89 ダンジョンごはん、ゴブリン編

 ボコボコボコボコ!


 でっかい鉄鍋でお湯が煮え立っている。


 バツンバツンバツンバツン!


 ラファがでっかい包丁でモンスターを切っていく。


 いや、切るなんて生優しい感じじゃないな。

 叩き割るって言ったほうがいい。


 そうやって肉片と化した巨大蜘蛛やらワームやら芋虫やら。

 それらをラファは一緒くたに鍋に放り込んだ。


 それからなんだかよくわからない液体を注ぐ。

 お湯の色が黒っぽくなる。

 調味料かな?


 すごいな。

 ゴブリンの料理は豪快だ。


 ロロコはそんなラファの調理を興味深そうに眺めている。

 アルメルはモンスターの死体から顔を逸らしている。


 リビングアーマーの俺は、冒険書を開いている。


 だって食べれないんだもん。

 見てても羨ましくなるだけじゃん?


 なんとなく、食事タイムは俺にとって冒険書確認タイムになってる気がする。


 まあ、そんなわけでチェックチェック。


『リビングアーマー LV.26 名前:リビタン

 HP:2189/2219(2108/2165)

 MP:986/991(976/980)

 物理攻撃力:696(687)

 物理防御力:590(589)

 魔法攻撃力:18(17)

 魔法抵抗力:19(19)

 スキル:霊体感覚+4、霊体操作+6、霊体転移+3、霊体分割+4

 称号:駆け出し冒険者、初級冒険者、魔物討伐者、生還者、決死者

 称号特典:魔力習得率アップLV.2、魔力変換率アップLV.2、恐怖耐性LV.4、魔力生命力変換LV.1、生命力魔力変換LV.1』


 うーん……。

 ぶっちゃけあまり変わってないね。


 各数値がちょっと上がったくらい?

 スキルや称号、称号特典は変化なしだ。


 魔法抵抗力なんか変化なしだからな。


 レベルが一つ上がったのに、あまり面白くないなぁ。


「個人差がありますけど、レベル25くらいまでは上がりやすいし、変化も大きいんですけど、そこから先は地味なんですよね」


 とアルメル。

 ラファがよそった鍋を受け取りながら言う。


「レベル50を超えるとまた一気にいろいろ増えるみたいで、そこまでが第一の壁なんて言われたりします」


 なんかRPGでもありそうな話だな……。


〈ロロコとアルメルは変化あったのか?〉


 俺が問うと、ロロコは無言で自分の冒険書を差し出してきた。

 口は鍋の肉を食べるので忙しいらしい。

 相変わらずだな……。


『人犬族 LV.30 名前:ロロコ

 HP:1209/1209

 MP:1098/1098

 物理攻撃力:156

 物理防御力:187

 魔法攻撃力:204

 魔法抵抗力:145

 スキル:火属性魔法+2

 称号:駆け出し冒険者、初級冒険者、魔物討伐者、初級魔導師

 称号特典:魔力変換率アップLV.5、恐怖耐性LV.9』


 数値は前とまったく変わっていないようだった。


 ちなみにアルメルの方も同様。


『ドワーフ LV .45 名前:アルメル

 HP:1876/1876

 MP:1236/1236

 物理攻撃力:54

 物理防御力:36

 魔法攻撃力:198

 魔法抵抗力:158

 スキル:土属性魔法+9

 称号:駆け出し冒険者、初級冒険者、中級冒険者、魔物討伐者、鍛治師、初級魔導師、中級魔導師

 称号特典:魔力変換率アップLV.7、恐怖耐性LV.7、術式解析LV.5』


 数値に変化はなし。


 二人とも今アルメルが言っていた『第一の壁』の真っ最中だ。

 変化しにくい時期ってことなんだな。


 まあ今回の戦いは、実質ラファがほとんど敵を倒してくれたようなもんだしな。

 それでおこぼれで魔力をもらったようなもんだから、文句はない。


〈それで、ここからどうやってドラゴンの巣に向かうんだ?〉


 冒険書を見終わって暇になってしまった俺はラファに問いかける。


「そうだねえ……近道だけど危険なルートと遠回りだけど安全なルートがあるんだけど、どっちがいい?」


 …………。

 これが普通のダンジョン探索なら、安全なルート一択なんだけど。


 今回はドラゴンにさらわれたクラクラを助け出さなきゃいけない。

 今すぐ食われるみたいな差し迫った様子ではなかったけど。

 できればはやく助け出したい。


〈近道で〉

「はやく行こう」

「仕方ないですね」


 三人とも意見が一致したな。

 ラファはうなずいて言う。


「わかった。危険な方も、四人のうち一人はたどり着けると思う……運がよければ」


〈やっぱり安全な方で〉

「死んだら意味ない」

「そうですね」


 冗談じゃないぞ。

 一人助けるために三人死んだら本末転倒じゃないか。


 下手したら助けられなくなるっぽいし。


 それにしても恐ろしいところだな、絶海の孤島ダンジョン。

 ラファと出会えて本当に助かったぜ。

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