第51話
翌朝、俺は祖父母宅へと行き、お土産の牛さんセットと湿布を渡すと早速畑へと向かった。
「ここ?」
「そうそう」
向かった先は結構広めの畑で、畝には緑色の植物がニョキニョキと生えていた。
あれが全部アスパラか。
「この長さ以上のを収穫すればいいのね」
ばあちゃんから定規を渡された。
この定規を当てて、それよりも背丈が高ければハサミでちょきっと切って収穫するのである。
他の作物と違って、機械で一気に回収はしないそうだ。
一応専用の機械はあるらしいんだけどね。
アスパラが一定の長さになると自動で収穫してくれる優れものらしい。
ただじいちゃんばあちゃんは導入してないようだ。
「そうそう。 腰痛めないようにねえ」
確かに毎回屈んで切るから腰痛めそうだ。
持ってきた湿布が大活躍することだろう。
折角なので今回は俺も湿布を使ってみることにしたよ。
貼った状態で作業すると腰に全然こないんだ、とじいちゃんから俺も貼るようにと言われたのだ。
「それじゃわしはこっちから行くかの」
そう言うとじいちゃんは回収用の箱を持ち、収穫作業に入る。
ばあちゃんもそれに続いた。
俺も適当な畝に向かい、すぐに収穫作業に入った。
「立派なアスパラだなあ」
畑にあるのはどれも太くて立派なアスパラばかりだ。
時々細いのもあるけれど、ほとんどが親指ぐらいの太さがある……実に美味しそうだ。スーパーでたまに買うけど、こんな立派なのあまり見たことないぞ。
おっと、収穫に集中しないとだ。
じいちゃんもばあちゃんもサクサク収穫していくし、俺も負けない様に頑張らないとだ。
「……」
いくつ目の畝だろうか。
気が付けば無言で夢中になって収穫作業を行っていた。
箱も何度も満杯になり、その度にトラックの荷台に積み込んでいる。
何となく残りの畝はどれぐらいかなーと見渡すと、残りは半分と言った感じであった。
「んー」
腰の調子を確かめるように、ぐいぐいと腰を回してみる。
若干の痛みはあるが、疲労は溜まっておらず残りのアスパラを収穫するのに支障は無さそうだ。
「……これ、湿布ないと腰に相当くるぞ」
ただこれ、湿布を貼ってだからなあ。
貼ってなかったら痛みで参っていたかも知れない。
湿布様々だ。
また追加で持ってこようと思う。
これを用意してくれたアマツにも感謝だね。
今度何か差し入れでも持っていこうかな? お茶は飲んでたし、実は食事はしないんだよ、あはははっ! なんてことは無いだろう。たぶん。
「こんなもんか」
そういって箱をトラックの荷台にのせるじいちゃん。
大体2時間ぐらいかな?
畑から収獲できるのは全部取り終えた。
俺が4割ぐらいで、残りはじいちゃんばあちゃんが収獲した。がんばった、俺。
「おー。 なんだかんだで結構いっぱいとれたねえ」
1本ずつ収獲するし、そこまでの量にはならないかなーって思っていたけれど、改めてトラックの荷台を覗き込むと結構な量が集まっていた。旨そう。
集めたアスパラは一反家に持ち帰る。
「剪定してお昼にしましょうか」
そして選定作業を行うようだ。
要は規格に合わせて揃えて売れるようにする作業である。
そしてそれが終わったらお楽しみのお昼ご飯タイムである。
規格外のアスパラとか食べたいなーなんて期待していたり。ふふふ。
「康平が手伝ってくれたおかげで大分早く終わったわい。 それにこの湿布……本当に助かるなあ」
「本当にねえ」
そうシミジミと話すじいちゃんばあちゃん。
俺も使ってみたけれど、効果は抜群だ。
全国の農家さんが欲しがること間違いなし。
はよ一般開放しないかな、ダンジョン。
「ある程度は機械がやってくれるんだね」
「そうそう。 あとはサイズ別に分けて出荷するの」
「ほほー」
選定作業とか俺に出来るんかなーって思っていたけれど、大体は機械が自動でやってくれるらしい。
俺がする事と言えばテープで数本まとめて束ねる程度のもんだ。
テープでまとめたら後は農協さんが買い取ってくれるらしい。
束ねたアスパラを箱に詰め、農協に運んだ後はいよいよお楽しみの昼食タイムである。
俺が持ってきたお肉と規格外のアスパラ……曲がった奴とか先端開いた奴とかもまとめて網の上で焼いてしまおう。
採れたてだからすんごい瑞々しいの。
程よい歯ごたえで、甘味があってジューシー。
フライパンも網に乗っけて肉巻も焼いてくれたけど、そっちも滅茶苦茶おいしい。
今度炊き込みご飯も作ってくれるそうな。
そっちも楽しみだなあ。
「そういえばハチ公前のあれ、他でも見つかったらしいなあ」
「あ、そうなの?」
「四国と山形って言ってたかしらねえ」
食後のお茶を飲んでいると、じいちゃんばあちゃんからそんな情報が飛び込んできた。
まじか、ニュース見過ごしたかな……後でスマホで確認しないと。
四国と山形かー。
あとは東京と北海道だから結構ばらけてるね。
「ありゃ一体何なんだろうなあ……ニュースじゃダンジョンがどうのと言っとったが」
「ダンジョンって話だね。 動画でみたことあるけど、本当にそんな感じだったよ」
「すごい世の中になったもんだねえ……」
いや本当だよね。
ダンジョンが実際に世の中に現れるなんて、妄想した事はあっても信じられないよね。
しかもポーションなんてものまで存在しちゃうんだからねえ……これから世の中どんどん変わる事になるんだろうなあ。
……俺も頑張らないとだ。
まずはじいちゃんばあちゃんのお手伝いからかな。
食後の休憩が終わったら、午後の収穫作業が始まる。
そしてまた選別して農協に運び……また明日になったら収穫作業を行う。
これが今月末ぐらいまで続くらしい。
休みは大分長くなりそうだけど、最後まで頑張っちゃおうと思う。
そして時は流れて7月の頭。
「でったあああああああ!!」
鹿狩りを再開した翌日のこと、俺はやっと目的だったカードを手に入れることが出来た。
これで俺とクロ、それぞれ3枚確保できたことになる。
「よおっぉおっし! クロっ次いっくぞー!」
確保できたらこんな階層からはおさらばするのだ。
俺とクロはスキップしそうな勢いで、次の階層へと続く扉へと向かうのであった。
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