第22話 それぞれの思惑 2

 私は自分の息子の事がよく分からない。 あの子は元々固有能力を持っていなかった、皇族の子供にしては珍しい事だが前例がない事もない。


 だが八歳のある日突如として固有能力に目覚めたのだ。 それからあの子は何処か変わってしまったように思える。


 その日以来家族間の仲は悪くなった。 会話をすれば喧嘩になり、息子は城の図書室に入り浸り、成人した後は諸外国にふらふら歩き回るようになった。


 そんな我が愚息は王国に対して勝手に宣戦布告して久しぶりに帰って来た。


 私は当然戦争なんてしたくないので叱った、だがそんな事にはならないの一点張りだ。


 あやつは自分のしでかした事が分かってないのか、私が頭を悩ましている時、王国から会談の申し出があったためすぐに使者を出し会談をとりおこなう事を決めた。


 王国には協力者がいるから交渉は上手く進むだろう。 先代達が国を安定させ、戦争を停戦に持ち込んでくれたため私は外政に力を注ぐことが出来た。


  何としてでも私の代で神玉の歴史を終わらせなくては、アレが存在する限り災厄が起き続けるのだから。 その為には何としてでも王国の王を説得し神玉を破壊しなくてはならない。


 もうあの様な出来事は起こってほしくない、十八年前にも起きたスタンピードの様な悲劇は。


 スタンピード。あれは『不滅』が現れる前に毎回起こる、予兆みたいなものだ。


 恐らくは王国の王族に『不滅』をもった者が生まれたのだろう。 私は少し安堵してしまった。 自分の子供に『不滅』が現れなくてよかったと。 『不滅』は到底、我々の手に負えるようなものではないのだから。


 スタンピードで大量の魔物が一斉に攻めて来た、民は混乱し、沢山の兵士や民が死んでいった。


  魔物の群れは帝国と王国だけを集中して襲って来ていた。


 諸外国にも魔物が押し寄せ被害をもたらしたそうだが、帝国と王国に比べればマシといえるがそれでも相当数の被害を受けてしまったようだ。


 スタンピードが過ぎ、国を建て直した後私は様々な資料を漁った。


 そこで先代が残した書物を見つけた。私の推測が正しければ『不滅』と神玉は間違いなく繋がっている筈だ。


 恐らくは王家が二つに分かれた日は『不滅』が初めて現れた日であり、神玉で何かを見た日なのだろう。


 その何かは残念ながら、我が家の歴史書には載っていなかったが王国にはあるかもしれない。


 『不滅』をもった者が完全に暴走する前に王国と協力して神玉の謎を解かなくては、アイツから聞いた情報だと一度暴走して封印に成功したようだがあれから随分時が経っている。残された時間は僅かだろう…。


 私は息子……子供達の事を愛している、だからこそ息子の代には遺恨を残したくない。


 必ず一族の因果を断ち切ってみせる。


  ◇◆◇◆◇


 僕が長年思い浮かべていた計画が遂に実行に移される日が来た。


 ここまで根回しするのは随分大変だった。 もう父上が会談を成功させようが失敗に終わろうが僕には関係ない。


 結末は決まっているのだから。


 諸国にも事を起こしたら傍観するように言ってある、僕が少し王国の秘密を教え計画の一部を話したら喜んで味方になってくれた。


 王国も何とか味方に引き込もうと奔走してたようだが公国以外には見限られちゃたようだね。それくらい王国が抱えている爆弾は大きいのさ。 下手をすると世界が滅びかねない、いやもう何度か滅びているか……今回も僕はそれを見越して動いたのだから。


「君達にも王国には恩義があるだろうから計画には何も手伝わなくていいただ傍観しているだけでいいんだ、後は僕が何とかするから」


 こういえば、少しばかり王国側だった国も受け入れてくれた。 中にはしぶしぶといった国もあったが。


 僕が皇帝ではないから信用しない者もいるだろうし、僕自身の事に疑問を覚えている者もいるだろう。


 なにせ僕は第一皇子に成り上がったんだからね。 バレないようにやるのは協力者がいても大変だったよ。 だからこそ利用できる者は何でも利用する。


 僕は自分の欲しいものを手に入れ、諸外国は脅威が取り払われる。 計画に成功したらスタンピードが二度と起こらなくなると話したらどの国でも拒むものはいなかった。

 

  計画を完全に成功させるには……と青年は【エルバス皇帝暗殺計画書】と書かれた資料を手に取る。


「父上にはそろそろ退場してもらわないとね」

 


 

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