11話 格闘家?エルティナ①
僕は今度こそ本当に死を覚悟した。でも、まだ出会ってすぐとはいえ……仲間を庇って死ねるのなら、それもまた自分らしいと言い聞かせて……。
だが、魔動機兵の攻撃が来ない。僕の顔に当たったのは何か丈夫な革製品のような感触。恐る恐る目を開けてみると、魔動機兵の攻撃はエルティナによって弾かれていた。
いや、弾かれているというより攻撃しようとした腕ごと吹き飛ばされているといった感じだろうか。そして、エルティナの拳からは強烈な一撃……の炎が放たれていたようだった。
「ど、どういう……?」
「細かい話は後だよ、とりあえず今のうちに逃げるんだ」
僕は頷いて突き飛ばしてしまったファレルが大丈夫かを確認しようと周りを見渡すと、どうやらファレルは柔らかい草の上に突き飛ばされていたようで大きい怪我は無いように見えた。
僕はファレルの手を取り、立ち上がったファレルと共にアキネスが待っている方へと駆け寄っていった。
「はあ、はあ……助かった」
いくらロマンである「最強」の物だったとしても、敵に回せばもはや面白みもないただの恐怖である。
一時は死すらも覚悟したはずだったのにいざ助かってみると恐怖からか震えが止まらなかった。
「新入りお前、
アキネスが物凄い剣幕で僕に怒っている。それじゃあファレルを見殺しにすればよかったのか?理不尽な怒りに心の中では反撃していた。
「まったく、意味が分からん。どうせ勝ち目もないからさっさと撤退する準備だけはしておけよ」
そう言ってアキネスはエルティナの援護をしに行った。
それにしても、文字通り命を懸けてファレルを助けたのになぜあそこまで言われなければならなかったのだろうか……?
「……アキネスさんは、相当心配してたんだと思います。だって、私もアキネスさんがあそこまで取り乱したのは見たことがありません」
まるでアキネスに聞こえないようにひっそりと、ファレルはそう呟いた。
「それに、普段なら身を挺して人を守るという事に対してはこのパーティーはほとんど縁がありませんでした。だから余計に心配されてしまったのかもしれないです」
そうだ、確かに僕は咄嗟の判断をした。けれど、それは僕に出来る最大限であって、このパーティーではもっと有効な事も出来たのかもしれない。
事実、エルティナはどのみち魔動機兵の腕を吹っ飛ばしただろうし、突き飛ばしてしまったことによって逃げるのに少し遅れを取ったのも事実だ。
向こう見ずな行動をしてしまったことを反省する。
確かにファレルだって重要なパーティーの一員だ。でも、それは僕も同じだったという訳なのだから。
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