第80話

アマツの説明タイムも終わったと言うことで、一旦休憩所に戻っての昼食タイムとなった。


「カレーうまあ」


「しかしダンジョンの中にこんな設備があるとはなあ」


昼食はいつもの焼肉……ではなく、隊員お手製のカレーライスである。

全員がチュートリアルを突破したので、休憩所にある扉の先を紹介したのだ。

その中で俺が以前作っておいて、ずーっと放置していた炊事場を見た隊員さんが「カレーでも作るー?」と提案してくれたので、ありがたく受けたのだ。


久しぶりのカレーはおいしい。

自分一人だけだとカレーはちょと作りにくいんだよね。

少量作るのもあれだし、かと言って大量に作ると余るしねえ。


冷凍するってのも手だけど、それはそれで面倒くさい。




てか俺、気が付いちゃったんだけど。

これ、女子の手作りご飯を頂いてるってことだよね?? やったぜ。


ちょっとむさいおっさん連中も手伝っていたけど、気にしない。



「とりあえず必要そうなのしか無いですけど、他にも欲しいのあれば端末から購入できますよー」


これ欲しいなーと思ったのしか購入してないんだよね。

割と必要ポイント高いし、ポイントは余っているけど無駄使いはしないのだ。




「へー……たっか!」


「まあ結構高いですよねー……たっか!?」


俺が購入できると言うと隊員さんも端末を見るが、その必要ポイントの高さに驚いている。


まあ、各施設5000ポイントだったか必要だからねー……と、俺も端末を見てみたのだけど、なぜか必要ポイントが25万とかになっていた。


高すぎんだろっ!

……って思ったけど、よく見たらこれ既に作ってある施設だけだな高いの。

たぶんもう一回購入すると施設がグレードアップするとかかな……そうならこのポイントも納得がいく。



施設とか、一気に購入してからあまり見てなかったからなあ。

どこかの階層に行ったときに、解放されたんだろうか? それともアマツの気まぐれで追加?



まあ、より便利になるのであればどっちでも構わないんだけどね。




「そういえば皆さんは装備どうするんですか? そのまま使い続けます?」


ふと、どうするのか気になったので訊ねてみる。


「出来れば変えたいとは思っている」


そう答えたのは都丸さんだ。

ほかの隊員さんも頷いたりしているので、皆装備を変えたいと思っているらしい。


まあ、確かに今のナイフやスコップじゃ厳しいのかも知れない。

スコップは良いぞって聞くけど、ちょっとリーチが足りてない様な気がするんだよね。折り畳み式だからかなあ?



「島津さんの武器も購入した奴なんですよね?」


「いえ、これはただの鉈を改造したやつですよ」


もとはただの鉈ですぜ。

今は刃渡り50cmで超厚肉なので、ぱっと見は恐ろしい事になっている。


まあ、こんなん持ってたらそりゃーポイントで購入したのかなーって思うよね。

普通はこんな刃物まず手に入らないだろうし。



「改造でそこまで変わるものなのか……」


変わりますとも。


「アマツさんからも説明あったと思いますが、しっかり改造出来てカードも揃えられるなら地道に強化して行ったほうが良いみたいですよー」


ってアマツが言ってました!


実際どれぐらい違うのかは分からないけどね。

武器の強さが数値化でもされていたなら分かりやすいんだけどさ、やっぱ難しいのかな?


実際カード集めるの結構大変だし、集めるぐらいならポイントで装備買う!って層もいると思うのよね。

その時に数値化されていたら検討しやすいんだけどなー。


「ふーむ……ちなみにだ、島津さん」


「ほい?」


アマツに頼んだら実装してくれないかなー、とか考えていると、都丸さんが何やら思案顔で話しかけてくる。


なんでしょ。


「島津さんがポイントで購入した装備を、こちらで買い取ることは出来るのか?」


「んん、出来ると思いますよー?」


そうきたか!


確かにその手を使えば5階を突破したばかりでも強力な装備を使えるな。

ゲームとして考えたら、それはどうなの?と思わなくもないけど、装備が弱いとリアルに痛い目にあう訳だしなあ。

半分ぐらい気持ちは分かる。


とりあえず端末見てみるかね。



「少々お待ちを……これが15階で購入できる装備です」


端末をぽちぽちといじり、装備購入の画面を開いて都丸さんに見せる。

すると皆一斉に都丸さんの背後にまわり、端末を覗き見し始めた。


……端末小さいからこういう時不便よな。

こう、空間に映像映したり出来ないのかなー? まあこれはこれで楽しいから良いけど。


「色々あるな」


「山崎ぃ、お前そのメイスなんか良いんじゃないか?」


「え、えぇ!?」


「これ、すっごい重そうっすよ? あ、でも山崎さんなら丁度良いかもっす」


「刃が通りにくい敵もいますし、ありかもですねー」


あのくそトカゲとか、硬かったからなあ。

メイスとかあれば頭を潰せて良いかも知れない。


突き刺せば良いんだろうけどね、突きって狙ったところにピンポイントで当てるの難しいのだ。



「私はシンプルな方が良いな……この辺りとか」


「それ逮捕される奴じゃ」


「何でだよ。 ただの鉈だぞ」


殺人鬼っぽい人が、血だらけの鉈を手に……そりゃ逮捕されますわ。いや、下手すりゃ撃たれるなっ。



「円匙は無いのか?円匙は!」


えんぴってなんぞ? ……あ、スコップか。


この人がスコップ持ってると何か似合いそうね。



「!? ……ガ、ガンブレード!?」


「え、うっそ? まじだ!」


は!?


嘘でしょって思ったら本当にあったー!?


ここって極小ダンジョンだから銃ダメなんじゃないの……?

いやまてよ。弾丸を飛ばすタイプじゃなくて、爆発のみな感じなのだろうか?


ううむ……完全にロマン武器というかネタ武器というか、そういう類だけど……正直ほしい。

てか皆すっごい食いついてるし、吉田さんとか興奮して眼鏡がぷるぷるしてる。

動くたびに怪しく光ってやばい。



「基本的な物からロマン武器まであるとは……やるな、アマツさん」


そうどこかを見ながら呟く都丸さん。

いや、本当ね。 よく見たら他にもロマン武器いっぱいあるし、よく揃えたもんだよ。

男の子なら絶対惹かれるラインナップである。




男の子なら。


「ねー、みんなー」


一人だけ、テンション低い子がいるんです。

皆が端末に集っているのを、少し距離をとって眺めていた北上さんだけど、頬をぽりぽりと掻きながら皆に声を掛ける。


「楽しんでるところ悪いんだけどさ、必要ポイントみた?」


「…………」


その言葉に一斉に無言になる男衆。


えーっと、ポイントね……10階の時で既に高かったからなあ。


「25万ポイントですねえ」


くっそ高いわ。


俺の言葉を聞いて、北上さんを除いた全員の顔に絶望が浮かぶ。



「……ポーション1個を5万円と仮定して、1250万か」


「無理っす!」


ポーション1個1000ポイントだからね。

それで計算するとそれぐらいのお値段になっちゃうと。


しかも1つでこれだからねー。

武器だけでも人数分揃えたら億単位になっちゃう。



とまあ、そんな訳でこりゃ無理そうだと、肩を落として食事を再開するのであった。

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