92 転げ落ちてダンジョン(ハードモード)

 ゴロゴロゴロゴロ!

 ドカーン!


 いててててて……。

 いや鎧だから痛みはなんだけど。

 気分的に全身打撲したレベル。

 それくらい転がり落ちたぞ。


 芋虫たちに襲われた俺たち。

 直後大爆発が起こって洞窟の地面が崩れた。

 ラファを鎧の中に入れた俺は、そのまま落っこちてしまったのだ。


 あの爆発は火薬によるものだな。

 そんな臭いがした。

 たぶんアルメルが用意してたんだろう。

 それに、ロロコの炎魔法で着火したのだ。


 無茶しやがって……。


 しかしあの場では他にどうしようもなかった。

 芋虫に押しつぶされるよりずっとマシだ。


「うぎゅ~~~~」


 俺の身体の中でラファが苦しそうな声を上げているのが聞こえた。

 なんか変な感覚だな。

 俺、鎧だから、本来これが正しい使い方なんだろうけど。


 俺は胴パーツと腰パーツを繋ぐ革ベルトを外して、上下に分離する。

 ゴロゴロとラファが転がり出てくる。


〈大丈夫か、ラファ〉

「うん~なんとか~」


 グラグラ身体を揺らしながらもそう答えるラファ。

 目が回ってるだけっぽいな。

 よかったよかった。


〈ロロコ。アルメル〉


 二人に呼びかけるが返事はない。

 辺りを見回すが姿はなかった。


〈ロロコー! アルメルー!〉

「しーっ」


 俺がなおも二人を呼ぼうとすると、ラファが静止してきた。


「大声はマズいよ、リビタン」

〈どうしてだ?〉

「ここ、近道のほう」


 近道……マジか。


 出発する前にラファが言ってた。

 近道だけど危険なルートと遠回りだけど安全なルートどっちがいいかって。

 結局安全なルートを使うことにしたんだけど。

 なにしろ危険なルートの方は、運が悪かったら全員死ぬらしいからな。


 その全員死ぬルートの方に迷い込んでしまったらしい。

 ……もう一度言おう。

 マジか……。


「こっちはヤバいモンスターがヤバいくらいいるから。基本、遭遇しないようにするしか生き残る道はないよ」


 なにそのハードモード。


 しかし、だとしたら余計ロロコとアルメルが心配だ。


〈あ、そうだ〉


 と俺はふと思い出す。

 こういうときのために二人とはパーティ登録をしておいたんじゃないか。


〈冒険書を確認しても大丈夫か?〉

「うん。今はたぶん」


 ラファに確認をとってから、俺は冒険書を取り出す。

 冒険書は鎧の内側に、余分なベルトをつけてもらって、そこに収納してある。

 しっかりリビングアーマー用にカスタマイズされているのだ。


 それはそうと、冒険書冒険書。


 パラパラっと。

 パーティメンバーのページは……ここだここだ。


〈大丈夫そうだな……〉


 そこには、ロロコとアルメルの名前やステータスが前と変わらず載っていた。


 冒険者ギルドでクーネアさんに教えてもらったんだけど。

 パーティ登録したメンバーのステータス異常は冒険書に表示されるらしい。

 毒状態とか麻痺状態とか瀕死とか死亡とかだな。

 そういう表示がなにもないってことは、二人とも無事ってこと。


 とはいえ安心はできない。

 二人がどこにいるかはわからないし。


 ん?

 待てよ。


 冒険書ってパーティ登録すると、通信ができるんじゃなかったっけ。

 それにお互いの位置情報の確認もできたはず。


 今こそそれを使うときじゃないか!

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