第21話 リハビリ
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「暇だー。」
1月3日現在、大翔は特にすることもなくベットの上でただゴロゴロと過ごす日々を送っていた。
クリスマスの翌日から美零さんは帰省することになったため、他に見舞いに来てくれる人のいない大翔はここ数日、何もすることがなかった。
たまに藤咲さんがサボりに来るのだが、年末はやはり忙しいようで、以前ほどは部屋に来なくなった。
(まあ藤咲さんが部屋に来たところで、あの時のことをいじられるから来なくていいんだけど。)
藤咲さんはあの日から部屋に来るときは、毎回そのことでいじってくる。そのせいか、忙しくて疲れているはずなのに、部屋に来るときはいつも元気だ。
「はあ。」
楽しいはずのお正月が、病院にいるせいでその楽しみがほとんど消えた。
入院するまでは毎日のように部活があり、ほとんどなかったオフの日も大体友達と遊んでいたため、今までの大翔は暇とはほぼ無縁だった。
入院してからも、美零さんや蒼汰たちが来てくれていたおかげで、楽しかったし、それなりに忙しくはあった。
だが、いざ誰もお見舞いに来なくなり暇な日が続いていると、どうすればいいのかわからず、何もできないでいた。
昨日、久しぶりに大翔の両親や親戚がお見舞いに来たが、年始はいろいろとやることがあるらしく、少し話をしただけで驚くほどあっさりと帰ってしまった。
しかも、冬休み中は忙しくてもうお見舞いに来れないとのことで、最後の頼みさえも消えてしまった。
お正月は親戚で集まるもの。ということを理解していたつもりだ。だが、わかっていても誰も来てくれないのは寂しい。
お正月の特番を見ても、ゲームをしても、勉強をしても何も楽しくない。リハビリもまだ禁止されているし、散歩をしようにも車いすではいろいろと限度があるため、本当に何もすることがない。
誰かと話そうとするにも、藤咲さんに聞いた感じでは、今この病院に大翔の同年代はほとんどいないらしい。
そのため、クリスマスの翌日から昨日まで、藤咲さん以外とまともにコミュニケーションをとった覚えがない。
「あー!つまらーん!」
ここまですることがなく暇なのは、大翔にとっては拷問のようなものだった。
あの楽しかったクリスマスはどこへやら、一変して大翔にとって、地獄のような日々が続いていた。
本当にすることがなく、この1週間で何時間やったか覚えていないほど暇つぶしに続けていたゲームを始める。
ゲームをしていると、美零さんからのLINE通知が来た。
年が明けてすぐに、『あけましておめでとう』などのやり取りをした以来、特にやり取りをしていなかったのでかなりうれしい。
何事かと思い、美零さんからのメールを開いてみる。
『少し遠くに行く用事ができたから、冬休みの間はお見舞いに行けなくなっちゃった。ごめんね。 お土産買ってくるから許してね(。-人-。) ゴメンネ』
「!?」
簡単な文面のはずが、メールの内容を理解するのに少し時間がかかった。というよりも、理解をしたくなかった。
今まで、2人からもらったプレゼントと、もうすぐ美零さんに会えると考えること。あと一応藤咲さんのサボりで部屋に来ることでメンタルを保ってきた。
そのため、ただでさえ死にかけていた大翔に、このメールはかなりのダメージがあった。
(やばい。軽く死にそう。)
一切の光が消えた瞳で返信する。大翔自身なんて返信したのか覚えていない。
「ひーろーとーくーん!」
大翔があまりのショックに呆然としていると、ドアをノックされた後すぐ、藤咲さんが部屋に入ってきた。
「なんですか。またからかいに来たんですか?すいませんけど今そういう気分じゃないんで帰ってください。」
「何をそんなに落ち込んでるのか知らないけど、今回は違うよ。ほら、今日は診察の日でしょ。手伝ってあげるから車いすに乗って。」
「ああ、そういえばそうでしたね。」
藤咲さんに言われた通り、車いすに乗る。
「む?君がこんなにおとなしく私の言うことを聞くなんて珍しいな。本当にどうしたの?」
「大したことないですよ。ただどっかのポンコツサボり魔にいじられすぎて、ちょっと元気がないだけです。」
「よかったいつも通りだ。それと大翔君。あとで話があります。診察が終わった後覚悟しといてね。」
ニコニコ笑っているように見えるが、目が全く笑っていない。藤咲さんは自分がサボり魔だということを自覚していないらしい。
藤咲さんと軽口をたたきあっていると、すぐに先生の部屋に着いた。
検査を受け、その結果が出るまで待つ。その間も特にやることのない大翔は、ただボケーっと待っているだけだった。
いつもなら10分ほどで検査結果が出るのだが、今回は30分ほどかかった。先生のもとへ行き、検査結果を聞く。
どうせ今回も同じようなこと言われるんだろな。と思いながら話を聞いていると、大翔にとって今日唯一の朗報が先生から知らされた。
先生のおかげでだいぶメンタルが回復した大翔は、帰りも藤咲さんに送ってもらうことになった。
「おめでとー大翔君。やっとリハビリ開始できるね。」
「はい。今まで安静にしてた甲斐がありました。」
「私の看護のおかげだね。」
「は?」
「え?」
藤咲さんは本気でそんなことを思っているのかと、自然と言葉が出てしまったが、大翔の疑問に疑問で返してきた藤咲さんは、どうやら本気でそんなことを思っていたらしい。
「まあたまには私が直々に応援しに行ってあげるよ。」
「リハビリに応援って何ですか。それに藤咲さんふざけるから絶対来ないでくださいね。」
「照れなくていいのに~。大翔君曰く超かわいい看護師の私が応援に行ったら頑張れるでしょ?」
「そういうとこですよ。」
黙っていえば可愛いだけに、藤咲さんは残念で仕方ない。
藤咲さんにからかわれないためにも、明日から真剣にリハビリをしようと大翔は決意した。
【あとがき】
投稿が遅れてすいませんでした。公開時間を自分でも気が付かない間に設定しちゃってたみたいでした。次からは気を付けます(-_-;)
コメント、フォロー待ってます。作品を評価してくれると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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