同級生の憂鬱

 運が悪かったとしかいえないが、こうなってしまったら仕方が無い。平子伊咲は開き直って無難な同級生として過ごしてきた。そして判ったのが数点。彼女の夫達はどうやらかなり質の悪い輩らしく、黒猫を相当気に入っているようだ。

 また、伊咲が偶然見かけたあの場での行動言動が、彼らの本性なのだろう。彼女が行く先々に現れ、身に着ける物手にする物は全て彼らが小細工を仕込んで与えている。万が一黒猫と自身が離れた際の一種の保険のようなものなのだろう。

 気がつかない内に雁字搦めにされて、引き返せないところまで来ている彼女には哀れとしか言いようが無い。救いは、黒猫がそのおぞましい事に気がついていない事か。兎にも角にも、黒猫にはご愁傷様としかいえない。無理に助け出そうというものなら、被害を受けるのは伊咲だ。伊咲は正義の味方でも偽善者でもない、ただの人間だ。誰かのために命を投げ出したくは無い。

 伊咲は大学から出ていく件の小柄な人影を少し遠目で見た。黒猫の隣には、いつも誰かが付き添っている。夫がうっとりと、黒猫の頬をなで、舌なめずりせんばかりの顔。これは、黒猫はうっかり死んだとしても逃れられないのではないだろうか。伊咲は心の奥底で、せめて彼女が少しでも安穏な人生が送れるようにと祈った。

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