第6話 登場! 幼女魔王さま!!
「ふふん、聞いて驚くがよいのじゃ!
「そっかー。ところで金髪のハーフエルフの女騎士さん――ミスティだっけ?」
「はい、ミスティ=アーレントです。どうぞお見知りおきを――えっと剣士様のお名前は――」
「ああ、俺はハルト・カミカゼ。元【勇者パーティ】で、色々あって今はフリーの【精霊騎士】をしてる」
「ハルト様、素敵なお名前ですね! しかも【勇者パーティ】のメンバーだなんて!」
「ありがとう。ミスティも可愛い名前だね」
「えへへ、ありがとうございます」
「あと『元』だからね。ちょっと誤解があって追放されちゃってさ……」
「ああ、なんとおいたわしいことでしょう……」
ミスティと楽しく会話を弾ませていた俺に、
「……のうハルトとやら。なぜ今、
自称【南の魔王】が恨みがましい視線を向けて問いかけてきた。
「あほらしくて突っ込むのも面倒くさかったから?」
「ひどい!? 本当のことなのじゃ!」
憤慨する自称【南の魔王】だけど、
「あはは、【南の魔王】がこんな人間族との国境付近ににいるわけないだろ。それに野盗に襲われてピンチになるほどへっぽこなはずもない。知ってるか? 【魔王】ってのはそれこそ震えあがるほどに強いんだぞ?」
【北の魔王】やその腹心である【北斗四天王】の強さときたらそれはもうとんでもなかった。
戦う前から心が折られるような圧倒的なオーラを漂わせる絶対強者、それが【魔王】という存在なのだ。
そして残念なことに、この幼女からはそんなオーラは微塵も感じられなかった。
むしろちっこい身体で必死に自分が【魔王】だと主張する姿は、見ていて微笑ましいくらいである。
「このお方は魔王さまで間違いありませんよ」
「ははは、ミスティは冗談もうまいんだな」
「冗談ではないと言うておるのじゃ!」
「マジ話です」
「え!? マジで!?」
「ふふん。それ見たことか」
「こんな弱そうなのに?」
「はい」
「
「こんなちっこいのに?」
「はい」
「だからちっこいは余計だと言っておるのじゃ!」
「角も生えてない鬼族なのに?」
「はい」
「だからなんとなくギリギリかろうじて生えておると言っておるのじゃ!」
「マジっすか?」
「マジっす」
「やっと理解しよったか」
俺は自称【南の魔王】を見た。
胸の下で腕を組んで偉そうに俺を見上げていた。
そう言われて改めて見ると、どことなく邪悪のオーラを感じる――ごめん全く感じません、これっぽっちも感じません。
でも俺に
「はっ!? まさかおまえ、帝国への侵攻を計画してこっそり国境付近を下見に来ていたのか!」
ここまでの情報から、俺の灰色の脳細胞がヤバすぎる結論に行きついてしまった。
一度思いついてしまうと、むしろそれ以外に理由はないとさえ思えてくる。
「くっ、【北の魔王】との戦争が終わってまだ1年弱、人々が負った身体と心の傷は癒えていないんだ。もし【南の魔王】が人間の領土を侵犯しようというのなら、悪いがここで俺がお前たちを斬る――!」
俺は腰に差した【黒曜の精霊剣・プリズマノワール】の柄へと手をかけた。
闘志も
「ハルト様ハルト様。南部魔族と人間族は長年友好関係にあります。先だっての【北の魔王】討伐戦でも、平和主義の理念のもと共闘したはずです」
「いやそれは知ってるけどさ。だったらなんで【南の魔王】が直々にこんなところまで
「最近、人間族の野盗が越境してきては我が国土を荒らしまわっていると聞いての。ちょいと視察に来たのじゃよ」
俺の問いかけに、幼女魔王さまが多分に憂いを含んだ顔で言った。
けれど俺は、そんな幼女魔王さまに悲しい真実を告げなくてはならなかった。
「……それで野盗に殺されそうになってたら本末転倒じゃね?」
「たまたまなのじゃ! ちょっとした手違いなのじゃ! 気持ちミスっただけなのじゃ! だいたいたかが野盗があれほど練度の高い集団戦を挑んでくるなどとは思いもよらんではないか!」
「それに関しては……悪いな。あれは
「傭兵崩れ、ですか?」
よくわからないといった風にミスティが小首をかしげた。
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