第6話 その4

死の宣告を言い渡されたが…でも僕は長い呪縛から解放されたような平穏な気持ちになった。


「……何故そんなに穏やかな表情が出来る?」


「今までの辛いかったです…本当は自分のこの訳わからない力で両親が事故に巻き込まれてしまったんじゃないかと…それを思うと怖くて…」


「……そうだったのか」


僕は体を丸くして必死に泣かないように耐えた。


ルルさんは自分の姿を見てため息をした。


「はぁ〜これも縁…この世界でただ朽ち果て消えるのみのだった私に君と出会い…成すべきの事が出来た…これでよいではないか…」


ルルさんは意味が分からない事言って泣いている僕の頭を撫でた。


勿論…すり抜けて触れられなかった。


でも…やり続けた。


触れてもいないのに…何故か彼女から暖かい温もりを感じた。


「よし…今から私の最後の力を振り絞ってハルト君の魔力回路を構成し直す!こっち向いて!」


僕はその言葉に頷く訳にはいかない。


邪眼を使って透明化が始まった…。


もし、またその不思議な力を使ってしまうとどうなるか言わなくても分かる。


「待って下さい!!これ以上力を使ったらルルさんが…やめて下さい」


「馬鹿者ぉー!今君の状況を説明したはずだ!いつ死んでもおかしくないんだぞ!」


「いいです…他人の命を使ってまで…生きたくありません」


僕は原因を教えてくれただけで感謝し切れないと思っている。


それを後残り僅かな命まで…僕にはそこまでしてもらう資格はないし…その事を背負って耐えれるほどメンタルが強くない。


しかし…ルルさんは急にビンタをして来た。


勿論…すり抜けてしまうが…意地になった彼女はパンチとキックまでしてきた。


「はぁはぁ…この意地っ張りめ…子供か!あっ…子供だったな…?ふぅ……ハルト君!私は救える命を見殺しにした汚名を残したくないよ」


「しかし、ルルさんが!」


「えいーヤカマシイ!夜明けまでも持たぬ命惜しくもなんともないわ!」


怒り出したルルさんは僕を怒鳴るかと思ったが、優しい表情で静かに話した。


「それに君は2000年以上…孤独だった私にひと時の刹那であるが楽しい時間をくれた」


「でも…僕なんかに…」


「最初、ハルト君と話しが通じた時、嬉しくて泣きそうだったよ………あと半日に消えてしまう身に最後の奇跡を目にしたように…嬉しかった」


「………」


「むむむ!鼻にポテトを刺すなど無礼者でもあったが!ふふふ…あはははは!愉快な奴…こんな経験をした神など私以外はおらんだろう…あははははは」


ルルさんは爆笑した後…真剣な顔に変わった。


「このままだと君も私も終わりだ…私は無理だが…君は助かる!せめて君だけでも生きて…そして私の事を時々思い出してくれれば…私は救われた気持ちになれる…」


その優しい笑顔…今なら女神と信じてもいいと思った。


「ルルさんの事…忘れる訳ないじゃないですか!」


「そうかそうか…嬉しいよ!ありがとう、これで心置きなく行ける……よし!やるぞハルト君!」


僕はルルさんの説得に応じる事にした。


死より…自分の存在が消えて忘れ去られるのが…とても寂しくてなにより怖く感じたからだ。

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