死にたがりの屋上

屋上に上がる最後の一段を踏みしめるように登る。第一特別棟の屋上の入口の前は、掃除当番がサボってもバレないからといつも掃除をしないせいか、ホコリがうっすら積もっていた。

放課後の校舎というのは昼休みなどに比べれば静かなものだが、部活動などで残っている生徒たちの声や足音がする。でも、第一特別棟には出入りする生徒が少ない為それすらなく、外の車の音や野球部員の掛け声が遠くの方で少しするくらいだ。

いつもなら閂が動かないように南京錠で鍵がかけられているのだが、今日はその鍵が外され、閂は横にずらされていた。


誰か屋上にいるんだ。


私は音がしないようにそっと鉄の扉を開く。

足元に細く光の筋が伸びる。扉の隙間から見えたのは1人の女子生徒だった。

その女子生徒がフェンスに手をかけて、登り始めた

私はハッとした。この先に女子生徒がするであろう事が予想出来たからだ。そしてそれは紛れもなく今から私がしようとしていたことだ。


「ちょっと!」


気づけば私は屋上に飛び出していて、大声でその女子生徒に話しかけていた。


「邪魔、しないでくれる?あなたには関係ないわ。それに、」


女子生徒は瞳私の心の奥底を見抜くように、冷たくい瞳でじっと見つめる。


「あなたも今からするのでしょ」


女子生徒は私に手を伸ばして、口元だけで笑った。

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