第15話 魚
【How to check?(どうやって確めんの?)】
ハルカは困り顔で、マイクに尋ねた。ハの字になった眉は「ハァ?」と言っている様だ。
マイクはそのまま受け取った電子辞書にすぐに返事を書いた。
【今考えています】
とりあえず、自分の仮説はここまで。流石にその先はまだ考え付かない。
【あなたの荷物を私に見せてください】
「あ、なるほど。
ハルカは直ぐにリュックの中身を取り出し、床に並べた。警察が証拠物件を並べるような分かりやすいレイアウトになった。
リュック、財布、スマホ、電子辞書、筆記用具(筆箱)、4冊の教科書とノート、化粧品ポーチ、鏡、ハンカチとティッシュ、水筒と空の弁当箱……
一方マイクは
部屋はアイテム無し。
さて、これでどうするか……
マイクは部屋を歩き回り考える。
まず、ロープのようなものは2人の衣服を使えば作れない事はない。ハルカの筆箱にはハサミがあった。
運動神経と身体が大きい自分がなんとか登って、ロープを下ろしてハルカを引き上げる。
とすれば、どうやって俺が上まで登るか……
壁に穴を開けて、クライミングの要領で……いや、地道過ぎる。それにこのアイテムでどうやって硬い壁に穴を開ける?
「上を登る方法ねぇ……」
ハルカも思考モードに入る。文殊の知恵にはあと1人足りないが、それでもこの部屋の謎を解いた成果がある。
ハシゴ?ロープ?でも今ある持ち物じゃとてもじゃないが作れない。
「忍者的な感じで行っちゃう?」
気球の様なもので浮く、吸盤で登る。ファンタジー過ぎる気がする。現実的じゃない。
「とすれば、まだこの部屋に
この部屋はもう調べつくした。とすれば違う部屋。
ハルカはマイクがいた部屋に向かう。
「こっちは天井低いんだ」
同様に一面『白い部屋』だが、天井との距離は分かりやすかった。マイクであれば、もしかしたら届くかもしれない。
「スイッチとか無いかな」
ハルカは天井を熟視する。もし怪しいところがあれば、マイクなら手が届く……
「ハァ……ちょっと疲れた」
しばらく頑張ってみたが、ずっと見上げていたので首が痛くなった。何も描かれていない白いキャンバスを観察するのは精神的にも参った。なので少し休憩。
気晴らしに水槽の部屋に向かう。
「いいよな……魚は自由で」
魚たちは360度自由に泳ぐ。彼等が向かう先は決まっていないが、行く先は自由だ。
一方ここでは、人間は限られた自由しか与えられなかった。向かう先は自由だが、行く先は制限されている。
まるで水族館にいる様な景色だが、立場は真逆。魚に閉じ込められた人間。海の人間は無力だ。
「待って、置いてかないで……」
1匹の魚がハルカの頭上を通り過ぎ、海面へ向かって行く。やがてその姿は見えなくなった。
まさに空高く飛び去る様に……
あっ……
そうだ。ワタシも飛ぼう。
ハルカはマイクの方に向かう。
「マイク、ウォーター!ウォーター!」
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