第472話 春香へのプレゼント





「あのー、そろそろご機嫌なおしていただけませんか?」


恐る恐る僕は先程から機嫌が悪い春香とまゆとゆいちゃんに声をかける。さっきなんか機嫌が悪いまゆにりょうちゃんは歩いて帰れば?って言われて泣きそうだった。


というわけで機嫌の悪い3人とアパートに帰る。いつまで経っても機嫌をなおしてくれないので、仕方ないから奥の手を使うことにした。本当ならみんなが寝ている間に枕元に置いたりしたかったのに……


「春香、まゆ、ゆいちゃん、今から1人ずつ僕の部屋に来てくれないかな?」

「「「え!?」」」


不機嫌だった3人が動揺した表情で叫んだ。僕は3人にお願い。と言うと誰から僕の部屋に来てくれるかの相談を初めてくれた。


結局、じゃんけんで春香が勝ち、春香から僕と一緒に僕の部屋に来てくれる。


「りょ、りょうちゃん…え、えっと…ど、どう…したの。きゅ、急に……」


めちゃくちゃ顔を真っ赤にして春香がもじもじしながら僕に尋ねる。かわいいなぁ。


「春香。さっきはごめんね。春香たちの気持ちをもっと考えるべきだったよね」


そう言いながらベッドに座る春香を背後からそっと抱きしめる。耳元でごめんね。と囁くと顔を真っ赤にして、うん。いいよ。と言ってくれる。優しい。


「春香、これ。春香のために用意したクリスマスプレゼントなんだけど、受け取ってくれないかな?」


そう言って春香へのクリスマスプレゼントが入った箱を春香に渡す。


「え、えっと…あ、ありがと……」


クリスマスプレゼントを大切そうに抱えて春香は本当に嬉しそうな表情で僕にありがとう。と言ってくれる。その言葉を聞けただけで僕は満足だ。


「開けてみてよ」

「え、あ、うん」


春香は大切そうにクリスマスプレゼントを机に置いて丁寧にラッピングを剥がしてクリスマスプレゼントの中身を見る。


「前に春香にあげたやつ、だいぶ古くなってたからさ…大切に使ってもらえて嬉しかったよ。たぶん、春香はどれだけ古くなっても大切に使ってくれるだろうけどさ、そろそろ替え時だと思ったからまた、プレゼントさせてよ」


何年も前に、春香の高校の入学祝いで当時中学生だった僕は必死にお小遣いを貯めて春香に入学祝いで財布をプレゼントした。たしかあの時も今みたいなやり取りをした。春香は僕からのプレゼントを昔から本当に大切にしてくれるから。


大学生になった春香が中学生からもらった安物の財布を大切に使っていてくれて本当に嬉しかった。だけど、いつまでも安物の財布を春香に使わせるわけにはいかないから。ちょっとだけ背伸びをして、結構いい財布を春香にプレゼントする。


春香は嬉しそうにありがとう。と言ってくれる。きっと、この財布もずっと大切に使ってくれるだろう。また、この財布が古くなった時、春香に新しい財布をプレゼントしたい。それまでずっと、春香の側にいて幸せでいたい。





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