10 始まりの朝
昨晩が騒がしかったせいだろうか。
今朝はひどく静かに感じた。
物寂しいというよりも、どこかホッとしたような。
あんな美女姉妹とイチャイチャ過ごせたら、それはもう男として幸せなんだけど。
やっぱり、少し疲れちゃう。
僕がウブな童貞くんだからかもしれないけど。
「さてと……」
今日は休日だ。
少し遅めに起きた今朝は、適当にハムとチーズを乗せたトーストを作ろう。
サラダも添えて。飲み物は甘くした紅茶が良いかな。
僕はキッチンに立ち、ゆっくりと朝食の支度を始めようとした。
すると、ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴る。
誰だろう?
まあ、もう9時も回っているから、こんな早くになんて文句は言えないけど。
僕は少し気だるく思いながらも、玄関ドアに向かう。
新聞の勧誘とかだったら、適当に笑顔で追い返そう。
「はーい、どちら様で……」
「やっほ~、翔ちゃーん!」
いきなりすごく大きくて柔らかい物に顔を圧迫された。
「むぐっ!?」
「あ~ん、会いたかったわよ~! つい昨日の夜ぶりだけど~!」
僕を半ば窒息させかけながらハイテンションな口調でアホな年上お姉さんは言う。
「ちょっと、お姉ちゃん! 翔太くんが苦しそうでしょうが!」
すると、今度はしっかり者な彼女の声が響く。
「だって~、昨日は本当はお泊りしたかったのにぃ。真由美がダメって言うから」
「仕方ないでしょ。ちゃんとお父さんとお母さんに話さないとだもん」
「まあ、そうだけど……翔ちゃんの童貞を食べ損ねちゃった」
「なっ……もう、お姉ちゃんのバカ!」
朝から元気な姉妹だな~。
◇
「……で、こんな朝から一体どうしたんですか?」
僕はお腹が空いているので、少し不機嫌な声で言ってしまう。
「ていうか、その荷物はなんですか?」
灯里さんと真由美ちゃんはそれぞれ大きな荷物を持っていた。
「分からない?」
「ちょっと分かりたくありません」
「今日から、ここでお世話になるんだよ。姉妹そろって♡」
「ご、ごめんね、翔太くん」
「いや、ちょっと待って……何でそうなるの?」
「だって、あたし達は二人とも翔ちゃんのことが好き。それで、どっちが翔ちゃんをモノに出来るか勝負するって言ったでしょ? だったらいっそのこと、翔ちゃんと一緒に住んじゃおうって決めたの♡」
「何でやねん」
「本当にごめんなさい、翔太くん」
真由美ちゃんは先ほどから頭を下げてくれている。
「いや、真由美ちゃんが謝ることはないよ。どうせ、灯里さんが言い出したことで、真由美ちゃんも巻き込まれたんでしょ?」
「確かに、言い出しっぺはお姉ちゃんだけど……私も、もっと翔太くんと一緒に居たいって思ったの」
真由美ちゃんは切なる瞳で僕を見つめる。
ドキリ、と胸が高鳴った。
「そう、これは姉妹で決めたこと。ちなみに、ちゃんと親からの許可も得たから」
「マジですか? よく許してくれましたね」
「両親とも、翔ちゃんのことを気に入っているからね。まあ、お父さんは『エッチなことはダメだぞ!』って言ったけど、そんなの無理だよね?」
灯里さんは僕に抱き付くと、また豊満な胸を押し付けて来る。
「このおっぱいの誘惑に君は耐えられるかな~?」
「うぅ……」
僕はつい言葉を詰まらせてしまう。
「お姉ちゃん、ダメだよ」
すると、真由美ちゃんが言う。
「翔太くん、朝ごはんまだでしょ? 来る途中、コンビニでサンドイッチを買ったの。あと野菜ジュースも。良かったら、食べて?」
「真由美ちゃん……ありがとう」
僕は素直にありがたく思い、真由美ちゃんから朝ごはんを恵んでもらった。
「お姉ちゃん、エッチな色仕掛けも良いけど……ちゃんと心も通わせないとだよ?」
「へぇ~? 真由美も言うようになったじゃない」
「だって、せっかく翔太くんと一緒に暮らせるんだもん。だから……私も頑張っちゃう」
真由美ちゃんは少し照れ臭そうに、けれども真っ直ぐ明るい表情で言った。
そんな彼女がやっぱり魅力的だと思う。
「はぁ~、分かった、分かりました。けど、3人でこの部屋はちょっと狭いですよ?」
「平気よ。その方が翔ちゃんとくっつけるもん♡」
むぎゅっ。
「わ、私だって」
ふにゅっ。
「わ、わ~い」
こうして、僕と美人姉妹の同居生活が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます