20話のおまけ

 私の名前はエルティナ。

 神官のファレルや剣士であるアキネスと共に冒険をしているパーティーのリーダーだ。

 今日は私が寝坊してしまってこんな時間になってしまったわけだが、おそらくクエストは残っているだろう。

 というような軽い気持ちでギルドへ行き、Sランククエストになっている「グラウンドドラゴン討伐」クエストを手に取ると受付へと向かった。


「エルティナさんは……、このクエストでも全然大丈夫でしょう。もう十日ほど前から張り出されていてそろそろ棄却しようかと思っていたのですが助かりますね」


 私が率いるパーティーは全員がSランク以上という強者ぞろいのパーティーで、自分で言うのもあれだけれど、ここのギルドの中ではトップクラスだと思う。


「いいのいいの、クエストは思いやりが大切だからさ!」


 誰もやらないクエストは手が空いた誰かが引き受けてあげればいい、難しいクエストなら私たちが引き受けた方が無難だと分かっていた。

 まあ、たまたま目に付いたクエストがこれだったという事は別に言わなくてもいいだろう。


「でもあまり無茶はしないでくださいね?見てるこっちはヒヤヒヤしてるんですから!」


 隣にいたファレルは私を覗き込むようにして言った。

 確かに、いつもファレルには心配をかけているような気がする。実際、私は近距離攻撃を基本にしているわけだからそう思われるのも仕方がないのだが……。


「それはごめんな、ファレル」


 これからはもう少し上手に立ち回ってみるべきだろうな。ごり押しみたいなことをやっているといつまでたってもファレルに心配され続けてしまうし。

 と、やり取りをしていたのだがふと視線が気になった。

 先ほどから一人の少年がこちらをじーっと見ていることに気がつく。その顔は、私たちを品定めするような目。さらりとした茶髪と瞳をしていて、近くに仲間らしき人物はいなかった。


 かなりの年月ギルドに行っているがこんな少年は見たことがない。いや、むしろその立ち振る舞いというか見た目は初心者の冒険者といってもいいだろう。

 だからこそ警戒する。


 いくら初心者とはいえ、私たちの事を知らない冒険者なのか?


 とりあえず、ファレルに軽く目配せをしてここは立ち去ることにしよう。


「それじゃあ、グラウンドドラゴン討伐クエスト頑張ってください!エルティナさん!」


 受付嬢の言葉に軽く微笑み返すと彼女は再び業務に戻る。

 そして、先ほどまで私たちをマークしていた少年が突如目の前に現れた。


「お、どうかしたかい?私を口説くにはまだ早いんじゃないか?」


 軽く冗談を飛ばしてみたがスルーされた。


「僕を、パーティーに入れてください!」


 それが彼、アキとの一番最初の出会い。

 新しいパーティーの仲間との最初のコンタクトだった。

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