第102話 朝の誤解





リビングに鳴り響いたスマホのアラームをまゆは布団から手を伸ばして止めた。まだ寝ていたい…だが…授業があるのでそろそろ起きないと…と思いまゆは隣で眠っていた春香ちゃんを起こす。かわいい…めっちゃ幸せそうに眠る春香ちゃんを起こすのは申し訳なかったがそろそろ起きないと本当に遅刻してしまいそうなので春香ちゃんの体を揺らして起きて。と声をかけると春香ちゃんはまだ眠たそうにしながらもまゆちゃん…おはよぅ……とあくびをしながら声をかけてくれる。かわいすぎるわ…


「あれ?そういえばりっちゃんは?」


いつもならまゆや春香ちゃんよりも先に起きているはずのりっちゃんが居なくなっていた。台所の方やトイレも確認したがりっちゃんはいない。コンビニにでも行ったのかな…と思いながらまゆはりょうちゃんを起こしに向かう。りょうちゃんの部屋の扉をそっと開けてりょうちゃんを起こさないように部屋に入って、りょうちゃんの寝顔を少しだけ堪能してからりょうちゃんが眠るベッドに入って少しだけ添い寝してからりょうちゃんを起こしてあげようと思いながらまゆはりょうちゃんの部屋の扉をそっと開けた。


「え?は?え?ん?は?」


りょうちゃんの部屋の扉を開けてそっとりょうちゃんの部屋に入ったまゆはりょうちゃんの部屋のベッドを見てびっくりした。まゆはそっとりょうちゃんの部屋を出て春香ちゃんを呼ぶ。まゆと一緒にりょうちゃんの部屋に入った春香ちゃんも先程のまゆと同じような反応をした。とりあえずりょうちゃんを起こして話を聞こうと言うことになったのでまゆと春香ちゃんはりょうちゃんを起こす。 


「「りょうちゃん、りっちゃん、起きて」」


まゆと春香ちゃんが声を掛けるとりょうちゃんが目を覚ます。ん…と呟きながら起き上がり、現状を把握して驚いているようだった。りょうちゃんが起きた少し後にりょうちゃんの横で眠っていたりっちゃんも目を覚ました。りっちゃんは起きてすぐに現状を把握したみたいでまゆと春香ちゃんに違うの!と言ってくる。とりあえずちゃんとお話ししよう。と言うことになりまゆと春香ちゃんはりっちゃんとりょうちゃんを連れてリビングに戻る。





「で、どうしてりょうちゃんとりっちゃんは同じベッドで寝てたのかな?」


僕とりっちゃんさんをリビングのソファーの前で正座させたまゆ先輩はソファーに座り怒りを露わにしながら僕とりっちゃんさんに尋ねる。まゆ先輩の横に座る春香がめちゃくちゃ悲しそうな表情をしていて申し訳ないが……本当に理由がわからない…なんであんな状況になってた???昨日…僕はりっちゃんさんが泣き止むのを後ろで見守っていた。そこまでは覚えている。だが、その後の記憶がない。


「春香ちゃん、まゆちゃん、ごめんなさい。りょうちゃんは悪くないからさ、りょうちゃんを責めるのはやめてあげて欲しいな。本当にごめんなさい。りょうちゃんには春香ちゃんとまゆちゃんがいるのに誤解されるようなことをして…本当にごめんなさい」


りっちゃんさんが誠心誠意謝ると春香は安心したような表情をするが、まゆ先輩はどうして一緒に寝てたのか教えて…と追及を続けた。


「昨日の夜、春香ちゃんとまゆちゃんと一緒に寝てたよね。春香ちゃんとまゆちゃんが完全に寝た後、私はりょうちゃんの部屋に行ってりょうちゃんに相談…というか…ちょっと話し相手になってもらったの。話の途中でね。私が泣いちゃって、泣いた私をりょうちゃんが慰めてくれた…いや、慰めたわけじゃないか…まあ、泣いてる私に優しくしてくれたんだよ。で、私が結構長い間泣いちゃってて…夜遅かったしりょうちゃん眠そうにしてて…その……眠かったら寝ていいよ。私、リビング戻るからって言ったらりょうちゃんが泣いてる先輩をほっては置けませんよ。って言ってくれたんだけど申し訳なくて…だったら泣き止むまで部屋に居させて…りょうちゃんは横になってていいからって私が言って、りょうちゃんをベッドに寝かしつけて私はクッションの上で泣いてたの。で、ベッドに横になって眠気を抑えられなくなったりょうちゃんがすぐに寝ちゃって…ずっとりょうちゃんの部屋にいるのも申し訳ないなって思ったからリビングに戻ろうとして立ち上がったんだけど…ごめんなさい。りょうちゃんと同じお布団に入ってりょうちゃんの横で泣き続けちゃって…気づいたら寝ちゃってた……」

「りっちゃんはりょうちゃんのこと好きなの?」


淡々とまゆ先輩はりっちゃんさんに尋ねた。僕と一緒に寝るまでの過程なんかどうでもいい。まゆが1番聞きたいことはりょうちゃんのことを好きかどうか、と言う思いがハッキリ伝わるように淡々とまゆ先輩は尋ねた。


「信じてもらえるかはわからないけど…りょうちゃんに恋愛感情はないよ。後輩としてりょうちゃんのことはめちゃくちゃ好きで気に入ってるけど恋愛感情はない。昨日は…泣いてる時に優しくされて…つい、甘えてしまったの。ごめんなさい」


りっちゃんさんが頭を下げて謝罪するとまゆ先輩は安心したような表情をする。


「よかった…りっちゃんがりょうちゃんのこと好きになったら勝てる気がしないからめっちゃ安心した……」

「私も……」


まゆ先輩の言葉に春香も同意して頷く。


「え、ちょ…僕の中では春香とまゆが1番だからそんな心配しないでよ…安心して…春香とまゆ以外の女性に振り向いたりはしないから」


僕が春香とまゆ先輩に言うと春香とまゆ先輩は嬉しそうな表情で僕に抱きついてきた。僕は春香とまゆ先輩を受け止めて2人を抱きしめる。そんな僕たちのやり取りをりっちゃんさんはぽかーんと、呆気に取られたような表情で見つめていたのだった。






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