第125話有翼の乙女の指揮者
「ランバース大佐、これは一体」
俺がウィングメイデンから降りると、小銃一個中隊、魔導銃一個小隊がハッジを囲むように展開している。しかしそれをかき分け、オリエ少将が現れた。
「オリエ少将、彼女は新型飛行戦艦ウィングメイデン。オータム砦攻略の糸口になると思うのですが、どうでしょうか?」
実弾兵器、魔導兵器、彼女はその両方を兼ね備えた戦艦だ。搭乗員数2000のうち1500を陸戦歩兵として配置することもできる。
「いや、航空戦力の強化はありがたい。それで、一体どれだけの人員が必要なんだ?」
「2000名の人材欲しいですね。機関知識、砲戦知識などに詳しい物を500名。あとオペレーター等で必要なので10名。後は陸戦歩兵として見繕って頂けますか?」
「良いが、彼女とはだれだ?」
俺はニヤリと笑い、彼女を呼んだ。
「アグネス、請い」
「はい、私は飛行戦艦ウィングメイデンの人工知能。アグネスと申します。セシア・オリエ少将。宜しくお願いします」
この時のオリエ少将の間抜け面、写真か何かに収めたくてしょうがなかった。まぁ、それはどうでも良くてだ。アグネスが挨拶をするとオリエ少将とは直ぐに打ち解けたようだった。
「それで、アグネス。戦艦ウィングメイデンの艦長は君なのか?」
「いいえ、あくまでも私は運用のサポートをメインとした人工知能です。現在、戦艦ウィングメイデンの艦長に登録されているのは、バロ・ランバース大佐です」
俺は休憩でのんでいたドリンクを吹き出した。艦長になぞなった覚えは無く、また俺自身も軍人ではなく軍属であり、あくまでも大佐待遇というだけだ。
「戦艦の艦長を将官が勤めた例は無く、また階級からランバース大佐が相応しいとして、私が艦長として任命しました」
「待ってくれ!俺は大佐〔待遇〕であって大佐じゃないぞ!軍人でもないのに」
「規定ではランバース大佐。貴方が艦長になることに不備はありません、御安心下さい」
俺は先程のオリエ少将よりも酷い顔をしていただろう。ソルジャーは嫌いと言いつつ、ソルジャーとして活動するのが楽しい。命のやり取りが楽しい。それが戦艦の艦長とは一体どうすれば良いんだよ。
「そう言えば、セリエ様からの指示でランバース大佐。君をあまり前線に行かせるなという物がある。ちょうど良いな、ランバース大佐、現時刻を持って戦艦ウィングメイデンの艦長に任命する」
逃げ場は完璧に失われた。なら、やってやる。指揮官なんて向いてないが、やってやる。
「yessir!」
「では、明日、明朝0400に戦艦ウィングメイデンはオータム砦に向け出撃せよ。人員は2時間で見繕う。我々も同時に出撃するが、時間がかかる。到着まで頼んだぞ」
こうして、不本意ながら俺は戦艦ウィングメイデンの艦長に任命された。
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