第18話 【精霊騎士】、プレゼントを買う
【CASE:3、アクセサリショップ】
「おや魔王さま、今日はカレシ連れかい?」
「残念ながら違うのじゃ。こやつはハルト・カミカゼ、先日危ういところで命を救われての。今は客人として王宮に招いておるのじゃ」
「いやー、魔王さまにもついに春が来たんだねぇ。で、カレシさん。魔王さまにとってもよく似合う素敵な髪飾りが入っているんだけど。ほら、この可愛い子熊のなんてどうだい、よく似合いそうだろう?」
「じゃからハルトはカレシではないと――」
「こう見えて魔王さまは可愛いものが大好きなんだよ。プレゼントするならこいつで間違いないねぇ」
「じゃからハルトは――」
「そうだな、確かにこれはよく似合いそうだ。ふむ、作りもなかなかに丁寧だな……よし、買おわせてもらおう」
「お買い上げありがとうございます」
「ハルト!?」
「あれ、いらなかったか?」
幼女魔王さまに似合いそうだと思ったんだけどな。
「いや割とかなり好みの可愛い系の髪飾りではあるのじゃが、その、あの……ごにょごにょ……」
「なら良かった」
「あ、うん……なのじゃ」
どこかそわそわしながら、幼女魔王さまはこくんと頷いた。
「それと店主、こっちのも頼む。このシンプルなシルバーのネックレスだ。ミスティに似合いそうだからな」
「わ、私にもいただけるのですか!?」
まさか自分にもプレゼントがあるとは思っていなかったのか、ミスティが驚いた顔を見せた。
よほど驚いたのか、ほんのり頬が赤く染まっている。
「だって3人で来てるのに魔王さまにだけプレゼントしたら、かなり感じ悪いだろ? もしかして嫌だったか?」
「まさかそんな! ハルト様にいただけるのはとても嬉しいですけど、その――」
ミスティはちらりと幼女魔王さまに遠慮のような視線を送ったけれど、幼女魔王さまはふむふむと満足そうにうなずいているだけだった。
「ならオッケーだな。そういうわけで店主、これも頼む」
「あ、ありがとうございますハルト様」
半ば強引に押し切られたミスティは、しかし素直にネックレスを受け取ってくれた。
そして、
「ではこのネックレスは家宝の一つとして実家の倉に厳重に保管するとともに、未来
ミスティは使命感に満ち満ちたキリッ!とした表情でそんなことを言った。
「えっとあの、普通に身につけてくれた方が嬉しいかな……?」
何の変哲もないネックレスを家宝として残されたら、後世のアーレント家の人たちも取り扱いに困ることだろう。
「おっとおっと、まさかの両手に花だったかい。若いねぇ。だけど一つだけ言っておくよ。魔王さまやミスティを泣かせたら許さないからね?」
「店主、親身なご助言に感謝する。肝に銘じておこう。ま、俺がいる限り悲しい目に合わせたりはしないけどな」
自分で言うのもなんだが、激戦続きの【勇者パーティ】で5年も前衛=フロント・アタッカーとして戦ってきた俺に勝てる相手はそうはいない。
「おやおや、カレシさんは大した自信家だねぇ。やっぱり若いってのはこうでなくっちゃね」
「こう見えて腕っぷしには自信があるんだ。2人に悲しい思いをさせる前に、俺が全ての障害を排除してみせる」
言って、俺は腰に差した【黒曜の精霊剣・プリズマノワール】の柄を軽く持ち上げてみせた。
「そういう意味で言ったんじゃないんだけどね……割と鈍いねカレシさん」
「じゃからハルトはカレシではないと――」
そんな幼女魔王さまの声は、しかし最後まで店主には届かなかったようだった。
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