第427話 モーニングルーティーン





鬱陶しい。


そう、感じてしまうのは贅沢なことだろう。


朝、1日の始まりを告げる陽射しがカーテンの合間から私と私の最愛の人を照らし始める。鬱陶しい。とは言ったが、最悪の人の素敵な寝顔がはっきりと見られるようになったからプラスマイナス0かな……


いつも、りょうちゃんの隣で寝られる日は、陽射しが嫌いになる。陽射しが上って、朝になると、大学に行ったりバイトに行ったりしてりょうちゃんと少しだけだが、離れ離れになってしまうから。


だから、私は朝、少しだけ早起きして、りょうちゃんの隣にいられる幸せを堪能する。私より大きな身体のりょうちゃんをぎゅっと抱きしめる。りょうちゃんとの距離がさらに縮まるとりょうちゃんから私と同じシャンプーの匂いがしてきてちょっとだけにやついてしまう。


本当に、昔からこのやり取りが大好きだった。幸せだった。りょうちゃんには恥ずかしくて言えないけど、私だけの秘密の時間。


この秘密の時間を昔からしていたせいで私は朝、早起きする習慣が出来ちゃったし、りょうちゃんは誰かが起こさないとちょっと寝坊しちゃうようになっちゃった。だから、りょうちゃんにはちょっと申し訳ないことをしていた。とたまに思うけど、私が責任とって毎朝きちんとりょうちゃんを起こしてあげれば罪はなくなるよね。うん。そういうことにしておこ…と、自分に言い聞かせる。


ていうか、今更だけど…私、どんな格好でりょうちゃんに抱きついて寝てるの?恥ずかしいんだけど……


冷静になると、昨晩、りょうちゃんといちゃいちゃしてたら寝落ちしちゃったから私の服装が下着だけだと気づいて私は慌ててベッドからそっと降りて着替える。


それにしても、昨晩はりょうちゃんに好き勝手された気がする…待って。って言っても待ってくれなかったし、ダメ。って言ってもやめてくれなかったし、昨晩のりょうちゃんはいつもよりいじわるだった。まあ、いちゃいちゃする前に私がりょうちゃんを揶揄ったのが悪いのかな…


それにしても、このままやられっぱなしなのはちょっとだけムカつくから、ちょっとだけ仕返しをすることにした。


私はまだぐっすりと気持ちよさそうに眠るりょうちゃんを再び抱きしめて、そっと顔を近づける。りょうちゃんと唇が合わさっても、りょうちゃんは目を覚ます気配がない。だったら、もう一回…そして、もう一回と何度も何度も繰り返してしまった。りょうちゃんが起きるまで、何度も、私はりょうちゃんの唇を奪った。


「ん?春香…おはよう……」

「りょうちゃん、おはよう。よく寝れた?」

「うん。寝れたよ」


私が、何度も何度も繰り返しキスをしていたことには全く気づいていないのほほんとした様子で欠伸をしながらりょうちゃんは私におはよう。と言ってくれる。


さっき、りょうちゃんが寝ている間の私のモーニングルーティーンを話したが、りょうちゃんと付き合ってから新しくできたモーニングルーティーンがある。


それを求めて、私はりょうちゃんをぎゅっと抱きしめる。するとりょうちゃんは笑顔で私を抱きしめてくれて、私と唇を重ねてくれる。


りょうちゃんと2人きりの時にしかできない、特別な2つのモーニングルーティーン。






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