第63話幻覚の中で〔マキウス・アンゼリカ〕
「くそっ!完全に見失った。アン、そっちはどうだ?」
「駄目ね、それに嫌な予感がするわ。」
「嫌な予感って、コンパスが使えない以外にあるのかよ。」
来る途中、二人は計器が使えないことをバロから聞き、導力コンパスではなく旧式のコンパスを持って来ていた。しかし、そのコンパスさえも永遠に回り続ける始末だ。
「マッキー、耳を澄まして。」
「解ったよ、、、ん?」
ドシン、、、ドシン、、、ドシン、、、
「アン?これって」
「マッキー、伏せて!」
「なっ!」
ダン!
「い!」
アンに押される形で地面に倒れ込んだ。いったい何が起こったのか、その時は解らなかったけど、、、直ぐに解った。アンが矢を受けて肩から血を流していた。俺を庇ったせいで。
「アン、何やってんだよ。」
「マッキーが世話を焼かせるから、、、だぐ!」
「すっ、直ぐに止血を、」
止血を開始しようとした時に、
「無駄だ、それには神経毒が含まれている。直に毒は全身を周り、五感を麻痺させ安らかな死を与える。マキウス・ルーファウス。俺はお前を狙ったんだがな。」
「バロ!合流できたのか!来てくれ、アン、、が、、おい、今なんて?」
「マキウス・ルーファウス。お前を狙ったと言ったんだ。」
ダン!
「ぐ!」
脇腹に激しい痛みがおこる。確認すると矢のような何かが刺さっていた。
「なん、、、で」
「何でだと思う?お前達が足手まといだからだ。利用価値のない半人前、まったく連れてこない方が良かったな。」
「そんな、そんな理由で!」
「ソルジャーにとって大切なのは任務を完遂することだ。邪魔者は排除しないとな。OK?」
「OK、」
ズドン!
導力ショットガンの引き金を引いてバロの胸に命中させた。
「ぐっ!」
バロは至近距離ショットガンあび腹が肉片となりながら巨木吹き飛んだ。まだ繋がった肉体が巨木に当たるがピクリとも動かない。
「アン!」
「マッキー?」
「アン、大丈夫なの?」
「うん、それよりもアレを!」
「ヒッ!」
恐怖で声がひきつってしまった。肉体が立ち上がり醜悪な姿に変貌している。
「マッキー、これは多分だけど幻覚よ。どうにかして目を覚まさないと。」
「つまり偽物って事ね。まぁ、ショットガンをマトモに受けて生きてる方が、、、」
「いや、導力ショットガンだろ?そんなので俺は殺せないぞ。」
「「?!」」
声のする方を振り向くと、Sランク遊撃士のシュウさんとバロが並んで立っていた。
「ウーン、正直こんなのをカーヴィー師。貴方に見られていたのか?」
「バロ、それはもう良いだろ?二人とも、導力魔法を使え。治療系の導力魔法なら回復するだろ。」
「「解りました。キュリア」」
俺とアンはシュウさんに言われた通り、導力魔法を使った。すると、さっきの肉片や傷が嘘のように消えていった。
「バロ、、、本物なんだよね?」
「なんだ?生憎、俺も幻覚を見せられててな。さっきカーヴィー師に助けられた所だ。疑うのなら後にしろ。」
「まぁ、そう言うことだ。お前達が何を見たか、だいたい予想はつくから改めてだ。コイツ、バロ・ランバースは本物だぞ。」
シュウさんから言われて僕とアンは安堵したと思う。正直、幻覚だから不意討ちで倒せたけど、今のバロを見る限りだととてもじゃないけど倒せる気がしない。殺意じゃなくて、闘志に満ち溢れてるって感じ。
「ソルジャーはすごいんだな。」
「ふん、遊撃士がその程度で騒ぐか?立て、恐らくだが目的地はこの先だ。」
ぶっきらぼうな発言で進んでいくバロの姿を僕達は追いかけた。
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