第41話 海賊番長のお宝はいずこ!
「大丈夫、復帰の件は顧問の林原先生を説得すりゃなんとかなんだろ。それに部員数については秘策がある」
「……秘策ですか?」
なんだか悪い予感がする。
「ああ、先輩はすでに3ヶ月の停学食らってる。もうあとちょっと欠席すれば留年するはずだ。留年して部活に打ち込んでもらえばメデタシメデタシ、というわけさ」
やっぱり、予感的中だ。
部長の秘策がちゃんとした秘策だったことは、今のいままで一度もない。
「んなアホな作戦がありますか! だいたい、荒馬先輩はなんて言ってるんです? それでOKしてるんですか?」
「さあ? 先輩が停学になってから一切連絡とってないからな」
「ムチャクチャじゃないですか! 一番大事な本人の意志を確認してないなんて!もし本人にその気がないなら卓球部に復帰するも何もないでしょう!」
すると部長は、オレが何を言ってるのかわからないと言わんばかりに不思議そうに首をかしげた。
「何言ってるんだ、一番大事なのは先輩がどうしたいかじゃない。俺がどうしたいかだろ」
「なんですか、そのトンデモ理論は?」
「トンデモ理論なんかじゃねえ。我が卓球部の鉄の掟だ。これからは三階堂も木場も俺の意志を何より尊重して行動するように」
ダメだ、この人。
「とりあえず、これから俺と木場で林原先生を説得しに行くから、三階堂は部室で待ってろ」
「待ってろって、何をです?」
「荒馬元部長が部室にやってくるはずだ。そしたら、俺たちが戻るまで帰らないように引き止めておいてくれ」
「来ますかねえ。停学中に一度も連絡してこないような後輩のところに」
「絶対に来る。実はな、さっき話したとおりクレイジーホースはウエストピース海賊団に攻め込む前に大事な宝物をこの部室に残していったんだ。ヤツは絶対にそれを取り返しに来る」
クレイジーホースってのは、荒馬先輩。
ウエストピース海賊団ってのは、西和工業高校だったよな。
「な、なんなんですか、その大事なものって? 部室のどこにあるんです?」
またまたイヤな予感がする。学校一の不良が他校に殴りこむ前に隠すものっていったいなんだ? もしかして、クスリとか、銃とか?
「まあ、それは内緒だ」
「なんでですか?」
「そのお宝と引き換えにクレイジーホースを再入部させるんだから、簡単に渡しちゃ困るだろ。もしおまえが宝のことを知らなきゃ、ボコられたって答えようがないからな」
「勘弁して下さいよ。じゃあ、オレの役目ってめちゃくちゃ危険じゃないですか」
「大丈夫、相手はまあ、野生の熊みたいなモンだ。相手の目をしっかり見て、隙を見せなければいきなり襲ってきたりはしないさ。大丈夫、大丈夫」
そう言うと、さも楽しそうに部長はオレの背中をバシンと叩いた。
「……そういうのは大丈夫とは言わないですよ」
* * *
「ええと、荒馬先輩……」
それから30分後。
オレは、クレイジーホースこと荒馬劉生元部長と部室で二人っきりになっていた。元部長は小山のようなという表現がピッタリの大男で、どうみても空手かアメフト部、絶対に卓球部員には見えない。。
いつも三人で広々使っている室内が圧迫感で息苦しいくらいだった。
「お、お茶どうぞ」
とりあえず隙を見せないように視線を合わせたままお茶を出す。
すると、先輩は竹内力也バリのいかつい顔でギロリと睨みつけてきた。
「新入部員か?」
しどろもどろになって答えた。
「は、はい、そうです」
「……そうか、良かったな」
えっ?
良かったって、何が?
首を傾げてると、元部長はこう切り出してきた。
「単刀直入に言おう。ブツを、返してもらいたい」
「……ハハハ、ブツですか?」
ブツってのは羽根園部長が言ってたお宝のことだろう。実は、部長と木場先輩がいなくなってから部室を隅から隅まで探したが、それらしいものはみつからなかった。
口ごもっていると、クレイジーホースはドスンと机に拳を打ちつけて立ち上がった。
「ひぃっ!」
「羽根園か木場から聞いてないのか!? 停学の前に、ここに残していったものだ。アレは、俺に取っては命の次に大事なものなんだ」
そう言いながら、こっちににじり寄ってくる。オレは部長の教えに従い、とにかく背中を見せないよう愛想笑いを浮かべて後ずさりした。
「命の次に……ですか。そんなもの、この部屋で見たことないなあ……もしかして、部長がとっくに売り払ってたりして」
そう言うや否や、荒馬元部長の太い腕がオレの首を掴んだ。
「それがホントなら、俺は自分が何するかわからんぞ!」
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