第13話 1つ目
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藤咲さんのせいで少し気まずくなってしまったが、美零さんは藤咲さんの奇行については、特に何も聞かずに部屋まで送ってくれた。その優しさがすごい嬉しい。
美零さんは藤咲さんが勘違いしていることが分かってるのかな。何も聞かないでくれるのは本当にありがたい。さすがは美零さん、これが大人の対応というやつか。藤咲さんにも美零さんを少しは見習ってほしい。
「あのさ、大翔君。さっきの看護師さんのことだけど、あの人の勘違いってことはわかってるからそんなに堅くならなくていいよ」
「おれ、そんなに変な感じになってたのか」
「うん。すごい動揺してて面白かったよ。大翔君本当にわかりやすいね」
自分ではしっかりしているつもりだったけど、美零さんには全部お見通しだったらしい。でも、そんなことで笑ってくれるなら、藤咲さんにも少しは感謝しないといけないかな?
「本当にごめんなさい。あの人、頭の中お花畑で何言っても聞いてくれなくて」
「ふふ。担当の人と仲がよさそうでよかったよ。毎日楽しそうだね」
「年が近いからか友達感覚って感じで。藤咲さんってばよくこの部屋にサボりに来て、困ってるんだよね」
「サボりに来るって、相当仲がいいんだね」
今日もいつも通り美零さんと話をしていると、携帯のアラームが鳴りだした。
スマホの画面を見てみると、着信先は母からのものだった。
そういえば今日母さんが来るって言ってたな。
「あ、母さんから電話来たから、ちょっと電話してくるね」
車いすに乗って外に出ようとすると、わざわざ車いすに乗るのは大変だからと言って、美零さんが外に出てくれた。そんな気遣いが本当にうれしい。
電話の内容は、母は用事ができたらしく、今日はお見舞いに来れないということと、明日終業式が終わってから、学校の先生がお見舞いに来るということだった。
今も美零さんが来てくれていると言うと、母が急に騒ぎ出したので、すぐに電話を切った。
電話も終わったので、外にいる美零さんを呼んでみるが、特に返事もなく、聞こえている様子もない。少し移動して、さっきまで美零さんがいたところを見てみるが、美零さんの姿はなかった。
それから1分ほど待ってみたが、美零さんが帰ってくる様子はなかったので、外の様子を見に行くことにした。
ドアを開け、周りを見てみるが、近くに美零さんはいないようだった。
どこに行ったんだろう。トイレでも行ってるのかな。もしかして迷ったとか?実際に1度迷ったことがあるので、その可能性は十分にあるだろう。
美零さんを探しに行くことにして。とりあえずトイレの近くを探すことにした。少し探してみると、トイレから少し離れたところに美零さんはいた。
「美零さん何して――」
声をかけようとしたが、美零さんが誰かと話していることに気がついた。
美零さんと話している人は後ろ姿しか見えないので、少し回り込んでみてみると、その人よく知っている人物だった。
あれ、どうして美零さんと藤咲さんが話してるんだろう。
2人はただ会話をしているだけなのだろうけど、美人二人が話し合っている美しいこの光景を、今すぐ写真に収めたい。
どうして藤咲さんと話してるのかはわからないけど、藤咲さんと一緒なら迷うことはないだろう。さっきの場所に戻るか。
先程の場所に戻るとすぐに、美零さんも戻ってきた。
何を話してたのか気になるけど、のぞき見をしていたなんて言えないし、さっきみたことは黙っておこう。
「あの、外に出てる時に私も電話がかかってきて急な用事ができたから、今日は帰らないといけないんだ」
「そっか。なら仕方ないね。来てくれてありがとうございました。少ししか話せなかったけど、今日も楽しかった」
「うん。私も楽しかったよ。それじゃあまた明日ね」
そういえば戻ってきた美零さん、少し雰囲気が暗くなってた気がするけど、本当に藤咲さんと何話してたんだろ。
あ、ていうか今日ずっと敬語だった。まあ美零さんも何も言ってなかったし、このままでもいいのかな。
✤
大翔君が電話してる間外で待ってるって言ったけど、少し喉乾いてきたな。
少し離れたところに自動販売機があると、大翔君に聞いたような気がする。ちょっと行ってみようかな。
大翔君の言っていた通り、少し離れていたところに自動販売機を見つけることができた。
すぐに買って戻らないと、そろそろ大翔君が心配しちゃうかもしれない。
飲み物を買い、すぐに戻ろうとすると、突然後ろから声をかけられた。
「あの、天音美零さんですよね。少しお話しできますか」
誰かと思い振り向いてみると、そこには大翔君の担当看護師の藤咲さんが立っていた。
「はい。少しなら大丈夫ですけど、どうかしましたか」
「ありがとうございます。あ、そうだ、さっきは急にすいませんでした」
「いえ。気にしないでください」
大翔君の話で聞いていた人とは別人なのかと思ってしまうくらい、丁寧でしっかりとしていた人だった。
「それで、私に話ってどうかしたんですか」
「大したことじゃないんですけど、私、思ったんですよね。さっき会ったとき天音さんをどこかで見たことあるなって」
嫌な予感がし、藤咲さんの言葉に体がビクッと反応した。
「それは私が毎日来てるからじゃないですか。私も何度か藤咲さんのことを見た覚えがありますし」
「いえ、私が見たことがあるっていうのは、病院外の話です。」
「・・・・・」
「前から大翔君と話してるときに、よく天音さんの話が出てきて、どこかで聞いたことある名前だなって思ってたんですよ」
「それで、結局何が言いたいんですか」
「あなたはあのモデルの天音美零さんですよね」
【あとがき】
遅くなってすいませんでした!どうやって話を進めようかずっと考えていて、今までズルズルと進んできてしまいましたが、やっと進めることができました。
12話も隠しといてこんな秘密かよ!って思った方がいらしたら本当にすいません。
ですが、軽いネタバレになるんですが、題名にある通り美零は謎の美人高校生?です。秘密が1つとは限りません。だから今回の1つ目という題名はそういう意味です。
コメント、フォロー待ってます!最後まで読んでいただきありがとうございました。
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