第13話 昔話 伝説の剣士のはじまり
あるところに1人の少年がいました。
少年は小さな頃に父親を魔物によって亡くし、母親と2人で暮らしていました。
少年「俺は強くなりたい。強くなって皆を守るんだ!」
そう言って、少年は毎日木の剣を振っていました。
あるとき、少年が住む村に旅の剣士が来ました。少年は喜び、旅の剣士に会いに行きます。
少年「俺を弟子にしてください!皆を守れるくらい強くなりたいんです!」
剣士「おれぁ、弟子は取らねえんだ。他を当たりな」
旅の剣士には断られましたが、少年は諦めずに頼み込みます。
剣士「分かった、分かったって。小鬼を1人で狩れたら弟子にしてやるよ」
旅の剣士は少年がこれで諦めるだろうと思っていましたが、少年は走って家に帰ると父親の形見の剣を持って森へ行ってしまいました。
夕方になり、家に帰ってこない少年を心配した母親が、村の皆に少年の行方を聞いて回っています。
母親「あの子がどこに行ったから知りませんか!?家に帰って来ないんです!!」
母親に話を聞いた旅の剣士は驚きました。まさか本当に小鬼を狩りに行くとは思ってもみなかったのです。
剣士「すまねえ、本当に行くとは思わなかったんだ。おれが連れて帰る」
母親「お願いします!どうか。私にはあの子しかいないんです!」
旅の剣士は急いで森に向かいました。暗くなっていく森の中を全力で駆け抜けます。
すると、小鬼の叫び声と戦う音が聞こえてきました。旅の剣士はそちらに急ぎます。
旅の剣士が森の開けた場所に出ると、少年と小鬼2匹が戦っていました。
小鬼の視線が旅の剣士に向いた隙を見逃さず、少年が片方の小鬼に切りかかりました。
小鬼を倒すことができましたが、もう1匹の小鬼が少年に襲い掛かります。
剣士「危ねえ!」
その小鬼の攻撃に旅の剣士が間に合いました。小鬼は旅の剣士の一撃で倒されます。他に小鬼はいないようでした。
疲れて地面に膝を付いた少年に旅の剣士が近寄って、少年の頭に思いっきり拳骨を落としました。
剣士「今のは、お前の母親と村の皆に心配をかけた分だ。小鬼を1匹倒したから、約束通り弟子にはしてやる。だが、こんなことは二度とするなよ」
少年「はい、分かりました。よろしくお願いします!」
少年は頭の痛みと後から襲ってきた戦いの恐怖で泣きながら、旅の剣士に答えました。
家に帰ると、少年は母親に泣きながら抱きしめられ、抱きしめられた倍の時間叱られました。
次の日から、旅の剣士による少年の修行が始まりました。修行は厳しく痛いものでしたが、少年は皆を守るために強くなる一心で何度も立ち上がりました。
数年が立つと、少年は青年と呼べるように成長しました。初めて戦った小鬼も今では相手にならず、村の周りの森は青年が危ない魔物を倒して平和になりました。
ある日、青年は師匠である旅の剣士から自分と試合をするように言われました。
2人の試合は激しく、村人達には2人の動きが見えない程でした。
その激しい試合に勝ったのは、弟子である青年でした。
剣士「参った。おれの負けだ。もうお前に教えることはねえよ。後は好きにしな」
青年「今までありがとうございました。この村は平和になりましたが、村の外では魔物に苦しむ人がたくさんいます。オレはその人達を助けに行きます。師匠はこの村をお願いします」
青年は母親と旅の剣士に見送られ、村を出ました。
困っている人がいれば手を貸し、青年は旅を続けました。
西で大蛇が暴れれば倒しに行き、東で大鬼が悪さをすれば倒しました。青年の剣の腕は村にいた頃より強く、鋭くなりました。
あるとき、青年は悪い龍の噂を耳にします。
その悪い龍は村を脅して、生贄となった村人を食べているそうです。青年は怒ってすぐに村に向かいました。
村ではちょうど、その年の生贄が出されるところでした。生贄の少女は美しく飾り立てられています。
青年「生贄なんて出さなくてもいい。俺が龍を倒す」
少女「いいえ、人の身で龍を倒すのは無理です。私がこの身を差し出せば、しばらくこの村は平和なのです」
青年「こんな状態を平和だなんて言わない!君は俺が絶対に助ける!」
青年は生贄の少女の制止を振り切り、龍の元へ向かいました。
青年「龍よ、悪龍よ!人々を傷つけるお前を倒す!」
悪龍「矮小なる人の分際でなにを言う。儂の血肉になれることを光栄に思うべきであろう」
青年「食われることが光栄な訳があるものか!」
青年が龍に切りかかると、硬い鱗に一筋の傷が付きました。
悪龍「ほお。儂の体に傷を付けるとは面白い。少し遊んでやろう」
青年と龍は丸1日戦い続けました。龍は傷を負っていますが浅く、青年はボロボロになっています。
青年「はああああー!!」
青年が龍の首を狙って剣を振ります。しかし。
ガギンっという音と共に剣が折れてしまいました。
それでも青年は諦めません。折れた剣を手に龍をにらみます。
悪龍「人の身で良くやった。なかなか良い暇つぶしであった。さらばだ」
龍の爪が青年に襲い掛かります。
青年は折れた剣で向かい打ちました。ボロボロの折れた剣では攻撃を防ぐことはできないはずでした。
しかしながら、その斬撃は龍の腕をはじき返すだけではなく、龍の鱗を割り、その奥の身を切ることができたのです。
青年が剣を見てみると、折れたはずの剣には光輝く刃がありました。その刃からは精霊の気配を感じます。
精霊「我は精霊、斬の精霊。其方の龍鱗を裂くほどの剣戟は、世界に刻まれ、我は新たに生を得た。我が加護を其方に与えん」
青年により、世界に新たに“斬”の概念が刻まれ、新しい精霊が誕生したのです。
悪龍「グアアアー、なんだこれは!?」
龍は生まれて初めて受けた深い傷に混乱し、青年を見ていません。
青年は斬精霊の剣を手に、残った力を全て振り絞り、龍を切りつけました。
青年「うおおおおおお!!」
青年の一撃は龍の首を切り裂くことができました。
悪龍「バカな……こんな、ことが……」
ドサリと龍の体が地に落ち、もう二度と動くことはありませんでした。青年は悪龍に勝つことができたのです。
その後、青年は村に戻り、悪龍を倒したことを村人達に伝えます。村人達は喜び、青年と精霊に感謝を捧げる祭を開きました。
平和になった村で、誰もが笑いながら疲れて眠るまで踊りました。
祭が終わると、生贄になるはずだった少女が青年に話し掛けました。
少女「偉大な剣士様、どうかこの村をこれからも守ってくださいませんか」
青年「世界には、まだ魔物に怯えている人がたくさんいるんだ。オレはこの力でもっと多くの人を救いたい。だからこの村に留まる訳にはいかない」
少女「分かりました。では、これを。お守りです。剣士様がご無事であることをいつでも祈っています」
青年「ありがとう。いつかまた、この村にも顔を出すよ。じゃあ元気で」
そうして青年は少女と村人達に見送られ、次の旅へ向かうのでした。終わり。
「よーし。終わり。おやつ作るぞー」
「はーい」
「つづきー!」
「もっとよんでー!」
「おやつー!」
「はいはい、続きはまた今度な」
疲れた。ちゃんと読まないと子供達からクレームが来るからな。
リックとイルシア、年長組も料理道具を持って中庭に出てきた。さっさと作ろう。
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