夢少女リズと不条理な日常(旧題:夢の彼女と雑草をめぐる物語)
ゴンkuwa
1.彼女の白い肌
「ヨーゼフ」
少女は甘い桃色の唇で、俺の名を紡いだ。
薄明かりの中自分は、白い肌を晒した彼女に覆い被さっていた。
「…!」
脳内に、とっくに覚悟を決めている未来の自分と、混乱している現在の自分が混同している。彼女は見知らぬ少女だったが、ずっと前から知っていたような気もした。
彼女の巻き髪が、シーツの上を泳ぐように広がっている。上気した頬と潤んだ大きな瞳が、うさぎを思わせて愛らしい。
自然、目線が下に落ちていく。そこには少女の柔らかな双丘が、その頂が、触れられることを予感して、羞恥に震えていた。
だが、彼女の体には幾つもの傷痕があった。まるで切断された跡ような、違和感のある傷痕だった。
首にも、肩にも、おそらく脚にも、それらは彼女の肌を巡っていた。
俺はどうしたら良いかわからず、少女を組み敷いたまま動けずにいた。その時、
「うれしい…」
彼女は泣きそうな笑顔でそう呟いた。まるでこのまま消えてしまいそうな、儚い微笑みだった。
すると、靄が眼前へと広がり、彼女の姿を次第に薄れさせていった。白い真綿で包まれていくように、少女の肌の温もりが遠のいていく。
「夢」の終わりを告げるそれは、ゆっくりとこの目を覆っていった。
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