第111話
クロのスキル習熟のためにダンジョンに潜っていると、二日なんてあっという間である。
今日は隊員さん達がオークに挑む日である。
そのお手伝いをするということで、俺とクロは朝食を済ませるとダンジョンの休憩所へと向かった。
集合時間まではまだ大分あり休憩所は無人であったが、個室で装備で着替え休憩所へと向かうと、隊員さん達の姿があった。
「今日はよろしくお願いします」
「よろしくです」
俺に気が付いた都丸さんが挨拶してきたので、こちらも挨拶を返しておく。
他の隊員さんも次々に挨拶しにきたので……あれ、人数少なめだな。4人って事は1チームだけ?
他の人はどうしたのかな?と思い、都丸さんに尋ねて見ると。
「野暮用がありまして、後から合流します」
との事だった。
野暮用ってなんじゃろね。
……あまり詳しくは教えて貰えなかったけど、どうも米軍関係で何かあったらしい?
お話聞かせてってことで呼ばれてるそうな。
ただそんなに時間は掛からないだろう、との事である。
ふむ。アメリカも頑張ってるって事なんだろうかねー?
ま、出発しますか。あっちも頑張っているなら、こちらも追いつかれないように頑張らないとね。
あ、ちなみに今いるメンバーは、都丸さん、田浦さん、吉田さん、北上さんの4人だよ。
「ゴブリンチームの次はオークが出てきます。道中簡単にですが注意点とかお話しますねー」
道中にオークについて話しておこう。
もちろん事前に情報は渡してあるけどね。
まず無いだろうけど、忘れているかも知れないし……と、初めてオークと戦うときの注意点を、過去に自分が戦った経験を元に話していく。
「島津さん」
「ほい?」
そして一通り話終えたところで、質問があるのだろう。吉田さんが手を上げ声をかけてきた。
どんな質問かな。
「ちなみにどっちタイプのオークでしたか?」
その質問かいっ。
「えっと、豚タイプですね」
ここのダンジョンのオークは豚さんタイプである。
豚じゃないほうの凶悪な感じのオークではない。
顔は豚だけど、肉体は豚って訳じゃないから、食べないよ?
「そっちか……」
「大丈夫か?」
「あー……」
豚さんタイプと聞いて、民の視線が北上さんに集まる。
みんな心が穢れてやがるぜ。
「え、なんで皆こっち見てるのさー……」
ピュアハートの持ち主じゃったか。
「ゴブリンは大丈夫でしたし、オークも大丈夫じゃないかなーとは思いますけど……」
「うげー」
とりあえず北上さんが分かっていなさそうだったので、北上さんにオークの日本における一般的なイメージを伝えておく。
話してから気が付いたけど、なんで俺が説明しなきゃいかんのだ……。
そんな目で見られても困るのです。
んまあ、実際にはそんな薄い本みたいな事にはならないとは思う。
だってゴブリンで平気だったしね。あいつら男女関係なく殺しに掛かってたはずである。
「無いとは思うが、北上が狙われる可能性もある。各自気を付けてくれ」
うむ。
本当に気を付けてほしい。あいつら油断すると一人はやられる可能性あるからね。
俺が戦った時の事をもう少し詳しく話しておこう。
レベル差があってあまり参考にならないかもだけど、少なくともオークの行動パターンはなんとなく分かるはずだ。
「多少の攻撃でもひるまず突っ込んでくるか、厄介だな」
「しかも鎧着込んでいるのだろう?止めるの厳しいと思うが」
「島津さんはどう倒したんだ?」
戦った際の様子を詳しく話したので、隊員さん達もオークがやばそうな相手だと言うのは良く分かってくれたらしい。
で、そうなると俺がどうやって倒したかも気になる訳だよ。
……あまり参考にならないだろうと、濁して話したんだけどなー。
「え……相手の腕掴んで、こう鉈で首をゴリゴリと……まあ無理やり倒しました」
まあ、要望とあらば話しますとも。
身振り手振りで……なのか伝わるかなー。
「参考にはならないな」
ほらー、参考にならないじゃんっ。
ちょっと引いてるし。
「ですよねー……まあ、なぜか足だけ鎧に覆われてないので、足狙うと良いと思いますよ」
クロとかはりきって切ってたもんな。
足を切ると頭が下がって首を刎ねやすくなるんで、さくさく狩れた記憶がある。
「そうするか。狙われた者は防御に徹して、それ以外の者は全力で足を狙え」
俺の話を聞いた都丸さんが、隊員さん達にそう言うが……皆頷いている中、一人だけ顔色が優れない人がいる。
「やな予感するよー……」
「念のため一番後ろに居たらどうだ?」
「そうしとくー」
まあ、あの話を聞いたあとじゃあねえ。
無いとは思うけど、もし狙われたらと思うと……そりゃ嫌だよねえ。
……俺もなるべく北上さんのそばに居たほうが良いか?
なんとなく北上さんが狙われそうな予感はするのだよね。
変な意味じゃなくてね?ほら、この中じゃ北上さんが一番小さくて細いわけだし、弱そうに見えるからさ。
男性隊員さんは筋トレの効果ばっちり出てて、かなり体が大きくなっているんだけど、北上さんは変わってないからなあ。
たぶん筋肉よりもレベルのほうが影響でかいとは思うけど、モンスターがそのへんをどう判断するかは分からないし、もしかするとーと思っちゃったんだよね。
と言うわけで、今回はなるべく北上さんのそばで見てようと思う。
あ、ちなみに筋トレはトレーニングルームで皆やってるよ。
あそこの中ってレベル補正が消えるっぽくて、普通の機材でばっちり鍛えられるのだ。
「それじゃ行くぞ。島津さん、もしもの時はお願いします」
「はい、援護します」
おっと、そろそろ行くのか。
実はもうゲートキーパーの部屋まで辿り着いてたりするんだよね。
あとは準備出来たら突っ込むだけである。
都丸さんは俺の返事を聞くと、合図をだし部屋の扉を開けた。
オークは俺の時と同じように、部屋の隅で武器と盾を構えじっと隊員さん達を見つめている。
これで俺の時と違っていきなり襲い掛かってきたらどうしようかと思っていたが、とりあえず行動パターンは同じようでほっとした。
そして隊員さん達がゆっくりと部屋に入った直後、オークはいきなり動き出す。
ただ、この動きも事前に隊員さん達に伝えてある。
彼らは落ち着いて装備を構えてオークを迎え撃つ……が。
「止まらん!」
「堅いっ、深く刺さらない!」
「え、ちょっとマジ!??」
最初に話した通り、足をみんなで狙い撃つが……傷はついても深くはない。そしてその程度の傷ではオークは止まらず、隊員たちを弾き飛ばすように駆け抜けていく。そして行く先に居るのは北上さんであった。
「そっちタイプだったか……」
「なに冷静になってんのーっ」
言ったの俺じゃないから!吉田さんだからねっ。
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