異世界で僕…人気やめさせられしまいました…。
@youyama
第1話 出会いは萌えるが自己紹介が痛々し…。
1章1話
ー 第一章 ー うちの女神様救いにちょっと行って参ります
この世界は理不尽過ぎる。
僕は交通事故で両親を失った。
相手の運転手は居眠り運転していて…二人の命を奪ったにもかかわらずそれ相応の処罰と思えないほど軽い刑を受けた。
その後…両親の命の代わりに保険金が支払われて終わった。
死んだ者の人権など…紙くずと等価のようでこの世はあまりも冷たい。
昔…隣に住んでいるヒロシ兄さんにこんな事を聞いた事がある。
法律なんぞ所詮…既得権のやつらが作った物…法ってものは元々持つ者が持たぬ者から自分達を守る為に作ったものだと…そんなものが公平な訳がないと言っていた。
難しい事はよく分からないが…その時は意味も分からず共感してヒロシ兄さんが凄くカッコいいと思った。
働いたら負けとか言って…30歳になっても無職を貫いている人だけどな。
しかし…今考えるとその話しは一理あると思った。
でも…たかが16歳の僕がそれを何か出来る訳もなく…何とかするつもりもない。
それで…僕も自分なりにこの理不尽な社会の食い物にされないように抵抗して…暗い部屋に引きこもって……最近ハマったスマホゲームをやってる。
「……うむ、このゲーム会社エグイわ」
10連ガチャ300回やってやっと欲しいキャラが出た…。
グーゥ…。
お腹が空いてキッチンに行って冷蔵庫を開けるとすぐ食べられそうな物はなかった。
料理は好きだが…今日はそんな気分ではない。
それにしても…買い出しに行ったのはいつだろ?
生活必需品もそろそろ尽きそうなので仕方なく買い物に出かけた。
寒い!寒い!寒いぃぃ!
日が暮れ始まった夕方に…冬の冷たい風は…引き篭もりの僕にとって辛過ぎる。
それに外は雪で真っ白…いつの間に雪が降ったも知らなかった。
しかもめっちゃ積もってる。
寒いし…カップルも多い…帰ろうかな?
リア充爆死しろ!
僕の名は志村晴人…16歳だ。
訳があって高校も退学して頑張って自宅警備をしている。
今…社会的に問題になっている無職引き篭の一人って事だ。
最初は好きでやっていた訳では無いが…今はこの生活も悪く無いと思ってきた。
ゲームはやり放題…昼寝し放題だ。
その内…社会不適合者…いわゆる廃人になるだろう。
とにかく腹が減ったので腹拵えをしてから買い物に行こうと思った。
まずはいつものアレからだ。
僕が社場に出ると必ず寄って行くファーストフード店…
マックストルネードバーガー!
ネイミングセンスはちょっとアレだが…美味しい。
山盛り買って帰ろう!
「ありがとうございました」
持ち帰りの袋を持って久々に来た商店街をぶらつくと外は暗くなった。
夜は気分が落ち着いて好きだ。
さてさて…買い物すませて帰ろうか!
しかし…商店街の店はほとんど閉まっている。
今日は大晦日…そして、僕の誕生日…17歳になった事も気付いてなかった。
これはコンビニの世話になるしかないな…。
クーーーールル、グーーゥ
お腹から空腹感のレッドゲージを知らせるスクランブル音が鳴った。
空気読めよ…僕の胃袋!
昨日から…コーラとポテチしか食べてなかったから…空腹で気持ち悪い…。
それで何処かでバーガーを食べる事にした。
顔見知りに会ったら嫌だし…人が居ない場所を探して…小さい公園をみつけた。
灯りも少ない暗くで静かな場所!正にベストプライスだ。
そして…座って食べる為にベンチに向ったが…先に座ってる人が居た。
あぁ…ついてないなぁ…。
ほかに座れそうな場所もなかった。
仕方ない…相席させて貰おう。
暗くてよく見えなかったが…公園の灯りが付くと女子がベンチのど真ん中に座っていた。
ふぅ…怖いお兄さんじゃなくて良かった。
ナンパ目的で来たと誤解されるのは嫌だが、胃袋の激しい抗議に耐えきれなくてササっと食べて去る事にした。
歩きながら食べる手もあるが…このマックストルネードバーガー…中身が半端なく多くて…歩きながら食べようとしたら…ほとんどこぼしてしまう。
僕は出来るだけ彼女を意識してないフリをして片隅に座ろうとした。
「あわわわ!? ササササー!」
僕に気付いた彼女は慌てて反対側に滑るような動きで移動した。
き、器用だな…どうやって移動した?
しかし…僕も男!思春期真っ盛りの年…女の子が気にならないと言ったら嘘になる。
どんな女の子か気になった僕は包みを開けながら彼女をチラッと見た。
慌てて端っこに行った割には何も無かったように空を見上げている。
真っ黒の黒髪、長い髪を結んだ白リボン…可愛いというより愛らしい顔立ち…中々の美少女!正直…僕のストライクゾーンど真ん中だ!
背は高い方ではない…僕のより低いと見える。
それに!出るとこ…ぼーん!と出て!引っ込むところはしっかり引っ込んでいる。
わーお!!初めて見た!
世間で言うロリ巨乳!しかもボンキュボン!と来た。
そのダイナミックなボディに見惚れてしまった僕はチラ見が止まらなかった。
超高速眼球運動で目眩と吐き気がしたが…やはりやめられない。
顔は幼く見えるが大人の雰囲気がして…きっと年上に間違いないと思った。
それに…彼女の座ってる姿を見て違和感を感じた。
彼女のお尻が…。
丸くて可愛いお尻が…。
ベンチの上から少し上がったり下がったり…バウンドしてるように見えた。
お、女の子のお尻って…。
凄い弾力だ!半端ねぇぇ!アンビリバボぉぉーーー!
僕は新たな発見に胸が躍った!
それに…この寒い時期にかなりの薄着だったの風邪を引いてしまうと心配になった。
ハンバーガーをか齧りながらまたチラ見をするその瞬間…視線に気が付いた彼女の顔が僕の鼻に当たる1ミリ先まで接近していた。
「むむむ!!」
「うわゎー!!びっくりした!ジロジロ見てすみません!すみません!ちょっと気になってというか、心配というか…」
「えっ?…まさか!君…」
「いやいや!誤解しないでください!ナンパとか変な事考えてませんから!ただお腹が空いて静かな場所でバーガー食べに来ただけですから!」
僕は彼女の体を隅々までチラ見した罪悪感もあって必死に謝罪と弁明をした。
「うーーん…いや…違うよ!私が驚いたのはね…」
彼女は自分のアゴを指でトントンと当てながら考え事し始めて…しばらくして口を割った。
「私が驚いたのはね…君はなぜ私が見えるのかな…?ってね…」
おぅ…予測不能の質問!返事に困る!
何かのジョークか今流行りのギャグか分からなくてスマホで検索までした。
検索結果…0件
オーケー…この場合は普通に返事しよ!
「僕、視力だけはいい方です…すれ違った女性のお尻の形とサイズまで分かります」
よし!普通で最高の返事出来た!
「へぇ…君…凄いね?まあ…そんな事は聞いてないが」
彼女は自分のお尻を手で隠しながら僕を変態を見る目で見て…微妙に距離を取った。
視力の良さを詳しく説明しただけなのに…。
「まあ…いいわ…君の名前は?」
彼女は何か言いたい事がありありそうな表情だったが…すぐどうでもいいような顔に変わって話をすり替えった。
「僕は志村晴人(シムラハルト)です…年は今日で17歳になりました。」
今度は普通に自己紹介が出来た気がする!
これでまたゴミを見る目をしたら立ち直れなさそう。
「うむ!良い名だ!それと、誕生日おめでとう!志村君!この先君に幸あらんこと祈ろう…」
この反応!僕はまだ廃人レベルまでは至ってないようだ
それに彼女の優しく微笑む笑顔を見て…顔が熱くなった感じと胸がドキドキした。
初めて会った人に形だけのお祝いの言葉だが彼女の言葉には真心と暖かい気持ちを感じた?
僕は嬉しくさとはずかしさに彼女から背を向けて礼を言った。
「あ…ありがとうございます…」
「ぷっ!照れてる照れてる可愛い可愛い!あはははー」
「揶揄うの…やめてもらいません?」
腹を抱えて笑われたが…嫌な気分にはならなかった。
彼女の笑顔は本当に見惚れるほど綺麗で無邪気な笑顔だったからだ。
「うむ…誕生日なのに悪いが…今しばらく付き合ってもらえないだろうか?」
「は、はい?何をですか?」
「……最後の夜は楽しく誰かと語り合って過ごしたいのだが…だめだろうか?」
先までの彼女の笑顔が寂しくて切ない表情に変わった。
早く帰ってやっと出たゲームの新キャラの育成をしたかったが…僕はその顔の前にして何故か断る事は出来なかった。
「いいですよ!どうせ待ってる人いませんし……朝まででも付き合いますとも!今年最後の夜、二人で過ごすのもいいですね!」
夜に女の子を置き去りして帰るのも気が引ける…本当は偶然な出会いにちょっと萌えている!
「おーー!本当か!ありがとう!…しかし…大晦日の夜…一人寂れたこんな所で…君…ボッチかい?」
むっ!そうです!その余計な一言で心のダメージを受けているボッチです。
「あの…否定はしませんが…流石に傷つきます…それに危ないんじゃないですか!こんな暗い場所で女の子一人…ん?……って貴女も同じボッチじゃないです?」
「あはははは!すまん!すまん、ふむ!私も自己紹介をしなければならんな!」
彼女はベンチから立ち上がり凛々しく自己紹介を語り始めた。
「心して聞くがよい!そして光栄に思え!私の名はルナ、ファナリー、ルカ!そして!」
「へぇー!外国の方だったんですか?日本語が流暢で分かりませんでしたよ!すごい!わーい!パチパチ」
「………」
思わず…話の腰をポキっと折った僕の顔に彼女はグーを出して来た。
丸くて柔らかそうな手…殴られても痛くなさそう…。
「おい、君…人の自己紹介は最後まで聞かないと、どっかの怒り狂った女子に殴り殺されるーとかなんとかの話し親御さんに教わらんかったかね?」
「その様な話は初耳ですが…今後から気を付けます!続きをお願いします」
「ふんっ!許す!改めて名乗ろう!」
彼女は真剣な顔でもう一度自己紹介をやり直した。
「私はルナファナリールカ!そして!私はこの世界の者ではない…」
そうだな…最近ヘッドホンでボリュームMAXでゲームをやっていたせいか耳が悪くなってる?…それか日本語を間違えているのか?外人だし…。
「私はこの世界と異なる…ダースアクリア, マムンティア, レガリスという3大陸が存在する別世界の16の大神の一柱!破壊を司る女神である!」
………おう!どっちも違った。
「えへん!人の前に自己紹介は2000年ぶりだよ!なんか照れるなーウフフ♪」
何言ってるんだこのお姉さん?何大陸?女神?2000年?
あまりも壮大で痛々しい自己紹介に僕は体がガチガチ固まって言葉も出なかった。
早まった!ああぁ…この人と朝まで付き合うのは精神的に無理だ!どうしよう?
彼女は僕が何を考えているのか気付いた様子で…怖ーい顔してその顔に近付けて来た。
「君…私の事…痛々しい厨二病の女とか思ってるんじゃないか?イヒヒ」
「いや…その………ちょっとだけ……」
だが彼女の怒りの顔はすぐ虚しさに変わってため息をした。
「そうだな…この世界には神の信仰も存在すら薄いでな…当たり前か…」
その壮大な自己紹介はどうあれ、彼女の落ち込んだ姿に少し胸が痛む僕だった。
それで僕はハンバーガーとフライドポテトを取り出して話を合わせる事にした。
話を合わせる事ぐらいは何とかできる!
「あのルルさん…一緒に食べながらその何ちゃら大陸の話ししてくれませんか?」
「うん…?ルルさん?」
「ルナファナリールカさんって長いし呼び難いじゃないですか?ですから略してルルさんで…」
そう…舌を噛みそうだ。
「フッ…まあ悪く無い呼び名だ!なら、ルル様で良い」
様?まあ…いいけど。
「はい!ルルさん!」
だが…断る!
「お、おぅ…君、顔に見合わずに根性座ってるな…まあ良い好きにせい…」
「はい!ルルさん」
「って!なんちゃらってなんだ!私の世界バカにしとるんかい?あん?」
その地名、一回聞いて覚えられる訳ない。
「まあまあ…冷める前に食べながらね!」
僕はハンバーガーとフライドポテトを手に取って差し出したが…彼女は何故か困った顔をした。
「ハンバーガー嫌いですか?すみません…」
「いや君が謝る事はない…嫌いではない!そもそも口にした事もないんだ…むしろ食べて見たいぐらいだよ……」
「では…なぜ?」
「ああ…それはな…食べられないからだよ…触る事さえ出来ない…ほらね…」
ルルさんの手はベンチの背もたれを掴もうとしたが…すり抜けて掴む事が出来なかった。
それにベンチから浮いて飛んでいた…。
びっくりして心臓が飛び出して…喉に詰まって窒息死するかと思った。
あの時…僕が見たお尻の跳ね上がる姿はベンチに座ってるように見えて…実は浮遊していた事に気づいた。
紛らわしいよ!僕のアンビリバボの気持ち返せ!よく考えたら…んなわけ無いよな…
胸が躍った自分が恥ずかしくなった。
「ん?…という事は!えーー!ルルさんって…幽霊だったんですか!」
「ゆ、幽霊?貴様ぁぁ!女神だというておろうが!無礼にも程があるわ!そんな未練ダラダラ残し彷徨うようようなものと私を……」
怒り出したルルさんは急に黙り込んでくの字になった。
「うん…そうね、私も女神のチカラを失い3000年以上この地を彷徨う立派な幽霊じゃないか…あはは…もう幽霊でいいです…」
彼女は呪いを吐くようにぶつぶつ独り言を始めた。
僕は初めて見たスピリチュアル的な存在に出会って興奮してしまったというか…魔が差したというか…好奇心で落ち込んでるルルさんに近付いた。
「ルルさん…ちょっとこっち向いて下さい」
「後にしてくれないか…ちょっと、今の自分の置かれた状況に軽く絶望してるとこ…ん?」
ルルさんが顔を向けた瞬間…僕は長いフライドポテト二本を両手で持って構えた。
「はぁーっ!二刀流突き!せいやーっ!!」
「くは!ぬうおーー!」
僕はフライドポテトをルルさんの鼻の両穴に奥深く見事にぶっ刺してしまった。
「おほふ…信じられない…め、女神の鼻にこんな物をぶっ刺すとは…くぅ…この罰当たりがぁー!ああ…もう幽霊だっけ?ふふふ…もういいです…どうでもいいや…」
ルルさんはフライドポテトをブラブラと鼻に刺さったまま…また…くの字になった。
本当に見事に刺さってしまった…。
すり抜けると思ってやった…。
本当なんだ!信じてくれ…。
……ん?
「ルルさん!ルルさん!!ポテトが鼻に刺さってますよ!!」
「分かっとるわい!!お前が刺したんだろがー!!ん??えっ?」
ルルさんもやっと気が付いたか…驚いた表情で鼻に刺さったポテトに震えながら手を向けた。
そして…それを思い切り握り取った。
「と…と…獲ったどぉぉーーー!」
ポテトを両手で取って空に向け叫ぶ彼女は…物に触れた事が凄く嬉しいようだ。
「ルルさん!もしかしたらハンバーガーも食べられるじゃないですか?」
僕はルルさんにハンバーガーを差し出した。
「うむ…試して見よう…(ごっくり)」
目をつむりながらハンバーガーを取ろうとしたが僕の顔にその手が近づいて来た。
「あの…ルルさんそっちは僕のオデコの方ですけど…」
「あっ!すまん!緊張して手元が狂った……えいっ!!」
そして、ハンバーガーは僕の手からルルさんの小さくて綺麗な手に渡った。
「う、う、嘘見たい…長年あれほど物に触れようとしたが…叶わなかったのに…こんなにもあっさり…」
ルルさんは信じられないような表情でハンバーガーを見つめていた。
「食べて見ませんか?美味しいか分かりませんが…僕は好きですよ?マックストルネードバーガー……」
「ああ…食べたら口が引き裂かれそうな名前はどうあれ…頂きます!!」
へぇ…ルルさん……突っ込みうまい!
「うん!美味しい…うううう…」
嬉しいのか美味しいのか…よく分からないが…涙目でハンバーガーを食べてるルルさんの姿に、僕は彼女を揶揄った罪悪感で顔を反らしてしまった。
そして、彼女の話しが…全て本当の事なら…気が遠くなるほどの長い時を一人でどれだけ孤独や寂しさに耐えていたか…僕には想像がつかない。
「君!これ、美味いな!もう一個寄越せ!」
「あ…は、はい…どうぞ」
…余計な心配をしたと後悔した。
ルルさんはハンバーガーを5個を軽く食べ尽くしてまだ足りないような表情だった。
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