第5話 森の小路に出る自殺した女3

 前回お話した通り、僕は自宅近くの雑木林の小路で恐怖体験をしたわけです。それは僕の心霊体験の原体験的な出来事であったわけです。


 でも懲りないんですね。ぼくは数年後中学へ上がると、夏の夜に例の小道へ肝試しに行くんです。何人かの友達と。


 その日は夜でも熱い真夏の時期でした。僕たちは自宅近くの公園に食べ物や飲み物を持ち込んで、ワイワイガヤガヤとパーティの様なもので盛り上がっていました。男が三人くらいに女の子が二人くらいいたかな。女の子がいたから妙にハイになって機嫌よくしゃべっていたのを覚えています。


 僕が例の子供の頃の体験やUさんの体験を話すと皆すぐに食いついてきて、ちょうどその小路が近かったこともあり、じゃあ肝試しにでも行くかとなりました。


 雑木林に入りUさんの家の近くまで来ました。辺りは漆黒の闇でしたが、Uさんの家の玄関の明かりがある所だけは少しだけ明るかったのです。


 Uさんの家から少しだけ離れたところに一旦集まり、僕と女の子二人が先に例の四つ辻に向かうことになりました。


 懐中電灯を持って歩いてゆっくりと進みました。女の子が怖いといって皆でくっついて進むと、やがて四つ辻に到着しました。


 辺りは月明かりさえ木に遮られて届かない暗闇でした。しんと静まりかえり、そこらで聞こえる虫の鳴き声さえしませんでした。


「なんかここ凄い不気味」女の子の一人が震え出したので、僕たちは来た道を引き返して、残った二人と合流することにしました。


 合流地点へ着くと二人は縮こまって座っていました。青ざめた顔をしていてガタガタ震えているんです。


 どうしたのか僕は聞きました。すると「やばい、やばい」と二人は言いました。


 二人が言うには待っている間中、雑木林の中で枝を踏みしめるパキッという音と、葉を踏む足音が自分たちの周りをずっと回っていたのだと言うじゃないですか。


「俺たちは絶対奥には行かない」


 それは決して動物なんかじゃなく、人間の足音だったと二人は言っていました。

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