108.遺跡を守る兵隊

 砂漠エリアには複数の遺跡がある。

 確認されているだけで、合計十二箇所。

 形や規模は異なりで、地下に続いている物もあれば、広い部屋が一室だけあるといった簡素な造りまで様々らしい。

 そのほとんどが、現在も調査を進められている。

 現時点で判明しているのは、かつてこの地に栄えた国があったのだろうということ。

 残っている遺跡は、当時の王族や貴族にまつわる建物であることだ。


「他よりも頑丈に造られているから、現在でも残っているってことらしいよ」


「「ふぅ~ん」」


 ミアとキリエは興味なさそうだ。

 ユイは知りたそうに遺跡を見ている。

 そして、ハッと気付いて俺の腰に装備したランタンへ目を向ける。


「ベルゼなら」


「あー、俺もそう思って聞いたんだけどさ」


【大昔の、人間の国なんざ一々おぼえてねーよ】


「だそうです」


「……役立たず」


【んだとユイ! てめー最近ちょっと腕が上がったからってチョーシのってんだろ!】


「ありがと」


【褒めてねーんだよ!】


「いや、褒めてるだろ」


 ベルゼは意外と天然だ。

 ユイもベルゼの扱いが慣れてきて、良い感じのコンビになりつつある。


「さてと、そろそろ行こうか」


「うん」


【かっ! オレは手伝ってやんねーからな】


 拗ねたベルゼを宥めながら、俺たちは遺跡へと足を踏み入れる。

 俺たちが目指していた遺跡は、発見されている中でも一番大きい。

 露出している建物だけでも十分な広さだが、階段で地下にも部屋がいくつかあるらしい。

 聞いた話によると、まだ調べていない部屋はフロアがあるとか。


「調査チームに同行した冒険者パーティーが、遺跡を守るゴーレムと戦闘になったらしい。ギルドからそのときの話を聞いたら、色々と教えてくれたよ」


 確認されているゴーレムは三種類。

 一つは三メートル程度の大きさで、物理攻撃がメインのタイプ。

 もう一つは、同じ見た目で魔法を扱えるタイプだ。

 その話を聞いて、ミアが勢いよく振り向いて言う。


「ゴーレムって魔法も使えるの?」


「らしいよ。俺も初めて聞いたし、相当優れた技術で造られているんだろうね」


「手強そうだね」


「ああ」


「じゃー最後の一種類は?」


 キリエが歩きながら尋ねてきた。

 俺は一呼吸分の間を空けて、前を見据えながら答える。


「黒いゴーレム。物理も魔法も両方優れた個体だそうだ」


 今のところ、まだ一体しか確認されていないとか。

 ゴーレムの中でもさらに特別製なのだろうと推測される。

 戦った冒険者パーティーも、かなりの苦戦を強いられたと聞いた。


「へぇ~ でも全然いないみたいだけど?」


「一階のゴーレムはほぼ殲滅されているって話だからな。本命は地下のフロアだ」


「りょーかい。じゃー階段探さないと」


「階段ならあちらにありますよ」


 ミレイナが指をさす。

 入り口から入ってすぐに、人が通るサイズの階段を見つけた。

 だけど、その階段は崩落していて、下ることが出来ない。


「奥にも階段があるって話しなので、そっちへ向かいましょう」


「わかりました」


 そうして、俺たちは遺跡の奥へと進んでいく。


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