんだよね。だから人数によって何かしら差が出てもおかしくはないなーと思ったのよね。


そしてその予想はあたっていたようだ。

俺とクロは推奨人数の半分で潜ってて、隊員さん達は推奨人数で潜っている。狩っている数以外だと、差があるのはそこだけのはずだからね。


しかし、随分と差がつくみたいだよねー……。



「そうなると推奨人数より少なめで潜るのが正解か……?」


そう都丸さんが口にする。


俺もそれを考えてた。

大人数でいけばドロップ率低いし、出ても人数多いから分配が大変だし。

戦闘が楽ってぐらいしか大人数で行く意味がない気がする。


いや、勿論戦闘が楽ってのは大事だけど。

それと同じぐらいにドロップ率も大事だと思うのですよ。



「少ない人数で楽勝な階層ならそうだね」


都丸さんの言葉が聞こえていたのだろう。

アマツはそう言うと少し考える素振りを見せ、言葉を続けた。


「……言っちゃっても良いかな?実は推奨人数で潜った方が……経験値って言えば分かりやすいかな?経験値をいっぱい貰える様になってるんだよね」


「ほほー」


推奨人数で潜る事にもメリットはあると。


「経験値は基本人数割りだけど……例えば3人で3体倒したり5人で5体倒すより、推奨人数の4人で4体倒した方が一人あたりの経験値は多くなるよ。具体的には2割増しぐらい。」


「なるほどなあ……だとすると普段は適正人数で潜って、カード狙うときは少人数で浅い階層に行けば良いか……」


「だとしてもドロップ率の差が凄いような……」


理由は分かったけど、俺とクロは50枚近くカードを持っている訳で、ちょっと経験値が増えるぐらいじゃ釣り合っていない気がするのよな。



と、ちょっと疑問に思って口にしたんだけど……アマツは俺の方を見て、やれやれといった感じで首を振る。


「少人数PT向けの救済措置みたいなものだからね……まあ、後々調整する事にはなると思うよ。あと島津君のカードの枚数が多いのは、単に狩りすぎってのが大きいから。君ってばちょっとドン引きするぐらい狩ってるからね?」


「そんな事は……ない、よね?」


そう呟いて、あたりを見渡してみるが……みんな無言である。

あれえ?



……いやでも待って、そこまで狩ってはいないはずだよ……?

だってほぼ毎日潜っているとは言っても午前中のみだし、隊員さんとか一日中潜ってるんじゃない?


「次の階層に行く直前とか、半日で1000とか2000とか狩ってるからね……?16階以降はそうでもないけど」


「いやでもそれぐらい普通じゃ……?」


だって一部屋1分でいけば、一時間で500とか狩れるじゃない?それを午前中一杯やったら1000とかすぐじゃんっ。


……と言うような事を皆に説明してみたのだけど。


「いや、ないわ」


「それはさすがに……」


「ちょっと頭おかしい」


「さすがに私もちょっとー……」


まさかの全否定!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る