第30話

普通のゴブリンと比べて、強い!って訳では無いが面倒な敵だった。

その分貰えるポイントも増えていると良いのだけど。


そんな期待を込めながら、俺は端末を起動する。



「今のでポイントいくらなのかなー……10ポイントかあ」



……んんんっ、微妙だ。


これなら普通のゴブリンを狩りまくったほうが美味しい気がする……いや、でもレベルが上がればそうでもないか? 問題はレベル上がる気がしないってとこだろうか。


正直ゴブリン狩るのを張り切りすぎた気がする。



「とりあえず武器を改造したい。 戦闘時間を短縮出来るならこいつらでも美味しいはずだし……でもなあ、結構大変だよな」


そうなると後は武器を改造して強くなるしかないのだけど、それには大量のポイントが必要と言うジレンマがある。


どうするべ。



「他にポイント稼ぐ方法あると良いのになあ」


これもアマツと相談だなあ。


まともにポイントが稼げなくて、にっちもさっちもいかないぞーとなれば何かしら対策考えてくれるだろう。



ま、いったん戻りますか。


クロも普通のゴブリンよりは強いのとやれて、満足しては……いないけど、物足りない!って感じでも無い。


「クロ、それじゃそろそろお昼だし戻ろうか。 明日は……後で考えようか」


明日どうするかはアマツと相談してから決めよう。

自力で何とかするしかないのなら、普通のゴブリンを多めに狩ることになるだろうなあ。








お昼は野菜がそろそろ痛んできそうだったので、ざく切りにしてフライパンに突っ込んで、薄切りの豚肉を広げてまとめて蒸し焼きにしてみた。


ポン酢とかごまダレで食べると美味しい。


「作りすぎた」


ただフライパンにぎっちり詰めたのはさすがに多かったかな。


「食い過ぎた……クロ、ちょっちアマツさんの所に行ってくるね」


俺は膨らんだ腹を擦りながらダンジョンの中へと入っていった。



さて、アマツは居るだろうか?


「アマツさん居ますか?」


「勿論だとも!」


居たわ。

むしろ待ち構えてた。


相変わらず暇なのね……っと、それはさておき。


「ちょっとご相談がありまして……」


ポイント足らなすぎてどうにもならんですよと訴えて見ようか。





「なるほどね。 ふむ、宝箱の中身は売ったかい? レア装備でなければ今使っている装備の方がずっと良い物のはずだよ」


俺の話を聞いたアマツの答えは、いらないもの売れば良いじゃ無いーだった。


それが出来たら苦労しないわっての…………いや、まて売れるのか?


「え、売れるんですか??」


「勿論! 売却からポイントに変換できるよ」


嘘でしょ。


「え、あ、その……どこにあるんですか?」


そんな項は端末のどこにもなかったぞ!?


あるなら教えてよっ! と俺の端末をアマツに渡す。


するとアマツは端末をぴっぴと操作して、思いっきり首を傾げ、不意に手をぽんっと叩いた。




「機能つけるの忘れていたよ! あははっはは!」


「……そっすか」



張り倒すぞこんちくしょーめ。






「はい、これで良し! 売却が出来るようになったから試してみると良い、ダンジョンで入手したものなら何でもポイントに変換出来るよ」


その後ごめんごめんと謝るアマツに機能つけて下さいとお願いすると、ほんの数分でつけてくれた。


ダンジョンで入手したものならと言うことで、宝箱に入っていたちょっとしょぼい装備を売っぱらってみることにした。


今まで取ってきた物は全部ダンボールに突っ込んで休憩所に置いてあるのだ。



箱に手を突っ込み、触れた物を引き上げると、それは小振りなナイフであった。


切れ味はそこそこ良さそうだけど、刃渡りが短いので戦闘には向かないなと箱に突っ込んだやつだ。


投げナイフとしてなら使えるかもだけど、俺コントロール悪いし。 あとは解体とかに使えるかも? あ、でも俺解体しないわー。



っと要らないことを再確認したところで、早速売ってみよう。



売却の項目に触れると、目の前にでっかい箱が現れた。

ここに入れろってことかな?


「おー……1個250ポイントかあ」


ナイフを放り込んでみると端末に交換できるポイントと、交換しても良いですか? と言うコメントが表示された。


勿論交換しても良いので、俺はその表示の下にあった「はい」を選択する。


すると箱の中にあったナイフはノイズに包まれ、やがて消えていく。

端末を確認すると確かにポイントが増えていた。



その後も俺は要らない装備を箱に放り込んではポイントに変更するを繰り返していった。


大体交換し終えたところで改めてポイントを確認してみると……ポイントは8000近くまで増えていた。


「うーん……」


「ポイントが足りないのかい?」


「あ、はい。 改造に回すポイントがなかなかきつくて……」


アマツの問いにそう返す俺。


実際8000ポイントがあっても、装備を一つフルに改造する事は出来ても2つは無理。そんな微妙なポイントだったりする。


宝箱の中身を売ることによって、確かにポイントが増えるペースが上がるのだけど、まだ足りないんだよなあ……。



うんうんと唸る俺を見て、アマツの笑みが深くなる。


「そうかい。 ならちょっとヒントを出そうかな?」


「ください!」


ヒント超欲しい。


「良い返事だ! ……5階の扉の先に居た奴とはもう戦ったんだろう? あいつを見てどう思ったかい?」


ぬ? どういうこっちゃい。


扉の先のやつを見てどう思ったか……?

確かあいつは普通のゴブリン違って…………そう言うことかっ。




「んー、装備がちょっと良く……そう言うこと??」


アマツのヒントを聞いて、俺の頭の中に一つの考えが生まれた。


「そう、連中の装備もポイントに変更できるんだよ!」


「おおお!」


扉の先に居たゴブリンは、普通のゴブリン違ってちょっと良い装備をしていた。

そう、良い装備をしていたのだ。


アマツはさっきダンジョンで入手したものなら何でもポイントに変換出来ると言っていた。


つまりはあいつらの装備を引っ剥がして売ってしまえば良いのだ! 追いはぎかな?


「ありがとうございます! 明日から早速試してみますねっ!」


これなら1体につき10ポイントなんかじゃなくて500ポイントとか貰える可能性だってある。

そうなれば装備も改造しまくれるし、攻略だって捗るだろう。


テンションむっちゃ上がってきたぞ。





「クロー! 明日からはあの装備良いゴブリン狩りまくるよ!」



上がったテンションのまま家へと戻り、クロへと声をかける。


クロは迷惑そうな顔をしながらも俺の話を聞いてくれるつもりらしく、ソファーから降りると俺の側へと寄ってくる。



「連中の装備売ってポイントに変えられるんだってさー」


俺のその説明を聞いて首を傾げるクロ。

自分の端末を起動し、並んだ項目を確認して……その動きがピタッととまる。


そして俺の方へとゆっくり振り返り、じっと見つめてくる。


これはどういう事だ?って感じかな。



「ああ、うん。 機能つけるの忘れていたんだって」


その話を聞いて小さく息を吐くクロ。


クロの中でアマツの評価が下がった気がするぞっ。

頑張れアマツ。負けるなアマツ。

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