第24話-生徒指導-
先生に指定された魔法訓練室は学生練から徒歩一五分程の場所にあった。
午前中、リープに学園案内された場所の一つ。魔法訓練室は全部で二〇箇所あって、東西南北ぞれぞれ五箇所に設置されている。
正門が南にあるとするならば、魔法訓練室αは東方面だ。
俺たちはその中でフリード先生を中心に取り囲む形になった。
「貴様ら! 全員チームを組んだか! さっき教室にいた生徒が一人でもチームに入っておらず省かれた人がいたらグラウンド一〇〇周だ。では、出席を取る! チームA――」
はいっ! と、先ほどの二二人で分かれた計五チームは午後の授業の点呼中だ。
先生の凛とした声と生徒の元気ある高い声が魔法訓練室αにて交互に鳴り渡る。
魔法訓練室は教室とは違ってかなり広い。天井は生徒を縦に二〇人並べてもまだまだ余裕がありそうな感じの高さ。外周り一周走るだけでも、大半の女の子は息切れしそうだ。 他には大樹や、樹木、芝生、大きな岩石や砂利、他にも数多くの障害物が設置してある。
「……なるほど、実践を想定された訓練室というわけか。 」
「ちょっと、あきら!」
俺の名前を呼んだフィーネは物凄く不機嫌そうだ。
艶のある頬の上には鋭い目つきでムスッとしている。
「なんだ?」
「絶対に無茶だけはしないでよね」
――ありえん
俺はフィーネに何回殺されそうになったのか覚えてないぞ。
「……ああ。分かってる。最初に約束したもんな」
「ふんっ」
ふと、リープが近づいてきて、フィーネに対して反抗しているかのように尋ねる。
「なぜフィーネはいつもあきらさんにそのような態度を取っていますの? あきらさんが可哀想ですわ」
言い終えると腰に手を当てて、手首を返らせていて女の子らしいポーズをする。
「変態だからよ」
「わたくしはあきらさんが変態だとは思えませんわ」
「変態よ」
「変態ではありませんわ」
「変態よ!」
「紳士ですわ!」
バシッ――! と名簿帳で二人の頭が叩かれた。
どうやらフリード先生が此方へ来たらしい。
「貴様ら、訓練前の点呼中に痴話喧嘩か。次も同じことしたら、只では済ませないぞ。これからは実践を想定した訓練を行うのだ。実践で貴様らのせいで他のチームが全滅したらどうするつもりだ。身を弁えろ!」
恫喝。恐喝。
生徒指導の先生はとてつもなく恐ろしい。
「チームF、如月煌!」
「はい」
「声が小さい! 貴様はタマを落としたのか! 如月煌!!」
「はい!!」
一体、此処は本当に何処なのか。
学園長のやろう、ウハウハ学園生活は嘘だったのか?
どこかの国軍に入隊した気分だ。
「チームF、フィーネ・フリーレン!」
「は、はいッ!」
「チームF、リープ・ライトニング!」
「はいっ!」
学園長の話を聞く限り、フリード先生は三〇歳らしい。
まだ若くて綺麗な顔立ちや雰囲気からぱっと見た限り普通のOLって感じなのだが、これで生徒指導の先生且つ問題児や特殊な生徒がいるクラスの担任ってことは、相当凄い人なのだろう。
しかも、二つ名が『
本人は知らないらしいが、生徒間ではすでに広まっている。
フリード先生が三つの黒い魔法陣を空中に浮かせ、淡々と呟く。
「精霊法第八条に基づき、フリード・ホーフの名においてここに宣言する。学園内、魔法訓練室で魔法による戦闘訓練を開始する!!」
精霊界ヴェルトの学園内では、この様に担当員が魔法の使用許可を宣言することが、精霊法で定められている。
それは、普段見ることも感じることも出来ない精霊たちに対しての敬意と尊重。何も言わずに魔法を用いれば、精霊たちがお怒りになって暴走すると言われている。
だから、人が多い学園内や市街地などでの魔法使用は制限されているらしい。
「チームによる戦闘について教授しておこう。何故チームで行動しなければならないか。チームA!」
「はいっ! 一人じゃ生き残れないからです!」
「そうだ! 郊外では魔物がゴミの様に存在している。一人で立ち向かおうとするな! 返り討ちになるぞ! 次、チーム内で戦闘をどう分担する。チームB!」
「守りを固める人、攻撃する人、遠距離で支援する人、を分担します!」
「よろしい! 敵はどのように攻撃してくるか不明だ。全員で遠距離の構成にしてみろ、接近されて壊滅だ! 全員が防御してみろ、誰が敵を倒す! 全員が攻撃してみろ、魔法が干渉しあって消滅するぞ! 各々の役割に徹することでチームとしての最大限を活かすことが出来るのだ! では、まずはチーム内で分担を決めろ! その次は、貴様らでどのように訓練すれば実践で役立つのか考えろ! 頭を働かせろ! ここで訓練しておかなければ、実践では真っ白になって棒立ちだ! 日頃の勉学をここで生かせ!」
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