第67話
と、言った感じでダンジョンにこれからも潜り続ける事については、じいちゃんばあちゃんの了承は一応得られた感じである。
あとは隊員さん達と一緒に潜って、どうにかチュートリアルを突破……ん?
「……あ」
「どうした?」
話すのに夢中で都丸さんが待っているの忘れてた!
やばい、うっかり雑談とかもしちゃったから……おう、1時間ぐらい経過しておる。
と、とりあえずじいちゃんばあちゃんに事情話さないと!
「一つ忘れてた! えっとね、ダンジョンが自宅に出来たのと、俺がダンジョンに潜っている経験がある関係で、自衛隊に入らないかって言われてるんだ」
「ほう」
自衛隊と言った瞬間、じいちゃんの眉がぴくりと動く。
別にじいちゃんは自衛隊が嫌いって訳じゃないけれど……やっぱちょっと引っかかる所はあるみたいだ。
なにせ今までの話から、自衛隊に入ったらダンジョンに駆り出されるってのは想像出来るだろうし。
「あ、でも普通の自衛隊と同じじゃ無くて、隊員さんにダンジョンについてアドバイスしたり、一緒に潜るぐらいで、それ以外は自由にして良いらしいんだよね」
とりあえず自衛隊に入ると言っても大丈夫なんだよーとアピールしつつ。
「それで、その辺の説明をしてくれるって事で、実は隊員さんが一人一緒に来てるんだよね……」
都丸さんにぶん投げよう。
て言うか外で放置しっぱなしは不味い。
「外で待ってるのかい?」
「そりゃ、いかん」
「ちょっと呼んでくるね!」
俺はそう言うと玄関を出て、車のもとへと走って向かう。
外に出てすぐに車が目に入るが、中に都丸さんの姿はない。
おかしいな? と思い、さらに進むと車の外で何やら怪しい動きをする都丸さんの姿があった。
何してるのかな?
「都丸さーん! お待たせしました!」
「お? 終わったか……ったく、なんだって北海道のアブはこんなデカいんだか……よし、行こうか。 そっちの話は上手く行ったのか?」
手をぶんぶんと振りながらそう話す都丸さん。
彼の周りにはこれまたぶんぶんと音を立ててやたらとデカい虫が飛び回っていた。
アブだね。
なぜか奴らは車に集ってくるんだよね……正直近寄りたくない。
「うん、とりあえずこのままダンジョン潜って良いって」
「そりゃ良かった」
若干距離を取りながら、そう都丸さんに返す俺。
とりあえず家まで連れていこう。
アブまじで怖い。
カードの効果で耳が良くなっているからか、羽音がまじでやばすぎる。
「陸上自衛隊所属の都丸です。 本日はお孫さんの自衛隊への入隊についてご説明に上がりました」
そう言って頭を下げる都丸さん。
釣られてじいちゃんばあちゃん……そして俺もぺこりと頭を下げる。
「まず、島津さんのご自宅にダンジョンが出現した事は、もうご存知かと思います」
都丸さんの話は大雑把に言うと自衛隊がダンジョンに潜り、ポーションを集めていること。 現在ダンジョンについてほとんど分かっていないこと。 そのため現状最もダンジョンに詳しいであろう、俺に手伝いをして貰いたい……そして俺の存在が外に知られた時に、外圧から護るためにも自衛隊に一時的に入って貰いたい。と言った内容であった。
中には海外の攻略情報も含まれており、他にもそこまで話して良いのだろうか?と思うような情報も入っていた。
「外圧から守るために一時的にね」
「自衛隊さんのお手伝いって大変なのかしらねえ……」
「内容としましては、ダンジョンに潜る際に同行して頂いて、アドバイスや戦闘の補助をお願いする事になるかと思います。 お孫さんと我々の実力差を考えると、そこまで負荷にはならないかと……それに一日フルでやるので無く、半日だけ行い。残りは休憩にする……もしくは一日おきに休暇を入れるなど、無理にならないように努めますので……」
おう……かなりこっちの事を気にしてくれてる感じだ。
ぶっちゃけその内容だと、普段の一日より楽だと思うような?
「康平はそれで大丈夫なのか?」
「まったく問題ないよ。 普段より楽なぐらい」
都丸さんの話を一通り聞いたじいちゃんが、ふむと呟き、そう俺に確認してくる。
俺としてはまったく問題ないように思えたので、そう答えておく。
「……分かりました。 うちの孫を宜しくお願いします」
そう言って頭を下げるじいちゃん。
都丸さんも頭を下げる。
こうして俺は予備自衛官として、自衛隊に所属する事となった。
その後は書類の作成をしたり、ポーションについて説明したり。湿布についても実はダンジョン産である事を話した。
普段使いとして湿布はかなり使い勝手が良いので、じいちゃんばあちゃんにまた渡すつもりだ。
これには都丸さんもかなり食いついていた。瓶と違って携帯しやすいのが良いんだそうな。
そう言や湿布の事を自衛隊さんに話してなかったな……うっかりしてた。
あとで自衛隊さんにもいくつか渡すと話して、今日は解散となった。
「それじゃまた来るねー。 あ、夏になったら麦の刈り入れあるんでしょ? 手伝いに行くからまた電話ちょーだいね」
「おう、すまんなあ」
「康平、気ぃつけて帰るんだよ」
二人に手を振り祖父母宅を後にする。
帰り道、今日のことについて都丸さんに礼を言う。
「都丸さん、今日はありがとうございます」
「いや、こちらこそ助かった。 ……本来であれば一般人である島津さんにお願いする様な内容じゃ無いんだがな……すまないと思っている」
「いやいや、こんな状況じゃしょうが無いですよ。 それで、何時から潜り始めるんです?」
頭を下げる都丸さんに、いやいやと手を振る俺。
ちょっと車が横に流れたが、問題ない。
後ろから聞こえるクラクションをスルーして、都丸さんにいつからダンジョンに潜るのかと尋ねてみた。
潜るなら出来るだけ早いほうが良いよね。 俺のほうも色々と準備したいし、予定は聞いておかないとだ。
「……明日からって話だな」
「はやっ。決まるの滅茶苦茶はやくないです?」
早い分には良いんだけどさ、ちょっと早すぎなんじゃないだろうか。
ろくに準備出来な……いや、ポーションあたりあればそれで良いかな? 装備は自前で用意するだろうし、こっちで特に用意するのはー……あー、地図でもコピーしておこうかな? 手書きだけど無いよりはましだろう。 無いとは思うけど、はぐれたら大変だしね。
「それだけ上も焦ってるんだろうな……明日から潜るメンバーだが、恐らくは俺たち分隊が選ばれると思う」
「あ、そうなんですね。 顔見知りの方がやりやすいんで、助かります」
知り合いなのはありがたい、まあ会って1日程度だけどね。
それでも初対面の人と比べれば……ああ、都丸さん達がチュートリアル突破したら別の人が来るのかな?それとも都丸さん達が何とかする?
まあ、その時になったら分かるか。
とりあえず帰ってクロにご飯をあげよう。
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