同居人の女子大生たちが全力で色仕掛けしてくる件
Taike
第一章 俺と"あの子"と4人の魔女
第1話 二日酔いと合法ロリ
--懐かしい夢を見た。
晴天の下、幼少期の俺と"彼女"がニコニコ笑いながら砂浜を駆け回っていて。海面で反射した太陽の光が顔に当たって少し眩しかったり、浜風で髪が乱されたりするけれど、"彼女"と波の音を聞きながら裸足で砂浜を走るのはやっぱり楽しくて。
そんな風に無邪気に笑えた日々を思い出す。
だが、この夢から覚める間際。俺は楽しい、というよりもむしろ悔しいという気持ちを抱えながら、いつも決まってこんなことを考えてしまうのだ。
--ああ、どうして俺は"彼女"の顔を思い出せないんだろう、と。
♦︎
「また同じ夢か......」
そんな、どこにでもありふれているような台詞を吐き捨てつつ。ソファーの上で目を覚ました俺は、
「うっわ、ここ誰の家だよ......」
え、なんか......目が覚めたら全然知らない家に居たんだけど。
「え、えーっと? 確か昨日は同窓会があって、そんで2次会まで行って.....? って、やっべ、飲みすぎて途中から記憶が全然無い......」
いや、まあ状況的には、昨日の同窓会で酔っ払ってフラフラになった俺を、同級生の誰かが運び込んでソファに寝かせてくれたのかな、くらいの推察はできるが......さすがに俺をこの家まで運んでくれたヤツの正体までは分からねぇな。多分同窓会に来てた同級生ではあるんだろうけども。
「それにしてもクソ広い家だな......」
多分ここはリビングなんだろうけど、これがまあ広い。例えるならテレビ番組の企画とかでたまに出てくるシェアハウス並みの広さ、といったところだろうか。とにかく1人で暮らす分には広すぎる家だ。
つーか、マジでシェアハウスなんじゃないの、ココ。俺が今寝転がってるソファーとか超フカフカだし、なんか高そうな家具とかいっぱいあるし。
「うっ、頭いてぇ......こりゃ完全に2日酔いだな......」
だだっ広い部屋を見回していると、唐突に吐き気と頭痛が俺を襲った。
まあ、無理もない。昨日は少し飲みすぎたからな。いや、正確に言うなら陽キャ共から強制的にガバガバと酒を飲まされただけの話なんだが。
チクショウ、おかげで途中から綺麗サッパリ昨夜の記憶が無くなっちまっている。同窓会なんて行かずに、大人しく家に引きこもっているべきだったな。
まあ、それはそれとして、だよ。今日の二日酔いはマジでヤバいぞ。クッソ頭痛いし、今すぐにでも吐きそうだし、なんか足が超重くて、ほのかに甘い香りがするし......
......ん? ちょっと待て。足が重い? 甘い香り? 二日酔いにそんな症状なんてあったっけ?
なんてことを思いながら、俺はおそるおそる自分の足元を見てみる。
すると--
「うお!? なんだこれ!?」
なんか、俺の足元に掛かっている毛布が不自然に膨らんでいた。
「え、何!? 誰か居る!? 毛布の中に誰か居る!? 俺の上に誰か乗ってる!?」
驚嘆。仰天。パニック。ただただ驚く。二日酔いのキツさなど忘れてしまうほどに驚きまくる俺。
いや、マジで何なの!? もしかして家主!? でもなんで家主が俺の下半身にライドオンしてるの!? てか、マジで誰!?
......と、阿鼻叫喚していた時だった。
「ふぁー......あ、おはようございますです、
突如毛布がめくれ、『くかぁー』とあくびをしながら毛布の中から出てきたのは、推定12〜14歳くらいのパジャマ姿の美少女。つぶらな瞳に、ツインテールの黒髪。顔はどちらかというと丸顔で、顔立ちはかなり幼い印象を受ける。おそらく小学生、もしくは中学生といったところか。つーかパジャマダボダボじゃん。なんか萌え袖になってて可愛いんだけど。
って、俺はなんで自分の脚の上で正座してる女の子の容姿を冷静に分析してんだよ。今はそんな場合じゃないだろ。
「あ、あのー、名前は知らないけど、そこのお嬢ちゃん......? とりあえず俺の上から降りてくんないかな......? 君の膝が俺の太ももにメリ込んでで超痛いの......」
「あ! す、すいませんです! 今降りるです!」
すると頭に毛布を被っていた少女は慌てて俺の上、もといソファーの上から降りると、今度は板間の床の上にちょこんと体育座りをした。
「なぜ体育座り......」
「あ、え、い、いや! な、なんとなくです!」
「な、なんとなく、ね......」
なんか、こう、随分と変わった女の子だな......
「えっと......とりあえず俺の隣に座りなよ。今起き上がるから」
さすがにこの家の娘を床に直で座らせるのは心苦しいので、俺はとりあえず横になっていた自分の身体を起こし、ソファーに少女が座れる分のスペースを作ることにした。
「あ、じゃあ......はい! 失礼するです!!」
そう言って満面の笑みを浮かべながら、俺の隣にやってくる少女。
「えへへ! 岩崎さんの隣です! 嬉しいです!!」
「お、おう......?」
え、初対面なのになんなの、その謎の好感度。なんかめっちゃニコニコしながら見つめられちゃってるんですけど。
ん? ていうか今この子、俺の名前呼んだよな? 会ったこともないはずなのに、どうして俺の名前を......
って、いかんいかん。考えても分からんことを考えても意味が無いじゃねぇか。とにかく、この子には聞かなきゃならんことが山ほどある。ここがどこなのかも分からんし、それに、やっぱりこの子が俺の名前を知ってるのも謎過ぎるからな。
というわけで幼い子供相手というのが少し心苦しくはあるが、尋問開始といこう。
「えっと......お嬢ちゃんはこの家の子なのかな?」
「いや、それは違うです。そもそも私は子供じゃないです。だから、その.、お嬢ちゃんって呼ぶのはやめてほしいです......」
「え? じゃあ君って今何歳なの...?」
「私の名前は
......え、21? 今21歳って言ったが? どう見たって中学生くらいにしか見えないのに?
「ごめん芦屋さん、ワンモアプリーズ」
「芦屋凪沙! 21歳です! 岩崎さんと同級生です! もう! 岩崎さんも皆みたいに私のことを見た目で判断するんですね! 私は悲しいです!!」
「あ、ごめん! そ、その、お嬢ちゃん......じゃなくて芦屋さんがあまりにも若々しく見えてさ!」
「言い訳は聞きたくないです! どうせ『あ、合法ロリだ』とか思ってるんでしょ!?」
おっほぉ、なぜバレた。
「えぇ、そうですよ。どうせ私はちんちくりんのロリっ子ですよ。色気も何も無いお子様ですよ......」
やべぇ、どうしよう。芦屋さんが頬をプクっと膨らませて拗ねちゃった。この状態だと話が続けられそうにないな......
よ、よし、ここはとりあえず慰めてみるとするか。
「えっとさ、俺は芦屋さんは合法ロリなんかじゃないと思うよ! なんか、こう、それとなく大人な雰囲気があると思う!」
あ、アカン。全然フォローできてねぇ。
「ん? 岩崎さん? それ、本当ですか......?」
あれ? 芦屋さんがちょっとニヤけてる...? これってもしかしてゴリ押せば機嫌直るやつだったりするのか......?
「ほ、本当だよ! 芦屋さんは魅力的で大人な女性だよ!」
「! ふ、ふーん......!」
「萌え袖の色気ハンパない! 肌も綺麗で超キュート!!」
やっべぇ、自分でも何言ってるのか全然分かんねぇな。
「え、えへへ......急になんなんですか、岩崎さんったら! もう! 私を褒めても何も出ませんよ!」
と、言いつつ『このこのー!』と俺の肩をポカポカ叩く芦屋さん。
おし、なんか知らんけど機嫌が直ったみたいだな。芦屋さんがチョロくて助かったわ。
つーわけで尋問再開。
「あのさ、芦屋さん。そ、その......なんで君は俺の脚の上で丸まって寝てたの? 俺たち初対面だよね? もしかして芦屋さんなりのスキンシップだったりするのかな?」
「あー、私が岩崎さんに密着してた理由ですか? まあ、スキンシップっていうのは当たらずとも遠からずですね。というわけで......えいっ!!」
そう言うと、なぜか隣に居た芦屋さんは勢いよく俺に抱きついてきた。
--ワケが分からないかもしれないのでもう1度繰り返す。なぜか21歳(童貞)が突然合法ロリに抱きつかれた。
「え、ちょ、芦屋さん!? いきなりどうしたの!? てか、マジでくっ付き過ぎじゃない!?」
いや、ぶっちゃけ美少女と密着できるのは嬉しいことこの上ない。この上ないんだが......この構図だと俺がロリっ子を襲ってる犯罪者みたいになっちまう! こんなの、誰かに見られたら終わりじゃねぇか......!
「えへへー! もっとギュッとしちゃいます!」
「へ!? ちょっと芦屋さん!? 俺たちって初対面だよね!? なんでこんなことしちゃうの!? そろそろ離れた方が良いと思うんだけど!?」
「嫌です! もう離れないです!!」
そう言うと、瞳をウルウルさせながら上目遣いで俺を見つめてきた芦屋さん。さらに彼女は俺を抱きしめている腕の力をギュッと強めてきたため、俺は離れようにも離れられない......!
「ねぇ、ちょっと!? なんでそこまでして俺に引っ付くの!? 俺、全然芦屋さんのこと知らないんだけど!?」
「知らなくてもいいです! これから私のことを知ってもらえればいいです! だって......だって......!」
そこまで言うと、彼女はその幼くも整った顔を俺の目の前まで近づけ......最後にこう言い放った。
「私はアナタに"好き"って言わせたいんですからっ!!!」
「............ほえっ!?」
岩崎大河、21歳。初対面の同級生ロリっ子から愛を要求されました。
なお、数時間後。同日の夜に俺は別の女の子の胸を鷲掴みにすることになるわけだが、そんな展開になるなんて予想を、この時ができるはずもなかった。
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