第24話 激突 バトルメタル
メロディックスピードメタル競馬場の悪夢
それは数ヶ月前の悪夢…
あの時の俺達はそれはそれは興奮していた。あのメロディックスピード競馬場で。最終コーナーでエメラルドソードが駆け上がって来た時、興奮のあまり、少し放尿してしまっていた。もう少しで手が届いたんだ…ケ○パーもア○バーニーズもゴ○パーもカスタムベースもドラムセットも…
しかし、その大き過ぎた希望は無残にも打ち砕かれ絶望の淵に叩き落とされた…
忘れもしない、ホームストレッチの悪夢、奴はとんでもない脚で駆け上がって来たのだ…
正に今、その悪夢の元凶"バトルメタル"我らキルエムオールの目の前に仁王立ちで君臨している。そして思いがけず声を張り上げた。
「お前!!バトルメタル!!」
「誰だよ、お前ら?」
「忘れたなんて言わせねぇぞ!コラ!」
「こちとらてめぇのせいでスカンピンになっちまったんだぞ!」
「マグロ爺ヲ返セ!」
「生きてるだろ」
俺達は当時の恨みを今ぶちまけているがバトルメタルは全く何の事か分かっていないようだ(そりゃそうだ)
「何の事かサッパリだが、察するにお前ら俺が勝った日に大損したかなんかだろ。言っておくが俺はやる事をやっただけだ。勝手にお前らが他にかけて負けただけの話。下らない嫌悪を向けるのは止めろ」
「ぐ!ぐうの音も出ない!」
俺達とバトルメタルがバチバチと火花を散らすのをヤギ沼さんは見ていたが割って話に入る。
「お前達、面識があるのか。なら話は早い。次の企画の主催者がバトルメタルなんだよ」
「な、なにー!」
「ヤギ沼さんコイツらなんなんですか?」
「バンドに空きが出たろ?だからコイツらを代打で出したい」
「はぁ?…なんてバンドなんですか?」
「耳かっぽじって聞け!俺達はキルエムオールだ!」
「聞いた事もない」
「ナニヲー!!」
「まぁ、落ち着け。この前話したろ?観客にボコボコにされながら歌うバンドの事?」
「ああ…なんか魚介メタルだか何だかの」
「魚介だぁ!?解体すんぞ!!」
再び火花を散らしバトルメタルを睨みつける。かたやバトルメタルは冷めた目でこちらを見下ろしている。何とも殴りたくなる面だ。
「おい!バトルメタル!お前のバンドはなんてんだ?!」
「ふん、お前らに教える必要なんてない」
「ムキーー!!!」
「それくらいは教えてやれ」
「…ヤギ沼さんのそう言うならしょうがない」
そう言うとバトルメタルは半歩下がった途端に瞬時に背筋を伸ばし左後ろ足を左斜め前に置き、右前足を胸元、左前足を斜め下のポーズを構え声を高らかに発した。
「俺はメロディックスピードメタル"セイントホース"のギタリスト"バトルメタル"だ!鷹の様に飛び、王の為、山の為、闇の寺院を打ち砕き、黒の羊を引き連れ守護神伝を世界に語り続ける北欧の貴族ヴァイキングだ!!」
いきなりの事に呆然とする我らキルエムオール。
「え?なんて?」
「二度は言わん」
一旦熱が引いた所でヤギ沼さんが再び割って入る。
「まぁ、そんな所だ。ライブは3週間後。詳細は追って連絡しよう」
ヤギ沼さんが言い終えた瞬間、バトルメタルは再びこちらの蔑むような表情でこちらを見下ろし言い捨てた。
「不服だが出演を認めてやろう。だが、俺達"セイントホース"、そして俺の超光速のギターがお前らの自慢の長い鼻を叩き折り二度とバンドしたくないくらいの傷を与えてやろう」
「てめぇこそ首洗って待っとけや!」
「あはは、今度のライブも楽しい事になりそうだなぁ」
最後の火花が散りいがみ合う中、ニコニコとこの状況を見ているカエル原君はとても呑気であった。
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