次男の本音

 君はしらないでしょう? 私だってこういう顔をするよ。いつも君に見せていたような穏やかな顔じゃなくて、人間の醜悪さを前面に押し出した表情。君をとっておきのハウスに収めていられるからこんな顔ができるんだ。きっと君が唐突に現れたら、私は壊してしまうに違いない。大切に大切に扱ってきた君だからこそ、いっそ壊してみたくなるんだ。脅えて泣き狂う君もまた素敵なものかもしれない。なんて。嗚呼、もう――。


「もっと君に触れたいな」


 君なら私の、私達兄弟のとち狂った愛情さえも受け止めてくれるだろうから。帰ったらハグとキスをして、所有の証を残そう。私達だけの雌。たった一つしかないものを永遠に手に入れるには、方法はたった一つしかない。絶対に私達から離してあげない。君は不自由で自由な空間で、私と私の兄弟達だけで居ようじゃないか。


「ねぇ――kitty?」


 逃がしはしない。だって君は、私達兄弟が初めて愛した人だから。

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