第2話-平凡なる放課後-

 窓越しから通る太陽に照らされる廊下。雲一つもない快晴。飛行機が飛ぶ毎に耳を塞ぐ人達、それを気にせず部活動に熱中する人達、教室に残って仲のいい友人といつものくだらない雑談をする人など、色々な人がこの学校にいる。オカルト話に熱中していて魔法がどうのこうのや音楽の話、昨日のテレビの話題など話している人が教室内では目立つ。


「早く夏休みにならないかな。あきらもそう思うでしょ?」


 クラスメイトの森崎健二もりさきけんじが俺に話しかけてきた。健二は中学生活最初の頃からの友人であり今年三年目。三年間一緒のクラスだった悪友だ。スポーツは結構万能で地頭が良い。

 そして、絶対黒髪鉄板ショートヘアで爽やかな顔立ち。キリっとした目は女子の中で人気があるとかないとか。俺よりも若干身長は高く、ほっそりとしているように見せかけているが、意外に筋肉質な体がワイシャツの中に隠れている。いわゆる細マッチョってやつ。 彼の万能性は嫉妬ものだ。


「って言っても、あと三日だろ? 」


「三日も待てないよ。僕は久しぶりに自由研究したいんだ。ところであきら、今日のテストの出来具合はどうだったの?」


 そう、俺ら学生は試験期間であり、放課後グダグダ雑談して勉強しないでいるところだ。そろそろやばいんじゃないのか。主に俺が。


「ヤバイに決まってるだろ? 健二。もう帰ろう。俺は勉強しないと出来ない人間なんだよ」


「大丈夫だって。試験の内容は授業を聞いているだけで八〇点前後はいくでしょ」


 健二はいつもそう。授業聞いてるだけで八〇点は取れるのだ。俺にも脳みそ分けてくれよ。あぁ……書いたことを食べれば暗記できるパンとか落ちてないかなぁ。


「――落ちてるわけないって」


 おい おい、なんで心を読めたんだ? こいつ――


「魔法使いなのか……だって? 魔法使いじゃなくてもあきらと一緒にいれば考えていることはわかっちゃうよ。いつも同じ事いってるじゃん。まぁ今日は帰ろうか。補習は嫌だもんね」


 俺の考えていることはよく顔に出ているらしい。俺は単細胞なのだろうか。

 本当に人間は不平等だ。俺も優秀な人でイケメンに生まれたかった。悲しい現実だ。

 この世界は何故不平等なのだろう。「人は平等に」と偽善者は言うが、平等で無いから賑やかな地域や社会が存在する。平等と謳っている人はそのように考えないのだろうか。例えば、一日三食の食事することが出来るのは全人口の二割と言われている。これを平等にしてしまったら、一日一食も出来ないではないか。犠牲があるから今の俺達がいる。そう考えてもいいだろう。それでも平等と言いたければどうぞ食事を分け与えて下さいというわけだ。

 まぁ、何というか。ブサメンとフツメンがいるからイケメンはイケメンと思えるわけで俺も人々に貢献してるんだなぁ。

 イケメンになれる魔法、ないかなぁ。


 今日も学校は終わり健二と一緒に下校だ。

 夏風が強く体当たり、ボワっと生暖かい。空はいつも通りこの時間帯はオレンジ色に染まっている。道沿いにそって歩いていると、健二が真横に指を向ける。


「ちょっと、こっちの方に行ってみない? 何か、胸騒ぎがするんだ。

 あきらも、そう思ってるんじゃないの?」


 いつもと同じ通路、景色、物件を見て往復するだけでは飽きてしまう。そんな飽きを気づかせてくれるのがあいつだ。健二は感性が豊かだ。俺とは違う。だからいつも嫉妬してしまう。俺にも何かあればいいんだけどな。


「ったく、俺にそんな能力はねえよ。でも、行ってみっか」


 ――だが、今日の俺は何か冴えている

 ――日常と違う何がが、この奥に、あるような気が俺もする、気がする……


 分かれ道をいつもとは違う方向に曲がり奥へ進むと、奇妙な森が奥の方に見えた。

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