第101話


「調理器具とか食器も全部あるし助かるわー」


「本当だねえ。その内ダンジョンの中で生活出来るようになったりして」


準備がさくっと終わってしまったので、コンロでお湯を沸かしてコーヒー入れて休憩中なのだ。


クロはテントの上で丸くなってる。

なぜ中じゃ無いのか……沈み込む感じが気持ち良いとかだろうか?



しかし、BBQ広場は本当に便利だなあ。

キャンプ用品は一通り揃っているし、この分なら船だけじゃなく、釣り用品も揃っている事だろう。


惜しむらくはレンタルのみで購入は出来ないってとこだろうか。

ダンジョン内でしか使えないんよね。


んまあ、その内ショッピングモールとか施設が追加されて、外に持ち出せる様になるかもだし、そしたら色々買えば良いだろう。たぶんポイントで購入出来るだろうしねー。



なんとなーくダンジョンの中で生活出来るようになるかもねーって言ったけれど、実際に今でも個室をアップグレードしていけば、ある程度生活出来ちゃうとは思う。俺は家があるからダンジョンに住む気は無いけれど……隊員さんとかは住むかもね?


あ、ダメか家族が居るし……北上さんぐらいか?



コーヒー飲みながら、そんな事をぼーっと考えていると、不意に気配が現れた。


気配の方を振り返ると、そこには普段着?の隊員さん達の姿があった。


「おうっ、なんだもう出来てるじゃないか」


「すまん、遅くなった」


「このテントめちゃくちゃ立派っすよ!」


「うぃーっす」


「お早うございます。……太田さん、格好がめっちゃ気合入ってますね」


普段着に疑問符がついたのは一人だけ気合いの入った格好をしている人が居たからである。

もう釣る気満々ですわ。


「おうよ!船で釣る機会なんて滅多にないからな!……それに大物釣って帰らんといかんからな」


最後に小声でぼそっと言う太田。


聞こえてしまった以上は聞くしかないよね、と尋ねてみると。

どうも娘さんと……娘さん居たのね。その娘さん……まだ小さいらしいんだけど、土日に太田さんだけ出掛ける代わりに、マグロとってきてーと頼まれたらしい。


で、ついつい任せとけ!と言ってしまったと……。


「湖にマグロが居るわけ無いじゃないっすか」


「やかましぃっ、そんなの分かっとるわっ」


さすがにマグロは居ないだろうねえ。

ただ娘さん、どうもでかい魚=マグロと思っているらしく、でかい魚が釣れればそれで良いとのこと。


まあ、そこんところは太田さん次第なので、娘さんの為にも是非頑張って貰おうと思いますっ。




キャンプの準備はもう終わっているので、皆でさっそく釣りに行こうぜーと言うお話になった。

夜はお肉なので、お昼はお魚……と言うわけで、しっかり釣らないとお昼抜きになってしまう。


真面目に釣らねばと思うけど、如何せんこっちは釣りに関しては素人なもんで、釣り竿すらまともに選べなかったりする。


「釣り竿ってどれが良いのかなー……」


「私もそこまで詳しくないのよねー」


「何を狙うかによるが……こいつとこいつと、あとこれあたり持っていけば大抵のものは釣れるだろう」


「おー、ありがとうございます」


だが、そこは釣りに詳しい人が居ればフォローしてくれる訳で、とりあえず3本ほど釣り竿を選んで貰った。

ありがたい事に、リールと仕掛けは初めからついていた。


あとは予備の仕掛けもセットになっているので、糸が切られた時も安心である。



そんな感じで竿とか選んでいると、カタログを見ていた北上さんが太田さんの元へと近寄っていく。


「ねーねー、これって何用の竿なの?」


「あん?……なんだこいつは」


なんだろ?と思い後ろから覗いてみると……それは妙にごっつい釣り竿であった。


「マグロか?いやもっとごついぞ……ワイヤーも使うのか、まさか鮫?」


「鮫って湖にいるんでしたっけ?」


「……」


やたらと太い竿に、太い糸。先端の方とかワイヤーになっているし……これで一体何を釣れと言うのか。


鮫と言うがここは湖である。居たとしてもせいぜいチョウザメだろう。……もしかすると他にも要るかもだけどね。


まあ、居たら居たでその時だ、と釣り竿の選定を切り上げて、船の方へと向かうのであった。




船も種類は豊富である。

それこそ一人乗りの小さい奴から、10人以上が乗れるクルーザーまである。


「船どれにしますー?……てか運転できる人っています?」


今気がついた。

船の操縦できる人なんて居るのだろうか……?


最悪の場合は岸から投げ釣りするしかないか……と、一瞬思ったが。



「おう!2級ならあるぞ」


太田さん出来るらしい!

もしかして個人で船とか所有しているのだろうか?

……いや、さっき船で釣りをするなんて滅多にない、とか言ってたし、違うか。


だとするといずれ買うために免許だけ取ったのかな?すごいね、相当釣りが好きじゃ無いと出来ないと思う。


「さーっすが。じゃあ好きなの選んでー」


「これだな」


「おう……いかにも釣り船っぽい」


太田さんが選んだのはいかにも釣り船って感じの船だった。

てっきりクルーザーとか選ぶのかなーと思ったけど、そうじゃないらしい。


「クルーザーも良いが……こいつは生け簀付いてるからな」


「なっるほどー」


あくまで釣りが優先らしい。

生け簀があるなら釣った魚の鮮度保てるし、良いと思いますっ。




釣り船をレンタルし、いざ出発!

と、出発したのは良いのだけど、お留守番は可哀想だろうと連れて来たクロの様子がおかしい。


「クロ?どしたの……え、ちょ……なんで頭に乗ろうとするのっ!?」


なぜか俺の体をよじ登り、頭に張り付こうとするのである。

別に登っても良いんだけど……クロは普段そんな事をしないので、どうしたのかな?と聞いてみると。


「地面が揺れて嫌だ?……そう言うことなら別に良いけど、落ちないようにね?」


船の揺れ……と言うか地面が揺れるのがどうも嫌だったらしい。


俺の体も船の揺れに合わせて動いているのだけど、そっちは別に問題ないそうな……。

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