夢幻のナーサリーライム
輪月四季
物語なき国の子供たちの夜……
僕たち子どもたちは、夜を楽しみにしている。
何故なら夜の、眠っている間だけ、物語を読むことができるのだから。
ほら、だんだん、だんだんと、瞼が閉じていく。
みんな一緒、みんな同じ時に眠りへと誘われる。隣のあの子も、いつも気にかけてくれるお兄ちゃんたちも、みんな一緒に……。
でも、眠りは何もないわけじゃないよ。そこにはいつも、物語を読んでくれるおじさんがいるんだよ。
「今日も来たのかい、坊や?」
沢山の本(おじさんが教えてくれた)がある場所で、机の上で書き続けているおじさんが何時ものようにいてくれた。
挨拶したら、早速おじさんにお願いする。昨日の物語の続きを読んで、って
「坊やは本当に楽しそうに聞いてくれるね。君のような子が私の
そう言って、今日もおじさんは物語を読み聞かせてくれる。それは僕とおじさんだけが知っている物語。
物語の無いこの世界で、唯一知ることのできる物語。僕に希望を、夢を持たせてくれたもの。
僕もいつか、この
「坊や、どうやらお客さんが来たみたいだ。今日の物語はそのお客様にも見てもらおうと思うけど、坊やも見てみたいかな?」
その言葉に勢い良くうなずく。夢の中で物語を聞いていると、それを邪魔するように炎のお化けが出てくるんだ。まるで物語に出てくる悪い悪役みたいに。
でもそれもいつも、おじさんが聞かせてくれる
そう思っていると、僕の頭を優しくなでて、持っている棒(ペン、というらしい)を滑らせていく。
「さあさあ、よい子を食べるお化けを退治するのは、勇猛果敢な勇者様。さあ、その勇姿を刻み込んでいきなさい!」
それは、物語を紡ぐ
例え世界が物語を拒絶しようとも、紡ぐものの思いは消えることはないのだから……。
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