23話 アキ、新能力!?③
図書館に入ってきた僕たちに対して司書の一人が話しかけてきた。
「こんにちは。何かお探しの本はありますか?」
普通の図書館なら読みたい本は自分で探すというのが一般的なのだろうけれどもなにせ広い。それはもうこの世界中の本が集められてるんじゃないかってくらい広い。
流石にこんな広さの図書館の中を一冊の本目当てに探していたとしたらそれだけで夜になってしまうだろう。
「創造の魔法についての本はないか?」
「ありますけど、どのようなものをお探しで?」
「歴史と、初心者から中級者向けの指導本のようなものがあれば……」
「かしこまりました」
アキネスが若干悩んでいたようだったので僕がバトンを変わる。
もしかしてアキネスはこの図書館にはほとんど来たことがないのかもしれない。この図書館で「創造の魔法について」の本を探すように言ったら軽く百冊くらいはありそうなものである。この図書館によく来る人ならもっと限定させるだろう。
そんな事を考えていたら本が用意できたと言われた。
「え、どうやって取りに行ったんですか?」
かくいう僕もこの図書館に来るのは初めてである。
さっきからずっと司書の人は僕たちの目の前にいたわけだし、誰かが取りに行ったわけでもなさそうである。
「この図書館は希望の本を司書に言えば本を司書の所までテレポートさせることができるんだ」
狭い図書館ならともかくとして、この図書館にはそれくらいの設備があってもおかしくないのかもしれない。でも本だけにテレポート機能を付けるというのは若干オーバーテクノロジーな気もする。
「ありがとうございます」
僕は本を受け取ると、それを借りて家で読むことにした。
どうやら返却の期限になると自動的に本がこの図書館に戻ってくるらしい。本の返却を延滞することもないので図書館にとっても借りる人にとっても便利なシステムである。
そんなわけで数冊の本を抱えて帰ろうとし、家までの道を歩いているとフードを被った少年にぶつかった。少年は勢いよく走っていたので避けることができなかった。
僕が持っていた本はいくつか散らばるが、少年もかなり派手に転んでいたと思う。
「すみません、少し前が見えてなかったもので……大丈夫ですか?」
少年に声をかけるとすぐに立ち上がり、そして
「ごめんなさい、急ぎの用事があるので!」
と言って街の向こう側へと消えて行ってしまった。
しかし、転んだ時に取れたのであろうフードの中の顔には、少し人とは違う部分があったような気がする。
先のとがった細長い耳……。
「もしかしてエルフ?」
僕は落ちた本を拾い上げながら、独り言をつぶやいたのだった。
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