第134話 幸せな時間
「りょうちゃん、ありがとう。迷惑かけてごめんね」
「これくらい大丈夫だよ」
旅館の部屋の前でまゆ先輩を下ろして部屋の扉を開ける。まだ、誰も帰ってきていなかったので濡れてしまっていたまゆ先輩に部屋にあるシャワーを浴びて来るように言いまゆ先輩をバスルームに連れて行く。
「りょうちゃん。ただいま」
まゆ先輩をバスルームに放り込み部屋にあるソファーに座っていると春香とりっちゃんさんが帰って来た。ゆいちゃんとさきちゃんも一緒にいるみたいだった。
「あれ、りょうくんそれ…」
机の上に置かれたロールケーキが入った箱をゆいちゃんが指差した。ゆいちゃんの隣にいるさきちゃんの荷物を見て状況は察した。
「被っちゃったか…ごめん」
「いやいや、全然大丈夫だよ。美味しかったからロールケーキ3本も買っちゃったけど1本増えるくらい全然大丈夫でしょ」
僕が謝るとゆいちゃんは笑顔で言う。ちょっと待って…3本…も…買ったの?僕たちのと合わせると6本だよ…1人1本計算……
「え、りょうくんたちも3本買って来たの?」
「うん…」
「やった。1人1本食べられる…」
僕の返事を聞きさきちゃんが嬉しそうに呟く。めちゃくちゃ細い身体なのに意外と食いしん坊なのかな?笑
「そういえばまゆちゃんは?」
「あー、ちょっと海で転んで濡れちゃったから今シャワー浴びてるよ」
「へー、まゆちゃんと2人きりで…ねぇ…」
春香がちょっとだけ不機嫌になってしまったので今度2人でデートしようね。と約束をしてなんとかご機嫌を取る。そんな僕をりっちゃんさんたちは大変だな。こいつ。と言うような目で見ていた。
まゆ先輩がシャワーを浴びた後、僕もシャワーを浴びた。部屋に戻るとちょうど夕食が運び込まれていた。
「めっちゃ豪華じゃん…」
「だねぇ…」
「全部美味しそう…」
僕の言葉にりっちゃんさんが同意してさきちゃんが全部美味しそう。と呟くとさきちゃんの横にいたゆいちゃんがさっきあんなに食べてたのにまだ食べられるの?と若干引いていた。どんなに食べたんだろう……
机の真ん中にはお刺身の盛り合わせが大量に盛り付けられた大皿が置かれていて、各自のおぼんの上には料理名がよくわからない野菜やお魚を使った前菜のようなものがいくつか盛られたお皿に小さな鍋に小さいしゃぶしゃぶ、卵豆腐、茶碗蒸し、いいお肉を使ったステーキにエビフライ、カニのお刺身、ご飯、お吸い物、デザートの杏仁豆腐などなど贅沢の極みでしかないような夕食がずらりと並んでいた。みんな真っ先に写真撮ってるし……
「奮発して料理豪華な宿にしてよかったね」
「ですね」
りっちゃんさんとさきちゃんは待ちきれないという様子だった。冷めないうちに美味しくいただこう。ということでみんなで手を合わせていただきます。
その後はもうみんなで大騒ぎ
お喋りしながらいろいろな料理を楽しんだ。普段は話せないようなことから恋話とかいろいろな話をしながら料理を楽しむ。すごく幸せな一時だ。
なんだかんだで、いろいろあった、りっちゃんさんやゆいちゃんも一緒にこうやって旅行に来て一緒に楽しむことができて本当によかった…本当に…幸せだ。
いいのだろうか。こんなに…幸せで……
一瞬、脳内にそのような感情が遮った直後、春香が僕の右手を、まゆ先輩が僕の左手を掴んで小声で良いんだよ。と言ってくれた。
何でもお見通しか…すごいなぁ……こんなにいい彼女がいて、こんなに素敵な友達や先輩がいて、僕はすごく幸せ者だ。
春香、まゆ、ありがとう。僕を幸せにしてくれて…
りっちゃんさん、ありがとうございます。りっちゃんさんには申し訳ないことしてしまったけど、本当に感謝してます。ありがとうございます。
ゆいちゃん、ありがとう。僕なんかの親友でいてくれて…辛い思いさせちゃってごめんなさい。ちゃんと、幸せを掴んでね。
さきちゃん、ゆいちゃんのこと、よろしくね。ゆいちゃんが1番信頼しているのはさきちゃんだと思うからさ、ゆいちゃんが困ってたら助けてあげてね。もちろん、僕もできることがあれば協力するからさ……
今はゴールデンウィーク
まだ、入学してから1か月しか経っていない。
1カ月とは思えないくらい。濃い時間だった。辛いこともあった。悲しいこともあった。でも、幸せだった。
誰かに愛されて常に誰かが側にいてくれて…
この1カ月は僕の今までの人生で1番幸せな時間だったと思う。本当にあっという間だった。きっと、1年なんてあっという間で気づいたら春香たちは卒業して、気づいたら僕たちも卒業しているんだろうな。幸せな時間はあっという間に過ぎ去っていくものだから…
こんなに幸せになれたのはみんなのおかげだ。本当に感謝しないと…
これからも仲良くしてください。
また、来年も…このメンバーでどこか行きたいなぁ。
来年だけじゃなくて再来年も…春香たちが大学を卒業してからも…僕たちが大学を卒業してみんな社会人になってからも…こうしてみんなで仲良く旅行とかに行きたいなぁ。
幸せな時間をありがとう。
本当に感謝してもしきれないや。
これからもよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます