134 忍大捜査線

 どうも、リビングアーマーの俺です。


 現在、チェインハルト商会のエドの依頼で、忍者を探してます。


 忍者!? 忍者なんで!?

 ってツッコまれそうだけど本当なんだからしょうがない。


 なんでも、この大陸のどこかに、ヤマトの里という隠れ里があるらしい。

 そこの住人は独特な習慣や能力を持っている。

 そしてその能力を生かして、各国の傭兵として活動したりしているとのこと。


 中でもよく重宝されるのは二種類の人材。

 奇妙な片刃の曲刀で見たこともない剣技を使う最強の剣使い、侍。

 そして、情報収集から暗殺までこなす非情の密偵、忍。


 ……うん。

 これ、完全に日本人のことだよね!?


 どういうことなんだろう。

 ファンタジーとかによくある偶然なのかな。

 西洋風の世界だけど日本っぽい国もなぜかあるよ、みたいな。


 あるいは……。

 その人たちは、俺みたいな転生者だったりするのだろうか。

 昔の日本から転生して、そのときの技術で生き延びてきた、とか。

 当人じゃなくても、その子孫だったり……。


 エドの依頼ではあるんだけどさ。

 ちょっと、その忍とも話をしてみたい気がしてきた。


 まあ、なんにしろ、俺たちは忍者を見つけなきゃいけない。


 と言っても、ただ闇雲に探し回ったって見つかるはずがない。

 なにしろ相手は忍者だからな。


 しかしエドは言っていた。


『ドグラさんなら大まかな居場所はわかるでしょう?』


 と。


 なので俺はドグラに訊いてみる。


〈なあ、ドグラ。さっきエドが言ってたのはどういう意味なんだ?〉


「…………」


〈ドグラ?〉


「…………」


〈おーい、ドグラ?〉


「……っ、なんじゃ?」


 ドグラは慌てた様子でこっちを見た。

 不機嫌そうな顔をしてたけど、無視してたのではなく気づいてなかったっぽい。


〈どうかしたのか?〉


「貴様には感じぬのか? この建物の中から溢れ出ておる禍々しい魔力が」


 と、ドグラは目の前の実験施設の建物を指差す。


 ちなみに今俺たちは実験施設の前に停まった馬車の中にいる。

 これからどこに向かうかの作戦会議中だ。


〈魔力? いや、べつに〉


 っていうか、魔力ってどうやって感じるの?


 ドグラは、ロロコ、アルメル、クラクラと視線を向けるが、三人とも首を横に振る。

 ラフィオンさんも不思議そうな顔をしている。


「わからぬか……まあ、巧妙に隠蔽しておるからな。ドラゴンレベルの力がなければ感知できぬかもしれぬ」


「一体なにがいるんです?」


 ラフィオンさんが気がかりそうに尋ねる。

 彼はフィオンティアーナの領主だ。

 すぐ近くにドラゴンが禍々しいと言うほどのものがあるなど、気が気ではないだろう。


「それはわからぬ。わからぬが……ロクでもないものであることは確かじゃ。あの男は早々に放逐すべきじゃ」


「…………」


 ラフィオンさんは困惑顔だ。

 そりゃそうだろう。

 チェインハルト商会は大陸中の冒険者用アイテムを制作している。

 邪険にするわけにはいかない。


「ところで、リビタンはなんの用じゃ」


〈あ、ああ。ドグラがあの忍の大まかな居場所がわかるってのはどういうことなのかって訊きたくて〉


「ああ、そのことか」


 ドグラは軽く答える。


「ドラゴンは他種族に比べて魔力を感知する力が高いのじゃ。だから、一度会った者の大体の居場所なら、魔力を辿ればわかる」


 マジかよ。

 すげえな。

 っていうか、エドもそれをわかっていて俺たちに忍探しを依頼したんじゃないか?


「それで、どこにいるんです?」


 アルメルの問いに、ドグラは答える。


「南じゃな。南のほうに人がいっぱいおって、そこに先ほどのやつの魔力が混ざり込んでおる」


 ラフィオンさんが言う。


「南というと、ヴェティアンですね。港町です」


 お! 珍しく憶えやすい名前!


 よし、それじゃ早速そこへ向かおう。

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