82 絶海の孤島ダンジョンへ

 どうも、リビングアーマーの俺です。


 人犬族のロロコとドワーフ嬢のアルメルと一緒に、ダンジョンの入り口にやってきた。


 絶海の孤島ダンジョン。

 クラクラを拐っていったドラゴンの住処である。


「こちらが絶海の孤島ダンジョン入り口の館です」


 案内してくれたエルフの兵士が指差す先には、一軒の建物がある。


 ん?

 そういや俺が転生して最初に目覚めた場所も館だったな。

 そこの扉が大洞窟ダンジョンに通じていたんだ。


 あのときは建物の外には出なかったから、どんな外観かは知らないけど。


 ダンジョンの入り口には館を建てるって決まりでもあるのか?


「あれはヘルメスの館と呼ばれています」


 俺が疑問を口にすると、アルメルがそう言ってきた。


〈ヘルメス?〉


 誰ですか?


「ヘルメスは原初の魔法使いと呼ばれる人物です。数千年前、この大陸に伝わる魔法の体系の全てを作ったとされてします」


 へー。


〈そのヘルメスが、あの館を作ったの?〉


「最近そういう説が出てきているそうです。あの建物は、世界中のダンジョンの主だった入り口に建てられているんです。魔力で守られていて、ダンジョンの魔物が外に出てこられないようになっています。もっとも、その効力が弱まって朽ちてしまい、魔物が溢れている地域もあるようですけど」


 ……。

 そういや、最初に目覚めた館の扉、木製のくせに、殴った鎧のほうがぶっ壊れてたな。


 あれ、鎧がボロボロだったからだと思ってたけど。

 ひょっとしたら、魔力で守られてたからだったのかな。


 もっとも、木の扉の方も壊れてたけど、

 それも今アルメルが言ったみたいに、効力が弱まってたからなのかも、


〈ヘルメスはなんのために世界中にそんな館を建てたんだ?〉


「さて、どうしてでしょうね。魔物の脅威から世界を守りたかったのか、他になにか目的があったのか……かの魔法使いが記した書物は現代にはほとんど残っていないので、詳細は不明なんだそうです」


〈ふうん……〉


 そんな話をしているうちに、そのヘルメスの館に到着した。


 エルフの兵士たちが言ってくる。


「それでは私たちはこれで。本来なら我々も同行するべきですのに、申し訳ありません」


 それは仕方ない。

 エルフの国は人手不足だし、冒険者資格を有している人たちは出払っているらしい。

 魔力の少ない人がダンジョンに挑むのは危険だ。


「姫様のこと、なにとぞよろしくお願いいたします……!」


 何度も頭を下げて、兵士たちは去っていった。


 さて……。


〈それじゃ、行こうか〉


 俺の言葉にロロコとアルメルは頷く。


「絶対にクラクラを助ける」

「戦闘は嫌ですけど、鎧が壊れたときは任せてください」


 頼もしい限りだな。


 よし、じゃあ行くか!


 と俺たちは館の扉をくぐり、中に踏み入る。


 その途端――



 ――メキメキバキバキベキベキガシャアアアン!



 と、足元から不吉極まりない音が響く。


 うわっ!

 落ちる!


「ロロコ、アルメル、掴まれ!」


 俺は腕を伸ばし二人と手を握る。


 そのまま俺たちは一気に落下していく。

 俺は宙に浮かぼうとするが、落ちていくのは止められない。


 空を飛べるってわけじゃないからな。


 っていうかさ。

 前もダンジョンに入るとき落ちてなかった?


 なんで毎回このパターンなんだよ!

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