86 大混戦! モンスターランド

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


 と凄まじい音を立てて地面の下から巨大ワームが現れた。

 ワームはその巨大な口で芋虫たちを大量に飲み込んだ。


 あっぶねー……。

 俺とロロコとアルメルも危うくああなるところだった。


〈ダークネス・ワームか……〉


 以前ロロコと一緒に大洞窟ダンジョンで遭遇したモンスターだ。


「いえ、違います」


 え、違うの?

 アルメルが言ってくる。


「歯がキラキラ光って見えるでしょう? あれはダイヤモンド・ワームです」


 なんかそんなのいるって話、ロロコがしてたな。

 歯がダイヤモンドでできてるので、硬い岩もガンガン掘り進める強いワーム。


〈ん? でもそいつって帝国の北方にしかいないんじゃなかったっけ?〉


 たしかロロコがそう言ってた記憶があるぞ。


「ああ、たしかに以前はそう言われていました。しかし数年前から、この辺りでも生息が確認されるようになっています」


 なんでだよ!

 あんまり強い奴がうろちょろしないでいただきたい。


 いや、強いからこそ生息域を拡大できてるってことなのかもしれないけどさ……。


「とにかくここは危険です。ワームが一匹とは限りませんし……」


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。


 なーんてアルメルが言ってる先から、なんか不吉な音がどんどん増えてってますよ?


〈これ、やばくね?〉

「……ヤバいですね」

「逃げよう」


 俺は急いで移動を開始する。


 と言ってもリビングアーマーとしての浮遊能力は大したことがない。

 フヨフヨフヨフヨ、と風船が飛ぶくらいの速さでノロノロ移動していく。


 ありがたいのは、芋虫が俺たちを襲うのをやめてくれたことだ。

 ダイヤモンド・ワームが出現したので、それどころじゃないんだろう。


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


 うわ、あっちこっちの地面からダイヤモンドワームが飛び出してきた。


 芋虫たちが次々と飲み込まれていく。

 芋虫は逃げようとするが、間に合わずに食われる。

 あるいはワームに飛ばされて宙を舞う。


 ――びよおおおん!


 そんな芋虫の一匹を、横から飛んできた蜘蛛が八本の足で捕らえていく。


〈フライング・アラクニドか!?〉


「いえ、あれはジャンピング・アラクニドですっ!」


 えーと、アルメルさん、それって別の種なんですか?


「見た目はそっくりですけど、より厄介なんです! フライング・アラクニドは糸で身体を吊るために軽いんですが、ジャンピング・アラクニドは体重がある上に、脚の力がめちゃくちゃ強いんです! 掴まれたら逃げられませんよ!」


 ジャンプするために脚が発達したってことか。


 って、いつの間にかそこら中に蜘蛛が!


 ――びよおおおん!

 うぉ!

 ――びよおおおん!

 ぬぉ!

 ――びよおおおん!

 くぉ!


 くっそ、久しぶりだなこのノリ!

 全然嬉しくないぞ!


 俺は必死に逃げるが、蜘蛛の速度はとてつもなく早い。


「リビタンさん!」


 アルメルの悲鳴に目を向ければ、間近に蜘蛛の脚の鋭い爪が間近まで迫っていた。


 くそ、避けられない……。


 ――ヒュゴッ!


 今度はなんだ!?


 眩い光線がどこからか飛んできて、蜘蛛を吹っ飛ばした。


 吹っ飛ばされた蜘蛛は岩盤に叩きつけられてぐしゃっと嫌な音を立てて潰れた。

 見れば、その身体の右半分が消しとんでいた。


 な、なにあれ……?


〈アルメル! 今のはなんのモンスターだ?〉

「わわ、わかりません! あんな攻撃するモンスターなんて聞いたことないですよ!」


 ロロコも首を横に振る。


 え、じゃあ……未知のモンスターってこと?


 それはちょっとハードル高すぎなのでは?

 せっかく鎧を新調してもらったのにさ。

 あんなビーム兵器見たいの食らったらひとたまりもないぜ。


 ――ヒュゴッ!

 ――ヒュゴッ!

 ――ヒュゴッ!


 と、光線が連射される。


 うわー!

 うわー!

 うわー!


 俺は慌てるが、光線はなぜか俺たちを外して放たれる。

 全部蜘蛛や芋虫やワームにあたり、倒していく。


『モンスターの情報が追加されました』

『レベルが上がりました』

『変化したステータスを表記しました』


 冒険書がなんか言ってるけど、今確認してる余裕はない。


 やがて、光線がおさまると、あたり一帯にモンスターの死体の山が築かれていた。


 なんだったんだ……。


 唖然としている俺たちに、光線が発せられていた方向から声がかけられた。


「もう大丈夫。こっちに来なよ」

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