休日
泥のような
昨夜、予定よりも早くノルマ分のエピソードを書き上げた私は、就寝時間も繰り上げて早めにベッドに入っていた。少しでも長く
二度寝しようとしばらく粘ってはみたものの、これほど目が覚めてしまっては無理だとようやく観念した私は渋々ベッドから這い出し、とりあえずコーヒーを淹れるためにマグカップを持ってキッチンへと向かった。
はじめは上の階で日曜大工でもしているのかとも思ったのだが、廊下へ出ても変わらず工具の音が聴こえている。もしかしたら隣の家で内装工事でもやっているのかもしれない。
私の住まうこのシェアハウスは少しばかり構造が変わっており、道路に面した玄関を正面に見て右隣の民家と密接した形で建っている。この密接している側が地下階の廊下の壁というわけだ。つまり、家屋の片側の壁を隣家と共有していることになる。
反対の左側には隣家との
この裏口からのみ地下階へと行くことが可能で、階段を下りれば左手にキッチン、右手には各部屋へと続く廊下が伸びている。
裏口の鍵しか渡されていない私たち地下階の住人はともかく、オーナーがなぜ自分専用である正面の玄関を使わないのかは不明だ。
コーヒーを片手に自室へと戻ってきた私は、常に電源を入れっぱなしにしてあるパソコンのキーボードを叩いてスリープ状態を解除し、小説の執筆に入る前に登録してある複数のサイトをまわって自作のPV数のチェックをすることからはじめた。
私のようなまだ作品数も少なく、ましてやSNSを使っての宣伝も積極的にしていない素人作家の小説の閲覧数など、昨日の今日で大きく変動するわけもないのだが気になるものは仕方がない。
脳味噌をフル回転させて定期的に更新しているミステリー・ホラー作品はほとんど読まれず、並行して執筆中の
この事実から
多くの人々に読まれる読まれないは別として、作者の私がまずやるべきことは一にも二にも作品を完成させることである。途中で執筆を投げ出すことほど今いる読者に対する不義理もあるまい。
いつまでもPV数の考察に時間を費やすわけにもいかないので、私はいつも執筆に使っている小説サイトを同時に二つ開き、一方を前回のエピソードのプレビュー用に固定し、もう一方を編集画面にして両手を動かしはじめた。
二時間ほど経った頃だろうか。いつの間にやら工具の音が止んでいる。あまり大きな音ではなかったので気にしていなかったというのが正直なところだ。
工具の機械音といってもハンマーで叩いたりドリルで穴を開けるような激しいものではなく、聴こえていたのは主に電動ノコギリと思われるモーター音らしきものだった。昨夜のベース音に比べたら
集中力が途切れたせいか、急に目の疲れと腰の痛みを感じた私は執筆を中断し、休憩がてらに少し早めの昼食をとろうと席を立った。
あと数行を書き足して一話分のエピソードを完成させたら、出勤の直前まで数時間だけ仮眠をとることにしよう。それで寝不足分が補えるはずだ。
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