第271話 帰省終わり





春香とみのり先輩が仲直りをした後は4人でおしゃべりをしたりして過ごし、夕方、僕と春香とまゆはみのり先輩と分かれて春香の実家に向かう。


「3人とも、今、ちょっといい?お父さんがお話があるって言ってるからちょっと来て欲しいの…」


春香の実家に到着してすぐに春香のお母さんにそう言われて僕たちは3人で春香の実家にある和室に向かう。和室で僕たちを待ってくれていた春香のお父さんと向かい合って僕たち3人は座り、春香のお父さんの隣に春香のお母さんが座る。


「お父さん、話って何?」


恐る恐ると言う様子で春香が尋ねる。みのり先輩との一件と同じようなやり取りや、まゆの時みたいなことを恐れているような様子だった。


春香のお父さんは無口で優しい。でも、怒るとめちゃくちゃ怖い。ついでに、酒癖もめちゃくちゃ悪い。春香のお父さんと言われて納得できる性格だ。その、お父さんが珍しくこうやって真剣な雰囲気で話をしようとしていて、僕も緊張しているが、春香の緊張は僕の比じゃないだろう。


「うん。まあ、あれだよ。春香たち3人のことについてだよ。りょう君と春香には言っていなかったけど、随分と前から、りょう君と春香が結婚してくれたら、僕もお母さんも、りょう君のご両親も安心できる。って話をしてたんだ。それで、春香とりょう君がお互いのことを好きそうだと気づいて僕とお母さん、りょう君のご両親で強引に2人をひっつけてしまおう。と計画したんだ。まあ、春香も去年いろいろあったから、りょう君が春香の側にいてくれるなら本当に安心できるし、りょう君になら、春香を渡してもいい。と思ってる」


僕と春香の同居話に関して、春香と付き合うようになってから、お互いの両親はこうなることを想定して同居させていた。と思うようになっていた。その予想が当たっていたことが証明され、春香のお父さんに僕になら春香を渡してもいい。と言ってもらえて、嬉しかった。


「まあ、でも、世の中早々こちらの思い通りにことは運ばないねぇ…」


春香のお父さんはまゆを見ながら呟く。春香のお父さんの言葉を聞いたまゆはびくん。と肩を動かして動揺する様子を見せた。


「あ、えっと、まゆさんを責めてるわけじゃない。最初に話を聞いた時は戸惑いはしたけど、この数日間3人でいるのを見て、3人が本当に幸せなんだってことはきちんと伝わってきたからね。えっと、だから、春香…その…睨むのやめてくれないかな?」


まゆがここにいることをお父さんに反対されるのかと、思った春香が、お父さんをすごい目付きで睨んだのを見て春香のお父さんが慌てて弁明をすると、横にいた春香のお母さんがクスリと笑い、僕と春香とまゆは安心した表情をする。


「りょう君、改めて娘をよろしくお願いします。大切な一人娘なので、幸せにしてやってください」


春香のお父さんが僕にそう言って頭を下げると横にいた春香のお母さんも頭を下げたので、僕は慌てて頭を上げるようにお願いする。


「こちらこそ、大切な娘さんを僕なんかに預けていただいてありがとうございます。必ず、春香も幸せにします。春香とまゆと僕の3人で幸せになります」


そう言って僕は頭を下げる。それに合わせて春香とまゆも頭を下げていた。認めて、もらえた。のかな。僕たちの日常が、少しだけかもしれないが、認めてもらえて、こう言ってもらえたことが僕も春香もまゆもすごく嬉しかった。


その後は春香のご両親と夕食を食べて、春香の部屋で3人で眠り、翌日の朝、朝ごはんをご馳走になってすぐに僕たちは車に乗り込む。


「また、3人で帰ってきなさいね」

「うん!」


春香のお母さんにそう言われて春香は幸せそうに頷く。


「りょう、あんたきちんと春香ちゃんとまゆちゃんを幸せにするのよ。春香ちゃんとまゆちゃんを泣かせるようなことしたら即縁切りだからね」

「わかってる」


春香とまゆをたいそう気に入っている僕のお母さんにそう言われて僕は頷いた。


僕の両親に春香のご両親、妹の春と春香の弟のりょう君、おじいちゃん、おばあちゃんにみのり先輩、いろいろな人に春香の実家の前で見送ってもらってから僕たちは出発した。


短いようで長い帰省が終わり、今から真っ直ぐにアパートに帰ってもよかったのだが、せっかくだから道中で少しだけ寄り道をすることになっていた。




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