96 ロボといえばオプションパーツ

 大蛇の群れに囲まれたリビングアーマーの俺とゴブリン娘のラファ。

 その目の前に現れたのはゴーレムの残骸だった。


 残骸とはいえ、わりとしっかり残っている。

 ところどころ壊れてるけど、元の形はわかる。


 不思議な形状だ。

 俺みたいな鎧と、ロボットアニメのロボットの中間みたいな外見。

 材質は石とも金属ともつかない奇妙な素材。

 アルメルが『オリハルコン』とか言ってたっけ。


 子供が捨てたみたいに倒れているそれを、俺は拾い上げる。


〈これ、使えないかな〉

「リビタンに接続するってこと? あたしの腕みたいに?」


 ラファは自分の左腕を掲げて言ってくる。

 彼女の左腕はゴーレム製の義手だ。

 それは彼女の意思で自由に動かせる。


 だったら、このゴーレムもいけるんじゃないかって思ったのだ。


 っていうか、ほかにできることがないんだよ!


 大蛇の集団は俺たちにどんどん迫ってくる。

 上からもどんどん蛇が降ってくる。


 このままじゃ俺たちは蛇に押しつぶされちゃう。

 囲まれて、逃げ場もないし。

 試してみるしかない。


 俺はゴーレムを抱えると、ジッと睨み付ける。

 前に、ドラゴンと戦うためにリビングアーマー軍団になったときのイメージだ。

 意識を、目の前にある人形に移す感じ。


〈………………はぁ! ダメかぁ!〉


 意識が移動してくれない。

 なんでだ?

 やっぱり鎧じゃないとダメなのか?


「ひょっとして起動すればいいのかも」


〈起動?〉


「うん。この腕も、起動させたらあたしの肩に勝手にくっついてきたんだ」


 なにそれ怖い……。

 しかし、起動か。

 ますますロボットめいてきたな。


〈で、起動ってどうやるんだ?〉


「うんとね、こうやって」

〈っておい!〉


 ガイン!

 とラファは義手でゴーレムの残骸をぶん殴った。


 壊れたらどうする!


『起動します』

〈うわあ!〉


「ね、起動したでしょ」


 ……したですね。

 なんなのゴーレム。

 昭和の家電製品なの?


『自動補助機能が作動しています。頭部、及び右腕を補助します』


 ゴーレムさんはそう言うと、いきなりバラバラになった。

 そして頭パーツと右腕パーツが俺に向かって飛んできた。


 ――ガション!

〈うわっ〉

 ――ガシィン!

〈のわっ〉


 なんだこれ。

 ゴーレムの頭部と右腕が当たり前のように俺の鎧に接続した。

 あっという間に、なんの違和感も感じなくなる。


 しかも……。


〈行くぞ、ラファ!〉

「え? ――ひゃ!」


 説明してる暇はない。

 大蛇たちがすぐそこまで迫っているのだ。


 俺はゴーレムの右腕を掲げると、出口の穴に向かって射出した。


 腕の真ん中あたりから先が、空気の噴射で飛んでいく。

 飛んでいった腕の先と残ったパーツとは太いワイヤーみたいなロープで繋がっている。


 ウッヒョー!

 超かっけえ!


 穴の到達した手の指で、俺はしっかりと岩を掴む。


〈よしっ〉


 そして一気にワイヤーを縮める。

 俺の身体は抱えたラファと一緒に穴へ向かって飛んでいく。


 タッチの差で、蛇が俺たちのいた場所を埋め尽くす。


「うっわー、危なかったね」

〈ああ。でもなんとかなったな〉


 ひゅん、がしょん、がしん――とワイヤーが回収され、腕が接続される。

 その勢いで俺たちは穴に飛び込み、蛇地獄から脱出した。

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