第146話 ただいま。
「ただいま」
アパートの部屋の玄関で僕はそう呟きながら靴を脱いで廊下を歩いてリビングに向かう。僕の後ろではまゆがすごく震えながら僕の背中に隠れるように歩いていた。
「大丈夫だよ」
僕は後ろで震えているまゆを安心させるように言ってまゆの頭を軽く撫でてあげる。まゆの震えがおさまったのを確認してからリビングの扉を開けてリビングに入る。
「おかえり。りょうちゃん」
リビングに入ると春香かが僕の方を見ておかえり。と言ってくれた。そして、嬉しそうな表情で僕の後ろにいたまゆを見つめる。
「おかえり。まゆちゃん」
「………ただいま。はるかちゃん」
まゆは言いづらそうな表情で春香に言う。まゆにただいま。と言われた春香は嬉しそうに微笑んでからソファーから立ち上がって僕たちの方に向かって歩いてきて僕の背に隠れるように立っていたまゆに抱きついた。
「ばか…心配したんだからね……」
「ごめんなさい……」
「りょうちゃんも、私に黙ってまゆちゃんのところに行くなんてさ……」
「ごめんなさい…」
帰って早々に僕とまゆは春香に怒られた。2人ともばかだから今日のお昼ごはんなしね。とかいろいろ言われて僕とまゆはひたすら謝り続けた。ソファーに座りその様子を見ていたりっちゃんさんが、「やっぱり、りょうちゃんは尻に敷かれるタイプだわ…」と呟きながらコーヒーを飲んでいるのを見てむすっとした表情をすると、春香に話し聞いてるの?と再びめちゃくちゃ怒られた。
「りっちゃんさん、本当にありがとうございました」
「全然大丈夫だよ。まゆちゃんが戻ってきてくれて安心したよ。りょうちゃん、春香ちゃんを私に任せてくれてありがとうね」
まゆと春香と僕で話し合わないといけないことがあると悟ったりっちゃんさんが私、帰るね。と言ってくださったので僕はりっちゃんさんを見送りに玄関まで行くとりっちゃんさんは僕に言った。
「春香を安心して任せられる人なんてりっちゃんさんくらいしかいないですから…ありがとうございます。春香の側にいてくれて…」
「いえいえ…じゃあ、私は帰るね。今日のお礼、期待してるから」
りっちゃんさんは笑いながら僕に言い、玄関の扉を開けてアパートの部屋から出る。
りっちゃんさんを見送りリビングに戻るとまゆは春香に説教されていた。春香が座るソファーの前で正座させられていてひたすらに文句を言われ続けていた。ちょっと可愛そうと思ったけどばかなまゆが悪いから自業自得だ。
「で、りょうちゃん、まゆちゃん、話って何?ばかなまゆちゃんからまゆちゃんが別れるって言い出した理由は聞いたけど…」
大体、僕とまゆがお願いしたいことに察しはついている様子だったが、春香は僕とまゆの口から聞きたいのだろう。僕とまゆが話すのを待つ。僕は、まゆの隣で正座してまゆが話すのを待つ。これは、まゆが話して春香にお願いするべきだからだ。僕は、まゆの願いが通るように手助けするだけだ。
「春香ちゃん、まゆね。家出してきたの…だから、まゆもこの部屋でりょうちゃんと春香ちゃんと一緒に生活させて欲しい。もちろん、家賃とか生活費はまゆも負担するから……お願いします」
「春香、僕からもお願い」
僕とまゆが春香に頭を下げると春香は呆気なくいいよ。と言う。
「え、いいの?」
「うん。りょうちゃんがまゆちゃんと一緒に帰ってきたらなんとなくこうなるかなって思ってたし…だから、私、まゆちゃんにおかえり。って言ったんだよ」
春香はそう言いながら立ち上がり僕とまゆを抱きしめる。
「これからよろしくね。まゆちゃん、3人で一緒に暮らせるなんて私、すごく幸せ、これからはずっとずっと、一緒にいようね」
「うん…春香ちゃん…ありがとう……ごめんね。酷いこといっぱいして…まゆを受け入れてくれてありがとう…」
「いいよ。さっきまでは怒ってたけど、もういい。許す」
それからはしばらく3人で抱きしめあっていた。しばらくしてお昼時になり、春香とまゆが適当に昼食を用意してくれる。その間に僕は、まゆの車からまゆの荷物を春香の部屋に運ぶ。
そのように役割分担をして、まゆの荷物を運び終わった僕がリビングに戻ると春香とまゆは笑顔で楽しそうに一緒に料理していてすごく微笑ましく感じた。
これからは…
ずっと、3人でいよう。3人で、いっぱい幸せになろう。
いっぱい幸せな思い出を作ろう。喧嘩したりしても最後は絶対に笑顔になろう。1人ができないことは他の2人で支えて助け合い、3人で仲良く、幸せに暮らそう。
3人で生活するために、僕と春香とまゆはそのような約束をした。
3人の左手の薬指につけられている指輪、に向けて、絶対に3人で幸せになる。と再び誓った。
僕は、春香とまゆ…大好きな幼馴染みと大好きな先輩、どちらも幸せにする。
さあ…これからは……3人で暮らそう。
3人の幸せな思い出の新章の始まり。と言ったところだろうか……
僕と、春香、まゆの3人の生活の始まりだ。
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