第266話 ソフィ・シャルミル


◆ソフィ・シャルミル

11歳(本編終了時12歳)

藍色のふわりとした髪に同色の瞳の愛らしい半魔人ハーフの少女。


魔装

呪いカース

※ノイルの《変革者》により創り直された魔装。正式な名称はないが彼女はそう思っていた。

精霊の風ファミリー

役者魂アクターズソウル


属性

【治癒】


精霊の風スピリットウィンド』の最年少メンバーであり、エルシャンが名付け親となった少女。その外見にそぐわず普段は基本的に無表情で無感動に見えるが、実際は思いの外感情豊かであり、子供らしい無邪気さや独特のユーモアを持っている。『精霊の風』のパーティハウスの管理や雑務を進んで努めており、手伝いならともかく、他の者が仕事を先に済ませてしまうと若干テンションが下がる。そんな彼女に与えられた二つ名は『完璧侍女パーフェクトメイド』。


彼女の実母は、悪逆非道の盗賊団として名を馳せていた『自由アンチェイン』に新婚旅行中に襲撃され、伴侶を目の前で惨殺された。そしてその際に彼女を身籠り、その憎悪は全てお腹の子に向けられる事になる。

彼女は実母に名すら与えられず、憎しみの捌け口として、虐待されて育てられる事になった。生かさず殺さずの狂気に満ちた暴力を受け続ける内に、彼女は治癒の力の扱いを本能的に覚える。やがて、元より既に修復不可能な程に心が壊れていた彼女の母親は、最期まで憎しみの言葉を残し自殺。どうすればいいのかわからなかった彼女は、しばらくの間実母の遺体と共に過ごしていたが、通りを歩く親子――その幸福に満ちた関係を目撃し、目を奪われ、自身でも気づかぬ内に愛を求めるようになる。


その後は住んでいた街の領主に保護されたが、そこで更に地獄の様な虐待を受ける事になった。一年ほどの時を領主の屋敷で過ごした彼女は、礼儀作法や言語、様々な知識や技術を叩き込まれると同時に、感情を失っていった。しかし最終的に、自身の身を守るため領主へと叛逆、屋敷を脱する事ができたが、《呪い》をその身に宿す事になる。

《呪い》は彼女の肉体を強化し、不眠不休で動け、痛みを感じない身体を与えたが、その命に期限を設ける歪んだ魔装であった。


領主の屋敷を出た彼女は、エルシャンと出逢いソフィ・シャルミルという名を与えられ、『精霊の風』の一員となる。

当初心を閉ざしていた彼女は、『精霊の風』の温もりに触れる内に、徐々に人間らしい感情を取り戻していった。しかし、《呪い》の問題はエルシャンの力を持ってしても解決の目処が立たず、彼女は皆との別れを覚悟し、最期に自身を救ってくれたエルシャンへの恩に報いる為、彼女とノイルを結びつける為に行動を起す。

この時点の彼女は人間らしさを取り戻してはいたが、初対面のフィオナに辛辣な言葉をぶつけるなど、過去の影響は消えきってはいなかった。

結果的に策は失敗したが、同時に、彼女は何よりも求めていた愛を既に皆に向けられ、己の胸の内に抱いていた事を自覚する。そして、ノイルの《変革者》により《呪い》は解かれ、愛する者達と手を取り合う為の魔装へと昇華した。


これを機に、彼女は完全に過去を振り切り大きく成長。以降は以前よりも明るく、年相応の無邪気さも取り戻し、ユーモアを感じさせる少女となった。しかしその独特な感性により、ノイルを始め周囲を度々困惑させている。

凄絶な過去を過ごして来た故に、彼女の能力は全てにおいて非常に高い水準にあり、その精神も年齢にそぐわず達観しているが、ノイルが守護獣に片腕を奪われ瀕死に陥った際には、酷く取り乱しアリスに止められるなど、成長途中でもある。

とはいえ、やはり彼女の能力は高く、それでいて落ち着きもあるため、周囲からは頼られている。エルシャンが『精霊の風』の中で最も優れた才を持っていると評しているのは、子のように想っている彼女を贔屓目に見ているわけではなく事実であり、及ばずながらもミリスと同様の身体強化に辿り着くなど、その天稟はシアラにすら決して劣らない。

また、エルシャンを贔屓してはいるが、誰とでも分け隔てなく接する事ができ、図太い精神を持っている彼女は、ノイルの周囲の複雑怪奇な人間関係の潤滑油のような存在となっており、テセア同様皆から愛されている。フィオナですら、エルシャンの指示で動いている時以外は彼女に対しては非常に甘い。ノイルも妹のように接すると同時に、彼女の事は頼りにしており、度々共にふざけ合う仲。

そしてあまりエルシャン以外の人に甘えないように見える彼女だが、ノイルに対する独特なユーモアは実のところ彼女なりの愛情表現であり、構ってほしいというサインである。


『アステル』戦以降も変わらず、誰ともしがらみを持たない彼女は、ノイルの身の回りの世話をする際の中立的な監視役として頼りにされていた。そしてミリスと共にマッサージを施す内に、彼女の技術を学び吸収し、更なる成長を遂げる。


エルシャンがノイルと婚姻した際に、正式に二人の養子となり、以降はソフィ・ファルシードアーレンス・シャルミルと名乗るようになった。更に成人すると同時に、かねてより多大なる興味を示していた役者に挑戦。麗しき女性へと大きく成長していた彼女は、その演技力と有名な採掘者ということもあり、女優として人気を博す事になる。仕事は殺到したが、あくまで趣味と考えていた彼女は、自身の演じたいもののみを請け負った。しかしそれでも人気は下がる事はなく、彼女が立つ舞台のチケットはプレミアが付き値段は高騰、そのあまりの人気ぶりに、アリスは面白くなさそうな顔をしていたという。


一躍時の人となった彼女だが、それでも基本的にはエルシャンの傍に居続け、いつまでも『精霊の風』の一員であった。実力的にも綻びさえなければミリスとほぼ互角の域にまで達し、重婚し子供も生まれ、更に複雑化したノイルの人間関係のパワーバランスを進んで取り持った。奇妙な家庭環境に生まれた子供たちの、良きお姉さんで導き役であり、誰からも愛され幸福な人生を送る。

彼女自身は生涯、尊敬する人に、エルシャンとノイルの名を上げたが、子供たちが尊敬する人物の中に、彼女の名は必ず含まれていたという。


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