後輩について


 部活の先輩と後輩。

 彼女との関係は、そんなものです。

 文芸部の部長と副部長なので、部活のことについて話すことはよくありましたが、部活の時間以外では、話すことも会うこともなく。

 それでもたまに、雑談することはありました。


「先輩は、異世界に転生したいですか? それとも召喚されたいですか?」


 ここ数年、異世界って単語をよく目にしたり耳にしたりしますが、彼女もそういうの好きなのかなって、最初は思いました。

 私個人としましては、本格推理小説が好きでそればかりしか読まないので、訊かれたことに関してあんまりぴんと来ず、彼女の簡単な説明を聞いた上で、私は……って、私の返答はどうでもいいですね。

 私が一応答えたら、彼女は、どっちもごめんだって言いました。


「私、異世界より、物語がいいんです!」


 物語の世界に、登場人物の誰かとして、自分として、メアリー・スー的な誰かとして、入り込みたいとか言ってました。

 その会話をした少し前に、好きな物語の好きなキャラが死んじゃったみたいで、それがすごく悔しかったんですって。


「だからですね、あの人を助ける為に、物語を改変したいんですよ!」


 好きな人と幸せになる為の物語改善。

 あるいは、

 好きな人を死なせた奴らへの復讐の為の物語改悪。


「あの人を殺した奴らが息してるのが気に食わない。でも、そんなことしてもあの人が喜ぶわけないし、そもそも親しい間柄にならないと意味ないよなっていうか」


 少し過激な所があったかもしれません。

 思い込みが激しい所もあったかも。

 暴走癖、というか……。

 あんまり友達にはなりたくないタイプでして、私達本当にそこまで親しくなかったんですよ。


 だから、自殺するような心当たりもなく、

 かといって自殺の兆候は見た感じなく。


 事故、と警察が判断したんなら、事故なんじゃないですか。

 友達でない、単なる部活の先輩としては、これ以上のことなんて言えないです。

 ごめんなさい。

 ……ただ、もしアレが、その、事故でないんだとしたら、彼女の言ってた悔しいって、それくらいのことをしてでもなんとかしたかったことなんだな、とは思いますが。

 親御さんには、聞かせられませんね。

 忘れてください。

 では、部活があるのでこの辺で。

 他にも部員はいますし、校外の出来事ですので、部活はあります。

 まぁ、副部長でしたので、彼女を偲ぶ意味で、彼女の書いた話や、彼女の好きな本を読むことになってますが。

 ……読んだことがないので、比較はできませんが。


 物語は、改変されているんですかね?

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