第203話 女の子同士
「陽菜ちゃん、何か飲む?奢るよ」
「え!本当ですか!?じゃ、じゃあ…りっちゃんさんが選んでくれた飲み物がいいです」
なんじゃそりゃ…って私は思ったが、陽菜ちゃん曰く、「推しが選んでくれることに価値がある」らしい。推しってなんだよ笑
「コーヒー牛乳でよき?」
「よきです!」
めっちゃハイテンションで返事をする後輩を横目に、私は自販機にお金を入れてコーヒー牛乳を2つ買う。お風呂上がりはやっぱりコーヒー牛乳だよね。
「合宿、だいぶ頑張ってくれてるけど、体調は大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
「そっか、ならよかった」
「えへへ。心配してくださってありがとうございます」
陽菜ちゃんの隣に私が座ると、陽菜ちゃんは私と肩がぴったりと引っ付いてしまいそうなくらい、私に近づいてくる。あの告白以降、陽菜ちゃんはずっとこんな感じだ。
「そんなに私のこと好きなの?」
「完全に惚れてます。もう、ぞっこんです」
「そっか…」
そんなに好き。って思ってくれてるなら…
「じゃあ、付き合おっか」
「え?」
陽菜ちゃんがすごく意外そうな表情をする。まあ、そうなるか…
「付き合おう。好きって言われて嬉しかったし、よくよく考えたら断る理由ないし、陽菜ちゃんはいい子だから一緒にいて楽しいしね。まだ、はっきり好きって感情は持てないけど…それでもいいなら…だけどね。あ、たぶんだけど私は、もっと陽菜ちゃんと一緒にいたら陽菜ちゃんのこと好きになると思うよ」
陽菜ちゃんは嬉しそうな表情をする。泣きそうなくらい幸せそうな表情を見せた後、暗い表情になる。
「本当に…いいんですか?陽菜は…その……生きれない…かもしれないんですよ……その、陽菜と付き合っていたら…りっちゃんさんの大切な時間が無駄になるかも…だから、もっと深く考えた方が…」
「大丈夫、後悔はしないよ。あと、陽菜ちゃん、その言い方嫌い。やめてね。無駄な時間なんてないよ。きっと、陽菜ちゃんと一緒にいたらいろいろなことに気づけていろいろなことを学べて、楽しいと思う。陽菜ちゃんと一緒にいる時間は、無駄にはならないよ。だから、安心して」
「本当に、陽菜なんかでいいんですか?」
「陽菜ちゃんがいい」
私が言うと陽菜ちゃんはまじ泣きしてしまう。私の横でガチ泣きする陽菜ちゃんをあやすように私は陽菜ちゃんを抱きしめて頭を撫でる。
「なんか、春香ちゃんみたいだね。春香ちゃん、泣く時いっつも私に抱きついてていっつも、私が頭を撫でてあげてるんだよ」
私がそう声をかけても陽菜ちゃんはずっと泣き続けて何も話してくれない。こういうところも陽菜ちゃんに似ている。
「陽菜ちゃん、泣き止んでるよね?」
5分くらいして、私が陽菜ちゃんに声をかけると、私を抱きしめて私の胸に顔を押し付けていた陽菜ちゃんに私が言うと陽菜ちゃんは「ごめんなさい」と言い、私と顔を合わせる。顔を合わせても、私から離れてくれないのが、何とも言えないくらいかわいい。
「じゃあ、改めて、聞くね。私と…付き合ってくれる?」
私は、私から離れてくれない陽菜ちゃんの顔をじっと見つめて、私から、告白をした。
「陽菜なんかでよければ…是非、もらってください。りっちゃんさんのために一生尽くします」
「大袈裟だなぁ」
「それくらい陽菜はりっちゃんさんのことが好きなんです!!!」
陽菜ちゃんは今日一番の笑顔で私に言ってくれた。疑いようもなく、陽菜ちゃんは私のことを本当に愛してくれていると思えるくらい、幸せそうで素敵な笑顔だった。
「は、初デートは…その……どこに行きますか?」
めっちゃ声を震わせながら陽菜ちゃんが私に尋ねる。初デートかぁ…どうしようね。
「んー、陽菜ちゃんが好きなところでいいよ」
「りっちゃんさんの部屋でお泊まりしたいです」
「即答だねぇ…まあ、でも、私、しばらくは忙しくなりそうだから、お家デートだと助かるかな…」
「じゃあ、初デートはお家デートで決まりですね!楽しみにしてます!」
陽菜ちゃんはすごく幸せそうな表情で喜んでいるが、お泊まりは大丈夫なのかな…と、ふと思った。
「でも、大丈夫なの?その、お泊まりするとご両親とかは心配しない?」
「残りの人生、陽菜の好きように生きたい!って言ったら両親は陽菜の好きにしていい。って言ってくれてるので、大丈夫だと思いますよ。心配なら最初は…りっちゃんさんが陽菜の家に来てくれてもいいですよ」
陽菜ちゃんは笑顔で言うが、いきなり実家暮らしの陽菜ちゃんの家でお家デートはハードル高いわ……
「初デートはうちでお願いします」
「わかりました!楽しみにしてます」
本当に幸せそうに笑ってくれる。この笑顔、大好きだ。この子がずっと笑顔でいられるように、この子と幸せになろうって私は決めた。女の子同士で付き合うのは変だって思われるかもしれないけど、気にしない。私はこの子と、幸せになる。
でも、ずっと私の側から離れてくれないのは、少しだけなんとかしないとなぁ…と思いながら私から離れてくれない私の恋人を私は抱きしめる。
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